第9話 朝からドッキリをやられた。
いつものように朝は寒く、ベッドから出たくない。ずっと布団にくるまっていたい。
だけど、そんなことはできるはずもなく。
目覚めてから少しの間ボーっとしていた。そのボーっとした頭のまま横を向くと、記憶に新しいクッションがあった。その上には宝石が転がっている。カーテンから覗く朝日に照らされて輝いている宝石はとても美しかった。
(あれ?これ寝る前にあったか?)
寝ぼけたままなので、この状況が上手く理解できていない。
目の前の宝石は寝ぼけている僕とは逆に朝日で輝き続けている。
僕は素直な感想を述べた。
「……綺麗だよ、奇兎。……ん?」
ここで僕は完全に目が覚めた。なぜ奇兎の宝石が目と鼻の先にあるのか。昨日寝る前は確かにクッションごと机にあったはず。宝石だけがあるなら奇兎の寝相で片付けることが出来るが、クッションもあるので寝相とは考えにくい。
頭で疑問が浮かんでいる中、さっき奇兎と口にしたので宝石が光り始めていた。
そして。
「おっはよー!」
「ちょっ…!」
奇兎は元気のいい挨拶をしてから横になっている僕にギューッと抱きついてきた。
(朝から心臓に悪い…!刺激が強い…!)
だけど、抱きしめられて悪い気はしなかった。
そんな元気な挨拶をしてきた本人はいたずらが成功した時の子供のような顔を浮かべている。
少しして抱きしめから解放された。
「おはよう、奇兎。あとその笑顔から大体察せるんだけど」
「そう!朝起きたら真横に私がいるドッキリ!」
「うん、そんなことだと思った」
「顔赤いよ?」
「うるさい」
朝から心臓に悪いドッキリを成功させた奇兎はご満悦のようだ。
奇兎が楽しそうにしているから下手にやめてと言えないのが悔しい。
おそらくだけど、奇兎がドッキリを決行したのは僕が寝てからだろう。奇兎は自分の意志でも宝石から人になれるから、それを利用してクッションを枕元に移動させて再び宝石になり朝までそのまま、といったところか。
はぁ、朝起きたばかりなのに変に疲れた。
でも学校あるから服変えないと。
押入れにしまってある制服を取りに行こうとベッドから降りる。
ベッドから少し歩いた時。
「ねぇ、雷兎、今日の夜から横で寝ちゃダメかな?」
奇兎から飛んできた発言が耳に入り、脳に到達したところで僕はフリーズした。
フリーズした僕を不思議に思ったのか奇兎がパタパタと僕の前にやってきた。
「もしもーし、雷兎ー? 横で寝ていいー?」
奇兎は雷兎の顔の前で手を振りながら聞いてくる。
解凍した僕は振られている奇兎の腕を掴む。急に動き出した僕を見て今度は奇兎がフリーズした。
「奇兎、横で寝るのは流石にまずいからダメ、いい?」
「えぇ……」
途端ムスッとした顔になり機嫌が悪くなったのがすぐに分かった。その様子には良心が痛むけれど、これは譲れない。
朝食を食べた後も奇兎の機嫌は悪いままだった。どうにかして機嫌直したいけれどどうすればいいか考えてもいい案が浮かばない。
学校に行く間もずっと隣にいたけれど、機嫌を直すことはなく。ずっとこちらの顔を見て何かを訴えかけているのは何となく分かっていた。
何とかして機嫌を直してもらうために、授業を片耳に聞きながら、ずっと考えた。
授業はとりあえずノートに板書は写したから家で復習すれば問題ないだろう。
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