2章 テンプレっておいしいですか(*'▽')? 〜私は"レ"じゃなくて、"ラ"のがいい(ノД`)〜

第14話 旅情


 危機感?何それ美味しいの?旅行なんて、Webで予約して、安心安全環境整備万全の治安最高国内旅行しか行ったことのない現代っ子 山科 楓 元19歳に、道なき道を進むことの危険性なんて分からん。


「あっちに何かある」


 私の指差す先に、文句も疑問もなく進行方向を変えるグランタクシーに乗って、私はマップ?に記される赤や緑のポイントを確認に行きつつ移動する。


「おい、何があるかも、何が出るかも分かんねぇのにこれ以上進路妨害すんなよ」


 おかげで遅々として進まないのは認めよう。人目があるから街道に出るわけにもいかず、私が苦労するわけでもないから、基本はたまたま見つかる獣道を進みながらそこから外れて本気で道の「み」の字もない方向を指しても平気で進んでくれるグランに甘えて進んでいるのは自覚してる。


「大丈夫!先は急がん」

「そういう問題じゃねぇだろ。食いもんが尽きたらどうすんだよ」

「肉は獲れるし、結構食べられる食材も採れる。問題は塩だけど、コショウ十分取れてるから今のところ困るとまではいかないかな。ほら、シュガーも手に入ったじゃん」


 こっちで砂糖[シュガー]は綿毛みたいな謎植物で、食べたら溶けた。ちょっと心配してたけど、森は大量入手はできないけど少人数分なら十分な食材が採取できて、ちょっとこのまま森暮らししてもいんじゃね?ってくらいに豊富だ。


「それに、魔獣狩りしてレベル上げも出来る」


 道々、私は魔法で、ウォルフはナイフと牙とか爪で奮闘して経験値どうなるか実験した。結果、見事2人とも1Lv upを果たした。ただ、武器がないせいで近接戦を余儀なくされたウォルフは、そのせいでもう着ている服がボロボロだ。だから途中でやめとけって言ったのに。

 今ブーブー言ってるけど、Lvが上がったことで、私の魔獣狩りを反対していたウォルフの方が積極的に魔物に向かっていくから困りものなのだとチクリと言ってやろうか。ま、一々解体してる時間ももったいないし、めんどうだしで狩りは必要最低限にしかしてないけど。

私はウサギと鳥しか解体したことないし、グランは全般いけるらしいけど道具がない。ウォルフは王都の孤児院育ちだから解体したことないらしい。と言うことで、赤点の指す場所まで行っても、がっちり四足獣だったら諦めるし、襲ってきた狼系のは埋葬するようにしてる。因みに、この森のランクでは経験値にもならないっぽいグランには、数が多い時以外戦闘は控えてもらってる。グランの剣がウォルフにも使えたらまだよかったんだけど、片手で軽々と使うからそうは見えないけど、異常に重いらしいその剣をウォルフは持ち上げられなかったからナイフで近接になったんだけど。

 と言うわけで、服と武器の調達が急がれる今、寄り道はしてられないのは事実だが。


「てかさ、こんな道なき道を行って、そもそも方向分かんの?」

「勘だ」


 グランのすがすがしいまでの返答に、私は思った。


「ルアーク着くの、いつだろうね」

「寄り道させるお前が言うなよ」


 グランたち曰く、今目指しているルアークはヴァルタ中立国という国で、もともとは今までいたトラヴァルタ王国から独立した地方国家らしい。険しい山脈に隔たれ王国中枢から距離があったことと、ダンジョンができた際に起こったスタンピードでの国の支援不足で仲違いしてできたのがこの国で、ダンジョン都市と言っても中級ダンジョンがあるだけの小国なのだそうだ。


「ヴァルタはヒューマンだけじゃないんだよね?」

「獣人とも良好な関係を保っていて、王ではなく各ギルドマスターにより運営されている」

「ギルドが国家運用とかしていいの?」

「いや。ギルドはあくまで自治体の有力者としての役割で、国民もそれに従っているわけではない。どちらかと言えば自由自治国家だ。法律も税金もない」

「よくそれで治安守れてるね」


 きっちりした法治国家で育った身としては、想像もできない。どうしよう、奮戦国家みたいな地域だったら。私、秒で誘拐されそうなんだけど。


「土地柄的にうまみがないから、周辺国の侵略は心配がない。農業には不向きだし、鉱脈があるわけでもない。おまけに周囲は開拓困難な高レベル帯の魔物が出る森だから、魔獣から取れる核や素材が特産ってことになると、自然そこに集まるのは荒くれ者が多い。だから、そこを治めるには強さが求められるわけだ」

「だから、ヒューマンより獣人が多いって聞いてるぜ」


 獣人はヒューマンより身体能力に優れているとのことで、それゆえ荒事に特化しているとか。納得の摂理だ。


「ダンジョン都市って言うくせに、中級なの?」

「ダンジョンは10層以下のものを下級、50層以下のものを中級、それ以上を上級と分ける。ルアークのダンジョンは30層だから、中級だ。あそこのボスから手に入るアイテムは、最高で2級品のものだったはずだ」

