留守番妹+α

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AGE──Another Generation Enemy──と呼ばれる惑星外勢力は、実は何なのかよくわかっていない。

宇宙人なのかモビルスーツなのか地球外変異性金属体E L Sなのか。

理由は、各個体を倒すとちりも残さず燃え尽きるからだ。

まるで何かを隠滅いんめつするかのように。


だから現状、生物なのかモビルスーツなのかも判っていない。

判っていることと言えば、


大気圏外たいきけんがいから降下してくる

・制圧・占領が目的らしい

・耐熱性能が高い


と言ったところだ。


初めて出現したのは今から20年ほど前で、人類はすすべもなく蹂躙じゅうりんされた。


まあ当然である。

小〜中型などはミサイルなどによる飽和ほうわ攻撃で倒せるが、大型以上になると難しい。

何より、耐熱性能が異常に高いのだ。


地球に現れて10ヶ月ほどでカオシュン、ヴィクトリアの軍事基地が落とされ、本当に大変なことになった。


国際連合は総会で核弾頭の使用を許可し、やりすぎたアドミナ共和国の水爆絨毯爆撃すいばくじゅうたんばくげきによってアムドゥスキア大陸の6割が消失した。

その攻撃により、当時我らが母星、マルクト上に展開していたAGEの9割を葬り去ったものの、マルクトの自転周期は変わり、自然環境は激変し、大飢饉だいききんが起きた。


一応、マルクト上にけるAGEの勢いは弱まったので、最悪の事態にはならなかったが、文明は停滞し、多くの人が死んだ。

その後暫しばらくして、環太平洋JAS連合軍が相転移装甲そうてんいそうこう──フェイズシフト装甲──の開発に成功。

しかもその技術を全世界へと無償むしょうで公開した。

フォンブロウ連合国を中心とする国連は核分裂炉を電力源とする大規模な相転移城塞そうてんいじょうさいでコロニーという都市単位を作り、数十のコロニーを単位とするサイド経済体制を整えた。

現在の体勢が確立されるのに7年の月日が経ち、総人口の約半数が失われたとされている。

そして現在。世界は緩やかに安定していた。


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ソースの匂いがする。

朝ごはんに食べたやつ。

明日は何のフレーバーにしようか。甘いのがいいかな。

そういえばお兄様、帰ってこないな。

今何時だろ。

なんじ──


「やばっ、今何時!?」


跳ね起きて時計を見ると、今時珍しいアナログ表示の時計はすでに十一時半を回っていた。

げげ。2限目がもうちょっとで終わるところだ。また兄貴に怒られる。

とりあえず、残り10分だけでも出席しよう。


Hal-Pはるぴーを起動する。

本体の有機ELが点いて、起動画面がくるくる回る。

数秒後、ホロディスプレイが起動し、中学校の授業用ソフトが起動したときには38分になっていた。

ログインすると自動的に授業に飛ばされる。

一回だけくるっとまわってから先生の顔が結像した。


『──はいじゃあ今日の授業はここまで。ん? おやおや、眠り姫のご登場だな。おはよう佐藤。よく眠れたか?』

入った途端先生が──龍上たつかみ先生が冷やかしてきた。

気に入らないが一応挨拶をする。


「おはようござ──」

『おはよー姫!』

『姫が起きたぜ!』

『今日は早いなー』

『どうやらけは俺の勝ちだな』

『いや十分遅いだろ』

『一昨日は4限からだぜ』

『くっそーもうちょい寝とけって』

『あんたよく覚えてんのね』

『どういう意味さ』

『約束通り4番通りの生クリームパンな!』

『いーや別にー』


いつもどおり元気なクラスメイト。

いいやつらなんだけど、眠り姫とか呼ぶのはちょっと。

自業自得だけどさすがに恥ずかしい。


『はいはいお前ら、眠り姫が大好きなのは解ったから、さっさと休憩入れー』

「は?」

『はーい』

『おつかれさまでしたー』

『ありがとうございました』

『お疲れ様です』

『また後でー』

「……お疲れさまでした」

『はいお疲れさん』

釈然しゃくぜんとしないまま通信を切った。


はあ。無駄に疲れた気がする。

あのタヌキめ。いつかギャフンと言わせてやる。


さて、次の授業は12時から。

少しなにか食べようかな。甘いものを少し食べよう。

っていうか、生クリームパンとか何やってんだあいつら。うちにも食わせろ。

とりあえず冷凍庫見にいこう。


***


冷凍庫を漁っていると外でトラックの音がする。

なんだろう。

あ、そろそろ兄貴が帰ってくる頃か。でもトラック? 買ったものはいつもドローンが届けてくれるはず。

それともなんだろう。いまどき訪問販売?

なんか気になったので冷凍庫の引き戸を閉め、窓から外を見る。

と、目の前に瓦礫が広がっていた。

なるほどな。昨日か一昨日の暴風雪が溶けて雪崩でも起こしてたんだろう。

それでわざわざ車でってことだ。

ん? あれ楓じゃん。

わざわざ付き添いってか。初々しいねえ。

いや単に運搬車の回収ってのもあるだろうけど、絶対兄貴と喋りたかっただけでしょ。

とか言ってる間に荷降ろしが終わったようで、狭い路地だが綺麗に切り返して帰って行った。相変わらず運転上手いな。

ま、あとでKINEでからかってやろう。

その前に、我が最愛の兄貴を迎えに行こうか。



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妹ってやっぱり良いですよね。

以前掲載していた、にゃーと鳴けば猫の方とはまた違ったキャラとなっております。

もしよければそちらもお願いします。

気が向けば書きます。

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