買い出し

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時間外労働とはご苦労さまだな。

幸いなことにF o r t u n a t e l y、自分のところに招集命令は来ていない。

本当に運がいいな。



大通りから少し入ったところに少し大きめの雑貨店?がある。

だいぶ古ぼけた看板にひらがなで「たまむらや」と書いてある。

敷地面積しきちめんせきは800平米くらいあるんじゃないだろうか。


まあ雑貨店とカテゴライズして良いのかは不明だが、大抵のものは揃っている。

日用品や消耗品、今日買いにきた燃料や食料まで、ほとんどこの店で済んでしまう。

普通にありがたい。


とりあえず店内に入る。

風除室ではなく防汚、気密のための二重扉をくぐり、店内に入る。

バイザー兼ヘルメットを上げると、二十世紀くらいに流行った陽気なロックミュージックが聴こえてきた。


誰の趣味だよ、とツッコミたいのは山々だが、自分は生憎あいにくこれが誰の趣味か知っている。


「おや。大地さん、朝早くからご苦労様ごくろーさまです」

「目下の者に対するねぎらいの言葉をどうも。自分は君より4つも上のはずなんだがな」

年功序列ねんこーじょれつなんてそれこそ古いです。何歳ですかあなたは」

なぜか少し呆れられる。

「更に歳を取った気がするよ。それに朝から二十世紀にタイムスリップした気分になる」

「それは安上がりでいいですね。今度データカードお渡ししましょうか?」

「……この会話、前に来た時もした気がするな」


この一見かわいげがない奴は玉村たまむらかえで


一応これでもこの店の看板娘である。

そもそも看板娘とか言う概念が古い気もするが。

古いといえば楓の格好もなかなかに古い。

メイド服なんていつの時代ものだよ。

生まれる時代を間違えたのではないだろうかと思う。

まあおかえりなさいご主人様とか言わないだけマシか。いやそもそもビー○ルズなんて——


「そこまで徹底的てってーてきにディスらなくても良いじゃないですか……メイド服だってかわいいし、ビート○ズだってかっこいいのに……」


ほんのちょっと言い過ぎたか。

ついツッコミどころが多くてツッコんでしまった。


「わかったわかった。そうだな、今日も楓ちゃんはかわいいなー。うん、とても綺麗きれいだ。メイド服もとっても似合ってるよ。曲のセンスも——」

「誰がそんなにほめろと言いましたかっ! ……もーいいです!」

かわいい。照れてる。かわいい。

お世辞だと解っていても照れるのがかわいい。


「何ニヤニヤしてるんですか。冷やかしなら帰ってください」

かわいいけどいつまでも眺めているわけにもいかないので、本題買い物を済ませることにした。


今日要る物は、

・燃料50L×2

・水10立米×2

・混合麦40kg

・ドライキューブ各種セット40kg

・浄化フィルター6つ

・通常弾5ダース


くらいかな。


注文を端末に入力して楓に渡す。


「……何ヶ月引きこもるつもりですか。二ヶ月ふたつきはもちますよねこれ。……そんなに私の顔が見たくないんですか?」


まあよく食べる妹がいるから食料に関しては1ヶ月も保たないだろうな。

「単に防護服着るのが面倒くさかったから、少し買い込んでおこうと思っただけなんだけど……そんなに会いたいならまた来るよ。」

みるみるうちに顔が真っ赤になる。

かわいい。


「誰もそんなことは言ってません! 半年くらい引きこもって干物ひものにでもなればいいんですよ!」

かわいい。


「干物は酷いなぁ。とりあえず商品とって来てもらえる?」

「ふん」

すたたたと小動物のように倉庫の方に走っていく。かわいい。


暫く待っていると、台車と共に心なしか少し小さくなって戻ってきた。


「どうした? 寂しくなった?」

ちっがいますよ! そうではなく、混合麦が6kgしかなかったので次回入荷までないみたいです。すみません」


なんだそんなことか。

「わかった。ならまた来るよ。別に買い込まないと死ぬわけじゃないし」


手袋を外して頭をわしわし撫でてやる。

「気にすんな。またかわいい楓ちゃんを見にくるよ」

「やっやめてくださいそういうの。……まあまた来てください。少し割引しますんで」

かわいい。また来よう。


「それはどうも。……他は、あるね。料金は、これでよし」

手を楓が持つ端末に押し付ける。

静脈認証じょうみゃくにんしょうと手紋が照合され、自分の口座から自動で引き落とされる。

照会完了しょーかいかんりょー。多分20分後には届くと思います。またのご利用ごりよーをお待ちしています」

「はいよ」


配達はドローンがやってくれる。流石にパワーアシストがあるとはいえ、この防護服で250kgちょいを持って帰るのは厳しい。


……ん。待てよ。今家の前は——瓦礫がれきの山で覆われているんだった。

んー。


「楓、車貸してくれない?」

「なぜです? ……ドライブなんて行きませんからね」

警戒してる楓はかわいい。

「それはまた今度ね。そうじゃなくて、今家の前が瓦礫で塞がってるから、多分ドローン来れないんだよ」

ぽっと照れる楓もかわいい。

「そ、そういうことですか。わかりました。お父さんに言ってきますね」

「手間かけて済まんね。今度ドライブに連れてってあげるよ」

結構けっこーです!」


楓は赤い顔のまま、店の裏に走っていった。


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ツンデレロリって可愛いですよね。

ちなみに一応メインヒロインではないつもりです。

実はちゃんとメインヒロインは出てきてます。

今後ともよろしくお願いします。

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