4章 犯人だ〜れだ^_−☆ 〜 えぇ加減責任者出て来いやぁ、われぇ(ꐦ°᷄д°᷅)」〜
第42話 修行の日々
指先ワンタッチが懐かしい。ソシャゲはオートバトルモードでの放置プレイでレベリングした口だ。そりゃ、想像した通り動けるってのも面白いって思うよ?でも、ゲーム通りの動きするとさ、三半規管がびっくりするんだよ。思ってた自分と違うって何か脳がね、拒否ってるんだよ。
「これでいいのか?」
「ん~、いんじゃない?」
「お前、俺に教えんのそんなに嫌なのかよ」
「いや。めんどくさいだけ。誰に教えるにしても」
シュンとなる耳と尻尾に、私は溜息を吐いて座っていた岩から立ち上がる。
この数日、暇になるとウォルフはあの試食会場の空き地に通い詰めている。初めは、なんとなし「あそこなら、組手も双剣訓練もできるんじゃ?」って言ったら、次の日から頼み込まれた。
グランに組手を、私は基礎の型を考え教えてる。まぁ、私が教えられそうな型はもう教えた。後は、ウォルフが見よう見まねで、技のキレと素早さを磨くだけなんだけど、ウォルフは私のアドバイスを欲しがるから、正直めんどい。
「前への斬り込みは、腕だけで済まそうとしない。もっと上半身捻って。今度から背筋と腹筋する時に捻りを加えるようにすれば、筋肉できんじゃない?基本の型は、どんなとっさの時にも出来ないといけないから、型を体にたたき込む。ステップも遅い。リズムよく、瞬発力上げて」
あとは、キャラ育成的に言えば、もう少しアクロバティックな動きは加えたいところだけど、それは次の段階だな。
ぼーっと観察しながら、こう言うところが頼られる原因なのか!と思いつつ、まぁいいかと見守る。
「お前、ここで何してんだよ」
そして私がここに居ると、大概スラムの子供たちも遊びに来る。
「おー。元気か。こないだから無事冒険者登録して、ダンジョン攻略始めたって聞いてたけど」
久々のロウ少年が、相変わらず目つき悪く立っていた。後ろにもお仲間の子らが。
「まぁな。お陰さんで・・・ほら」
そう言って差し出されたのは、襤褸布の袋だ。
「?お、ありがと。悪いね」
中を覗けば、バターの実が入っていた。この程度なら、借りって気はしないからありがたく懐に納める。
「別に。お前のおかげで、うまいもん食べれるようになったしな」
「そりゃ大事だね」
「で?何してんだよ」
「ウォルフの特訓」
基礎練100setを熟すウォルフを指さし、私は答える。
「特訓って…あの変な動きが?」
「ウォルフは双剣遣いだから、普通の剣の素振りの動き使えないの」
「双剣?聞いたことねぇけど。2本持つと双剣になんの?」
「まぁそうだね。言っとくけど、普通の剣2本持つって訳じゃないよ」
「ふーん。同じ動きして、馬鹿みてぇ」
そう言えば、グランにも不思議がられた。どうやら我流の人等は実戦で身に着けるらしい。素振りとか型の概念があるのは、流派のあるような騎士とか貴族の剣なんだそうだ。で、失敗したら代償を払う。日本にはない考え方だね。失敗=致命傷か即死って。
「どんなもんでも基本ってのは、身に着けておくといざって時の動き方が違うからね。あぁして何度も何度もやってると、やっててよかったって思う時が・・・・・・・・来るかもしれないし、来ないかもしれない」
私は…あったな。痴漢撃退した時とか、逃げてきたひったくり投げ飛ばした時とか、爆風に吹き飛ばされて受身取った時とか。最後のが一番身の危険を感じた出来事だったかもしれない。よし、今夜はポークステーキにしよう。
そんな走馬灯の様な過去を振り返る私に、呆れたような目が向けられる。
「どっちだよ」
