第11話 奇兎の笑顔は可愛い
その日の放課後のこと。
「えへへ」
奇兎が朝からこの調子なのだ。学校から家に帰って来た途端くっついてきた。しかし、学校では迷惑になることを避けてかくっついてはこなかった。
奇兎の笑顔は見ているだけで幸せな気持ちになれる。そんな笑顔だ。家に中でどこに行こうにもくっついたままだった。(流石にトイレには来なかった。)
自室に入り、課題をこなした後奇兎に尋ねた。
「そんなに嬉しかったの?」
「……。」
あれ?無反応?不思議に思って奇兎の顔を覗くと笑顔ではあるが、それに加えてポヤポヤしていた。
「…はっ!雷兎、何が?」
我に帰ったみたいだが聞いていなかったようだ。雷兎は苦笑しながらもさっき言ったことを繰り返した。
「うれしいに決まってるでしょ!?私が一緒に寝たいって言っても全然オッケーって言ってくれないし、私なりに考えて迷惑かなって思ってた。だから夜は我慢して寝たのに、朝起きたら雷兎の顔が目と鼻の先にあったんだよ?ビックリして危うく雷兎の真横で人になるところだったけど、それよりもお願いを聞いてくれたことの嬉しさが先に来たの!」
「そっか、なら一緒に寝る決意したかいがあるのかな?」
奇兎が喜んでくれているから何でもいいか。
(なんか自分、奇兎に甘いよなぁ。)
この笑顔は雷兎だけが見ることができるもの。そんな優越感を少なからず雷兎は感じていた。
今後、もしかしたらほかの誰かにも奇兎の存在が認識されるかもしれない。その日が来るまでの間、この笑顔を存分に堪能したいと思う。
それはとりあえず置いておいて、夜遅いし眠たくなってきた。ここであくびを一つ。
「奇兎―、僕はもう寝たいけど、どうする?明日学校休みだけど」
「え、寝るよ寝る!」
寝支度を済ませた雷兎はベッドに横になり、奇兎は宝石に変身して雷兎の横に着地した。
「おやすみ奇兎」
「おやすみ雷兎」
翌朝。
いつもより少し遅い時間に目覚めた雷兎は身動きがとりにくいことに気が付いた。
何で?寝ぼけた頭で思いながら、辺りを見渡そうと視線を動かしても見えるのは白い何か。
視線を上に向けるとそこにスヤスヤと可愛い寝息を立てる顔があった。
……奇兎!?
それでなんとなく察した。雷兎は奇兎の抱き枕にされているようだ。
(通りで体動かしづらかったんだ。)
起こそうにも熟睡している様子なのでその気は失せる。仕方なく奇兎の抱き枕としてそこから数十分抱きつかれた状態で放置した。寝ているはずなのに抱きしめている腕の力は意外にも強かった。
放置して約一時間。全く起きる気配なかったので流石に起こした。
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