第8話 奇兎目線「いたずら」

奇兎です。


私はたくさんのクッションが並んでいるのを見てとても興奮していました。色鮮やかな物もあるし、派手な物まで何でもありました。

雷兎はお値段が高い物以外でお手頃なものなら何でも良いと言ってくれたので、私はその条件に合っていて、尚且つ私が気に入るものを探しました。


それから数分後、見つけたのです。条件に合っているクッションを。

そのクッションは白と青を基調としたクッションで、派手さはあまりなくシンプルでした。

上面には青色が目立っており、下面には白が広がっていました。

私がこれを選んだ理由。それは、このクッションの色の配置が雷兎と初めて会った時とよく似ていたからです。あの時は、空は曇っていたけど、地面は真っ白な雪で覆われていました。

もうこれしかない!と思い、このクッションを買いました。早くこのクッションの上で寝てみたいです。すごく気持ちいいんだと思います。


選んだ理由を雷兎に話した時に、驚いていた様子だったのですが、その後とてもうれしそうな顔をしていました。それにつられて私もつい嬉しくなってしまいました。


夜、私は雷兎と一緒に買ったクッションで少しでも早く寝たくてうずうずしていました。

宝石になった私はクッションの上に転がり、寝付けるのを待っていました。

しかし、いくら経っても中々寝付けず、宝石からベッドで寝ている雷兎を眺めて一ついたずらを思いつきました。


雷兎が完全に寝ているのを確認してからこっそりと宝石から人に戻り、雷兎の枕の横にクッションを移動させました。


私は、前に一度寝相の悪さが原因で起きたハプニングを意図的にやりたいのです。それに、一緒に寝てみたい。そんな欲望があったり、なかったり。


宝石になろうとしたときにふと、雷兎の寝顔が目に入りました。思えば、私が雷兎の寝顔を見るのは初めてかもしれません。宝石になるのをやめて、近くで寝顔観察することにしました。起こさないように静かに。部屋は暗いけれど、雷兎の顔を近くでまじまじと見たのも初めてです。


(雷兎、寝るときはこんな顔になるの……ちょっと可愛い)


何度かつつきたい衝動に繰られたけれど、ここは耐えました。また今度、つついて良いか雷兎に聞いてみようかな。オーケーしてくれるかは全く分からない。オーケーしてくれたらうれしいな。


(雷兎の寝顔も見られたことだし、そろそろいたずら決行しちゃお)


宝石に変わる時に少なからず光を放ってしまうので、それで起こしてしまわないよう注意しながら姿を変えることに成功。そしてそのまま雷兎の枕横に置いたクッションに静かにダイブ!

横に移動して思ったのですが、雷兎の近くに居るだけでこんなにも落ち着いてしまうのはなぜなんでしょう?

そして、不思議と雷兎の事は離したくないと思っている私が居ます。


さっきは全く寝付けなかったのに、少しずつ眠くなってきました。これも落ち着けている影響でしょうか。


(今日はありがとう、雷兎)


(明日の朝、どうなるのかな?)


そんなことをぼんやりと考えながら、今日という日にさよならを告げた私でした。

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