「等級があるんだ」

「あぁ。魔法道具や武器系統が取れるダンジョンが主だ」

「食べ物系は?」

「ダンジョンで手に入るもので、って意味か?だったら基本的に、ダンジョンの魔物を倒せば肉と皮が手に入るが」


 ボス戦攻略でって意味だったけど、意味が通じないと言うことは、ボス戦では食べ物は手に入らないっぽいと理解した。でもそうなると、他に気になることが…。


「拾われなかった肉、腐らない?」

「一定時間が過ぎると消える。そういう仕組みだ」

「へー」

「ルアークは、どちらかと言うとダンジョンより魔の森で取れる肉や素材の方がレベルが高いがな」

「だからグランも入りこめるくらいチェックが緩いんだ」

「あぁ。強ければ見逃してもらえるものも多いって風潮の国だ」


 話を聞きながら、目的の植物に辿り着きジャッジアイを発動する。


■マゴの木

マゴの実がなる木。基本的にどんな土地にも生息する常緑樹。

■マゴの実

食用可。


 マゴの実を見上げる。地球の常識に引っ張られると、多分一生それがそれだと気づけないんだろうなと、何度目かにカルチャーショックを受ける瞬間だった。


「卵に見える」

「あれは、マゴだ」

「ぬるぬるした汁が出てくるんだぜ。ぶつけ合いして遊ぶ実だ」

「あのさ、卵って知ってる?」

「タマゴ?何だそれ?」

「動物ってどうやって増えるの?」

「母親が産み落とすんだろ」

「他の方法で生まれる生き物はいないと」

「他の方法と言うと?」


 不思議そうなグランとウォルフに、私はたわわになるそれを見上げて、ファンタジー!と少し感動する。どうやらこの世界、卵生とかないっぽい。そうか、卵は動物性じゃなく、植物性なのか。


「あれ、腐らないの?」

「腐る。実が熟して落ちる時期は、腐った匂いで魔物も近寄らない」


 銀杏的な…。この世界、食べ物になるもの意外に多いと感じるけど、食べ物になると認識されてるもの少なくね?農業とか畜産って何育ててんだろ?


「そっか…。まぁ、いいや。あれ、多分食べれるから取ってきて。今日はここまでにしよう。私の予想通りのものだったら、取るだけ取って出発するから、取り敢えず少し早いけど夕食にする」

「あれを!?食べれんのかよ?」

「予想通りのものだったらね」

「分かった」


 グランは基本、私がやると言ったら余計なこと考えずに動く。奴隷精神が沁みついてんだなと、職業病的な性格に他人事ながら心配にならんでもないけど、楽だから助かる。

 今日は目玉焼きだと決めて、私はかまど作りに取り掛かった。大体こんな感じで、私たちの1日は過ぎていく。


■ カエデ ヤマシナ (6) Lv.4 女 ヒューマン

 HP 45/45  MP ∞  SPEED 6

 ジョブ:チャイルド

魔法属性:全属性 『初級魔法 Lv.100』『身体強化魔法 Lv.3』『治癒魔法(ヒール)Lv.100』『回復魔法(キュア) Lv.100』『完全治癒(リディカルキュア) Lv.100』

 スキル:『探索(サーチ) Lv8』『審眼(ジャッジアイ)Lv.5』『隠密 Lv.3』『逃走 Lv.4』『狩人 Lv.10』『スルー Lv.999』『亜空間倉庫(アイテムボックス)最大』『ユニーク:絶対防御』

 状態:『若返り』『闘神の加護』

 称号:『異世界人』『怠け者』『食道楽』『料理人』『破壊魔候補』『自己至上主義者』

 アイテム:奴隷[竜人:グラディオス]、所持金 56,780,450ユール、塩100(-30)、毛布、回復薬4、ダガーナイフ(鉄)、フライパン(鉄)、バジリコ 34、アロナの葉 136、マカラ 21、ナティーア 46、ワイナリーの樹液、ライスライム 15、風の魔石(下)3、風の魔石(中) 1、ホーンラビットの骨、小麦 950、オリーブオイル、ガーリー 12、芋 21、アメジスト 5、ダイヤ 12、ネックレス 6、指輪 8、ベージ[コショウ] 75、ルッコラ 7、ほうれん草 14、タマネギ 4、キャロル 5、マゴ 56、ホーンラビット 2、ウィンドバード 1、ウィンドバードの風切羽 4


■グラディオス (179) Lv.326 男 竜人

 HP 1,000/1,690  MP 2,690/2,690  SPEED 299

 ジョブ:戦闘奴隷〔契約主:カエデ・ヤマナシ〕

 魔法属性:闇・風・火属性 『古代闇魔法 Lv.X』 『上級風魔法 Lv.100』『特級火魔法 Lv.45』

 スキル:『隠密 Lv.89』『剣術 Lv.97』『体術 Lv.100』『暗殺術 Lv.60』『従僕スキル Lv.80』

 称号:『紫黒の死神』『始祖竜の末裔』


■ウォルフ:(9)Lv.12 男 獣人(狼属)

HP 93/115 MP 15/15 SPEED 180

ジョブ:孤児

魔法属性: 火・無属性『身体強化魔法Lv5』

スキル:『追跡術 Lv5』『噛千切 Lv3』『掻爬 Lv4』

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