「そんなの私が知る訳ないでしょ。でも、初めて持つ武器の動きは知らないと使えないからね。それに、自信が付くんじゃない?何であれ、自信なく握る武器には迷いが生まれる」
「お前も、あれできんの?」
「まぁ」
「やってみろよ」
「え、ヤダ」
「やれよ」
「ヤダよ」
「それ、また拾って来たらお前に分けるように全員に言っとく」
なぁと周りにいる子たちに確認すると、一斉に頷く。
「もぉ、そんなに言うなら仕方がないなぁ」
私は決して食べ物に釣られたのではない。釣られたのではないけど、これは色々と使えるからくれるんなら欲しい。
「ウォルフ、ちょい
「!!おぅ・・・おっす」
「いい返事だ。これは次の段階だから、覚えてもいいけど、まだやんなよ。まずは基礎だかんな」
「おっす」
ウォルフと入れ替わりに、私は構える。ゲーム思い出しての適当な動きで、回る視界に違和感バリバリの脳みそを置きざりに、ロンダートバク宙の後着地した。
「こんな感じ?」
「「「「・・・・・」」」」
「カエデ、美しかった」
「グラン、口を閉じろ」
グランの称賛は、毎度鳥肌もんだ。赤面と言うより、鳥肌が先立つ。
「…俺、双剣がいいな」
ナイフ遣いらしい少年が、目を輝かせている。そうだよな。かっこよく見えるよな。アクロバット。
「ナイフでも今の動きは取り入れられるけど、双剣がいいなら将来的に移行できるといいな」
当たり前だけど、ナイフと双剣では金額が違う。今の彼らではまだ無理だろう。頑張れよと先輩風を吹かせ、私はウォルフに場所を譲った。
ウォルフは今の動きを脳内リピートしてるのか、凄く真剣な顔で黙り込んで宙を見ている。ウォルフのこういう時の集中力はピカイチだから、多分センスは高いんだろうと思う。基礎練だけで、Lv.2に上がったくらいだし。ただまぁ、私のスキルの上りが相変わらずチート過ぎて分かりにくいだけだ。10が20にって、何も倒してないのに可笑しくね?
盛り上がる周囲をよそに、私はそう言えばと何故かこのタイミングで思い出した。
「来ないな」
「誰がだ?」
私の呟きに、グランが反応する。
「ん?いや、ディオルグさんたち、この頃顔見てないなって今ふと思った」
1週間くらい前が最後だったか。と記憶を振り返っていると、グランが少し目つき鋭く視線を逸らしたので、ははーんと察する。何かあったんだろう。グランの気に触れることが。まぁ、大人の問題かと流すことにして、私は1週間かと空を見上げる。
「グラン、ヴァンガードさんのところに久しぶりに顔見せに行く。その後、ヴァンガルドさんとこね。ウォルフ、まだいる?」
「おっす」
「分かった」
私は忘れていた件をお伺いに行くべく立ち上がった。
「あ、そうだ少年たち。明後日あたり、またじゃがいも補填しに行くからよろって言っといて。そん時に、これ集められるだけ集めて売って欲しい」
「おう。何個だ?」
「ん~、じゃがは200個くらい。バターは上限なし」
私がバターと呼んでそのまま定着したのか、スラムの子にバターで通じるようになっていた。
「分かった」
合成や錬成をしまくった影響か、万能保管庫が Lv2に上がったことで、枠が200枠/Max 500へと上がり、色々買い貯めできるようになったのはうれしい誤算だ。ただ、何故かこのスキルだけ上りが悪いのは不服申し立てしたい。一気にLv.100になってくれてもいいものを。忌々しく感じながらも、ヴァンガードさん宅を訪れる。
「こんちは~」
「おう、嬢ちゃん。久々ってか、あの日以来じゃねぇか」
ヴァンガルドさん交えて新合金について会話して以来だったが、決して忘れていた訳ではない。用がなくなっただけだ。
