やる気・根気・気力なしが行く、(ヾノ・∀・`)ナイナイづくしの異世界冒険譚~全ては美味しいご飯の為に~
@unk0wn
1章 異世界転移って誰得(*゜▽゜*)?〜 確かに永遠のニートを望んでたさ!でもこんなんと違う_| ̄|○ 〜
第1話 異世界トリップ(笑)
周りを見渡せば、緑、緑、緑。眼前に広がる雄大な自然に圧巻――なんてことはなく、げんなりと盛大に打ちひしがれている私が思うことは一つ。
「誰か、説明書をください」
切実な思いが口をついた。
◇◆◇
山科 楓(やましな かえで)19歳、専門学生。趣味は食べ歩き、長所はマイペースなところ。他人に「太ったね」とか、「あれ?山科さん、中学時代と見た目変わった?」なんてことを言われようと、私は全く気にしない。
ぼっち属性?違う違う。集団生活が嫌いなだけさ。自分のペース崩されんのが嫌なだけで、一人がいいというよりは協調という精神が微塵もないだけさ。
オタクキャラ?いや、ゲームも漫画も読むけど、祭典に参加することもなければ、コスプレなんて興味ナッシング。クソ暑かったり、クソ寒い中、わざわざ江東区まで足を運んだりしない。因みに現住所は、練馬区だ。
山もなく谷もない人生を、可もなく不可もない感じで歩んできた只の凡人。いや、我ながらよくぞいじめにあわなかったと思ってる。理解ある周囲に恵まれたんだな、きっと。
え?モットー?『やられたら、やり返す』かな。
そんな私が進んだのは、調理師学校。何故かって、それは勿論おいしいものが食べたいから。超一流になれるなんて思ってもいないけど、食べておいしいと感じられる程度のものを自分で作れたら外に出なくて済む。
「めんどくさい」が口癖の私の将来の夢は、ニートか引き篭もり。
でも、「大学出たら、家から出て自立する!!」これが幼少期から刷り込まれているうちの家訓。一度だけ聞いた。「なして?(どっかの方言風)」と、そして言われた「誰の親だと思ってるの。赤ん坊のころから自分で這うことさえ放棄してた怠け者を育てたのは私よ」と。 ”自ら立つ” 成人するって難しいよね。
そんなタイムリミットの迫った私は実家に住みつつ専門学校へ通い、その腕を少しばかり親にアピールしつつ、休日ゴロゴロしても小言を言われないようポイントを稼ぐという毎日を送っていた。
そして今日も今日とて耳障りなアラーム音に起こされて、代りばえのしない朝を迎えるはずだった。
目が覚めて、一番最初に見えたのは青い空。そして、それを縁取る緑の木々。
――夢か。
もう一度目を閉じ、布団に潜ろうとした・・・布団がない。
――ちょーリアルな夢みてる。感覚あるし。
なんて思っていたけど、この肌寒さは夢な感じがしてくれない。
恐る恐る目を開けもう一度周囲を見渡す。
「うん。やっぱ夢だな」
――ははははは。毀れた呟きも幼い感じがするし、きっと夢だねこれ。
仕方なく起き上がり、もう一度周囲を見渡す。
一瞬浮かんだ可能性は・・・
――え、捨てられた?獅子の子を谷に突き落とすが如く、自立しそうにない我が子を強制自活させんと樹海に置き去りにされた?まさかねぇ・・・・・・やりそぉ。あの親ならやりかねないよ。
嫌な汗が出てきて、冷静にならんと深呼吸。
目を擦ってもう一度周囲を・・・見渡そうとした視界に小さな手が見える。
「あれ、おかしいな。私の手が小さく見える。いやぁ、すげぇリアルな夢見てんな私。疲れてんのかな」
しばらく遠い目をして緑に和む。
「とりあえず、顔洗お」
立ち上がった視界が6歳児並みに低いのも、見覚えがない服着てんのも、今は気にしない。何でかって、話が進まないからだよ。
ガサガサッ
突然の音にそっちを見て、私はフッと自嘲する。
その吐息に哀愁を感じるのは、本人の心境を世界一理解する人物だからさ。
「ギヤァァァァァァァァ」
「プギャァァァァァァァ」
私の悲鳴と、謎の生物の悲鳴?が重なる。
そして、本能で駆けだしたのは私が早かった。が、馬鹿な私はそれで野生動物を刺激したことに気づかなかった。
「何アレ×3」
イノシシっぽいなにか。としか言えない図鑑にも載ってない、ビッグサイズなナニか。
牙が4本あって、額に小さいサイズの角があって、何よりでかい。
メディアが発達した文明で、未知の生物なんてものもうほぼ生息していないといっていい。そして、私は毎週かかさず見ている。某放送局でやってる自然界の動物の生きざまを紹介する、某番組を。
それだけに限らず、世界規模で発見されていない動物に出くわすのは、奇跡に近い。
――12メートル大なイノシシっていんの?30超えたら魔法使いになる的に、放置したら神獣になれる的な自然界の掟ってあったの?え、これ私新生物発見の親になれる感じ?カエッシー的な名付け親になれる感じ?
「つぅか、速いし。いや、私が遅いのか?コンパス違う分ハンデだろ絶対。ここは、何か特別ルールありだろ絶対」
この際、このミニマムサイズだったら世界レベルの速さが出ているとか、とっくにゲームオーバーであるはずだとかの現実的かつ客観的な評価は当事者な私には関係ない。大切なことは、追いつかれそうであるという命の危機にある現状――これのみだった。
徐々に迫りくるっていうか、もうすでに鼻息かかってるんですけどみたいな距離に気配があって、藪から何もない空間に出た瞬間に見えた巨体に、一か八かっていうか非現実に非現実を重ねたその状況にパニックになった私は破れかぶれだったと断言しよう。決して厨二病なんてかわいそうな脳みそ持ってたわけではないと、ここにはっきり証言しよう。
とにかくパニクった私は、死にもの狂いで叫んだ。
――ただ、お腹が空いていたことは白状する。
「《ウェルダン》」
瞬間、熱風に吹き飛ばされる。武術の心得があった私は、そのまま頭だけは死守して転がり、木の幹で背中を強打して止まった。
霞む視界に、炎に包まれた塊が見えた。世界が暗転する瞬間、お肉の焼ける匂いが鼻を突いたのを最後に気を失った。
――起きたら、絶対晩御飯をステーキにしよう。
そう、固く決心しながら。
目を開けたら、全てが夢だった。――ってなるのが現実のはずだった。
「あれ、可笑しいな。涙が」
出てもいない涙をぬぐい、私は嘆いた。
「誰か、説明書をください」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます