終末週末紀行

はっ〇隊

「──以上が前年度の第二統括区全体の仔細報告となります。部隊長及び代理任官の皆様、何か質問疑問異議不平不満等ごさいましたら今お願いします。……はい、南東第二支部、ノイエラ、隊長」

不自然なリズムで名を呼称する。あれ、南東第二ってシモムラさんとやらが隊長じゃなかったか？

「……隊長を拝命したのは昨日なのだがな。 細かいことまでよくご存知だ」

「統括司令本部事務次官ですから、これが仕事です。して、ご用件は？」

「ふん。……身内の恥を晒すようだが、我が統括地区は度重なる隣接支部の壊滅により、通例より５倍以上の面積となっている。それについての本部の見解を伺いたい」

「ええ、それにつきましては資料１３８ページ以降の『今年度中の統括区域再編について＿０６』の方に南東地区の再編計画が記載してありますゆえ、そちらをご覧ください。他、何かございますか？」

まあ、そうなるわな。多分だがノイエラ隊長とやらは叩き上げで資料の目の通し方とか経験がないんだろう。副官クラスを少しでも勤めていたなら身に付くものだと思うのだが、本当の本当に武官だったのか。はたまた別の理由か。

淡々とタムラ事務次官が質疑応答をこなしていく。

でもなあ。我が統括区は中規模工業コロニーが二つあるからという理由で管轄面積が倍になるらしいんだよなあ。

ＹＡＴＴＡ！

統括区が倍になるということは仕事は半分でいいってことじゃあないのか！？

なわけないだろ、バカなのか？　馬鹿なんだろうなぁ。モビルスーツや兵装弾薬その他資材があったとしても、パイロットが足りねえよ。しかしここで言ったとて、何の解決にもならない。

ザフストでは、各支部にかなりの自治権ともいうべき権限が与えられている。言い換えると、ある程度自分でなんとかしろ、ということでもある。まあそのおかげでモビルスーツの改造とか色々勝手に出来ているのだが、統括区面積ニ倍キャンペーンはやり過ぎでしょう。ソシャゲの排出率とは訳が違うぞおい。

帰ったらシフト見直しだなぁ。

「では次に賞与の発表になります。資料１２ページをご覧ください……」

出たな、個人武勲鋲若しくは特別武勲章（投げたら遠くまで飛ぶヤツ）。

地味にそれ自体を売っても金にもなるが、煮ても焼いても食えぬ塊になんの用もないわ、というのが現場の本音ではある。一応雀の涙程のボーナスは併せて出るが、本当に大したものではない。精々その日の晩飯が豪華になるくらいだ。因みに私の分のオモチャは、妹が欲しがるので全部あげている。

前隊長である神田さんくらいやばい働きをすれば別だが、そこまでやる奴は普通居ないしするべきでもない。特別勲一等金盾とか後にも先にも聞いたことがない。

その神田さんはというと、単騎で大型を３体連続で討伐するという、正直人間ではないレコードを持っており、５年経った今でも破られていない。ここ５年でのへミス及び武装の進化を考えるとその恐ろしさがわかる。

「──以上で年次報告を終わります。長い時間お疲れ様でした。では解散」

やっとおわった。

とりあえず飯だ飯。