「前に話した革の件、どうするか聞こうと思って」
「あれか!!買う・・・が、何だ。もしかして発つのか?」
流石年の功と言うか、何か察する者があったらしい。私は肯定も否定もせずに微笑った。
「物を見せてくれ。あ~待て。店閉める」
奥に通され、私は研究の成果を披露した。
「これが一番安く売ってもいいやつです。1,000くらいでも文句ありません」
「ウルフ系のか、確かにこれならまぁ、Cの革使ゃ事足りんな。こっちは…ほぉ、Bクラスの・・・・分かったちょいと待ってろ」
お金を取りに席を立ったヴァンガードさんを待つ間、グランが尋ねる。
「街を出るのか?」
「うんまぁ。そろそろだね。ヴァンカルドさんの進捗確認して、詳しい日程は決めようかな」
「そうか」
私の行動スケジュールに物申さないグランは、私の決定に頷くだけで返す。こうして、私は89,300,000ユーグを稼いで店を出た。
「嬢ちゃん」
「はい?」
「これをやろう」
投げてよこされたのは、ごつくて立派な紋章入りの小さなナイフだった。
「これは?」
「ドワーフの国に行くことがありゃ、門でそれ見せれば顔パスできる。あと、そん時ゃ『アラカイト』って店訪ねてみな。儂らのこと話しゃ、色々融通してくれんだろうぜ。何より、おめぇさんの素材に興味を持つだろ」
「『アラカイト』」
「俺の兄弟子の店だ。武器だけじゃねぇ。フライパンなり、何なり、色々作ってっからな」
「…ならありがたく。お世話になりました」
「おう。また近くに来ることあれば、顔見せに来い」
「ウォルフに伝えときます」
そうして、私は笑顔で店を後にした。
■ カエデ ヤマシナ (6) Lv.8 女 ヒューマン
HP 90/90 MP ∞ SPEED 7
ジョブ:チャイルド
魔法属性:全属性 『上級魔法 Lv.100』『身体強化魔法 Lv.3』『治癒魔法(ヒール)Lv.100』『回復魔法(キュア) Lv.100』『完全治癒(リディカルキュア) Lv.100』『付与魔法 Lv.15』『特級火魔法 Lv.1』『古代闇魔法 Lv.I』
スキル:『探索(サーチ) Lv34』『審眼(ジャッジアイ)Lv.27』『隠密 Lv.7』『逃走 Lv.4』『狩人 Lv.10』『スルー Lv.999』『万能保管庫(マルチアーカイブ)Lv.2』『ユニーク:絶対防御』『双剣術 Lv.20』
状態:『若返り』『闘神の加護』
称号:『異世界人』『怠け者』『食道楽』『料理人』『破壊魔候補』『自己至上主義者』『画伯(笑)』『発明者』『デザイナー』
アイテム:奴隷[竜人:グラディオス]
所持金 258,661,410ユール
■グラディオス (179) Lv.326 男 竜人
HP 1,690/1,690 MP 2,690/2,690 SPEED 299
ジョブ:戦闘奴隷〔契約主:カエデ・ヤマナシ〕
魔法属性:闇・風・火属性 『古代闇魔法 Lv.X』 『上級風魔法 Lv.100』『特級火魔法 Lv.45』
スキル:『隠密 Lv.89』『剣術 Lv.97』『体術 Lv.100』『暗殺術 Lv.60』『従僕スキル Lv.85』
称号:『紫黒の死神』『始祖竜の末裔』
■ウォルフ:(9)Lv.13 男 獣人(狼属)
HP 125/125 MP 39/39 SPEED 194
ジョブ:双剣遣い
魔法属性: 火・無属性『身体強化魔法Lv7』
スキル:『追跡術 Lv5』『噛千切 Lv5』『掻爬 Lv7』『双剣術 Lv.2』
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