第35話 バイト募集
モットーは金で買える物は買え、万年金欠 山科 楓です。計画性ないし、3日坊主だから帳簿付けるのもめんどくさい。現地に言って買い物する気力ないから、ネットでご当地グルメを楽しむ。そんなあの頃が懐かしい。働かざるもの食うべからず。こんな世界大っ嫌いだ。絶対責任者〆る。基本受け流すしよっぽどじゃないと根に持たないタイプだけど、根に持ったらしつこいかんな。スッポンよりしつこいって評されたことあんだかんな。
宿を出た私たちは、約束の前に市場へと向かう。その際、きっちり認識阻害は忘れない。私とウォルフには少し強目に。話し掛けても、直ぐに印象がぼやけるように。
「これください」
「あいよ」
目的地は、リンゴもといウォークの実を買いに果物屋さんへ。1日の収穫高はそんなにないけど貢物(魔物or魔力)をすれば毎日獲れるという魔物の実。実だけでも僅かな体力回復があることから人気もある為、昨日グランが来た時には既にあんまりなかったと言っていた。到着した時は昨日より遅い時間で、最後の3個。300ユーグを出し、その場で1個ずつ齧る。
「おねぇさん。ウォークウッドって、この近くに結構いるんですか?」
壮年に差し掛かるいいお歳のおねぇさんに、私は尋ねる。
「ん?そうだね。森の入り口付近に固まってるよ。魔力が高けりゃ、自分で獲れるよ。ま、あたしらじゃ実らせて2~3個が限界だからね。稼ぎにゃなんないけど。もし多めに獲れたら、うちに卸しておくれ。サービスするよ」
「へぇ。いくらくらいで買い取ってくれるの?」
「そうさねぇ。1つ60ユーグくらいかね」
仕入れ値6割か。まぁ、この街は税金ないっていってたし、小売り業者であるおばちゃんの利益は4割なら良心的だな。地代にこの店の顧客信用度の価値を考えたら、多いくらいかも。
私は礼を言って店を後にした。
「何が知りたかったんだ?」
「一応、もしもを考えてね。今日人手があるなら、有効活用するのも手かなって」
次に旅用マントをと服屋に行けば、子供用はないと言う。店員さんが付与魔法の使い手で、一番安いタイプのマントにしても魔法込みで1枚250,000。どうしよう。これなら、革あるから自分で作りたい気もするけど、我慢。私たちが求めているのは、普通のマントだ。そう、“普通”の。そこで思いつく。
「すみません。旅の途中で倒して解体した狼の革があるので、買い取ってもらえませんか?」
今、狼の革が枠を2つも占拠している。正直、捨て値でもいいから売れないかと、マジックバックには常備スタンバっている状態だ。ジャッジアイで見た感じ、ここのおじいちゃん店主は善良そうだし、マジックバックをほのめかしても大丈夫そうだから話を持ちかけてみる。
「そうだねぇ。持込か…どのくらいあるんだい?」
「群れに何度か遭遇して、荷物を占領している。買ってもらえるのなら、言い値で、買ってもらえるだけ売りたい」
こういう交渉ごとになるとグランがあまりにも話さない為、革を売る時のテンプレ文句を一通り覚えさせている。
「見せていただけますか?」
「これだ」
「これは…すごく状態がいいですね。こんな完璧な処理見たことない。これなら…1枚7,000ユーグで100枚、なければあるだけ買取りましょう」
「分かった。どこに出せばいい?」
「では裏の倉庫までお越しいただけますか?」
こうして、私たちはマント2枚と大銀貨2枚を手に店を出た。
最後、名前を聞かれたグランが、このまま解体専用で革卸業者をしないかって誘われていたのが面白かった。
「何か、買い物に来て金貰うって、変な感じだよな」
「だね。はい、ウォルフが狩ったからウォルフにあげる」
「いらねぇ。俺欲しいもんねぇし、お前が持ってろよ。それに俺、まだあるし」
言って、銀貨1枚の入ったポケットを叩く。街に入ってウォルフに持たせてるお金だ。昨日使ったから、お釣りを回収して1コイン戻したやつ。財布がないから、じゃらじゃらさせんのも邪魔かなと。
「なら、欲しい物できたら声かけるようにね。誰のお金って訳でもないし、共有資産なんだから」
「分かった」
「グランも、いざとなったらバックに入れてるお金使いなね」
グランのバックに入れてある買い物用のお金は、基本グランが出し入れするが、グラン個人の意思で使おうとしないから一応注意する。まぁ、本人の性格的に何言っても無駄だろうけど。
約束の場所に着くと、昨日の獣人兄妹がちゃんと待っていた。周囲をサーチすれば、隠れている点がちらほら。認識阻害をかけてるから声を掛けねば気付かれないけど、周囲の包囲に気付いているグランとウォルフが、如何する?と問うような視線を向けてくる。
私は仕方がないと溜息を吐いて、不自然にならない程度に阻害を薄くしていき解くと、予定変更はないと無言で示す。
「あ、きた」
ちょっと不安そうだった2人は、顔を明るくしてこっちを見る。私は地面に下ろしてもらって、挨拶しつつ意思確認をする。
「おはよ。仕事は受けてもらえるってことでいいのかな?」
「その代わり、金は先だ」
「ダメだ」
私が答えるより先にウォルフが前に出た。
「信用なんねぇ。金は終わってからだ」
まぁ、そうだろう。持ち逃げされても、今の私の懐は痛まないけど、私の野望が砕ける。
「わ、わかった」
悔し気な男の子に、妹ちゃんが周囲をキョロキョロしながら引っ付く
「ところで、周りにいる子たちは、君らのお友達?」
私の確認に、後ろの壁から目つきの悪い15歳くらいの獣人の子が現れると、他の子供たちがぞろぞろ出てきた。全員で13人。もう少し集まるかと思ったけど、今現状はこれくらいで十分だ。
ウォルフが警戒して威嚇するけど、そう目くじら立てる程の脅威ではない。リーダーっぽい男の子が一番Lvが高い13だから、ウォルフと同じ。年齢を考えれば、ウォルフはすくすく成長中らしい。
「こんにちは、君たちもお仕事希望ってことで大丈夫?」
「…そうだって言ったら?」
「やって欲しいことはあるから、歓迎するよ?」
私の言葉が意外だったのか、リーダー格の男の子は目を見開く。
■ロウ (15) Lv.13 男 獣人(犬属)
HP 100/127 MP 19/19 SPEED 47
「ほんとう?」
後ろにいた7歳くらいの子供の問いに、私は説明する。
「森の入り口付近にウォークウッドがいるのは知ってる?」
「あぁ。でもあの辺りは、チビたちには無理だ」
「そこって門を通らずに行けんの?」
「…行けるルートもある」
「一々門通りたくなくてさ。そのルートで森に出れるなら、そこで実の収穫をお願いしたい。その代わり、これは日当が出ない」
「にっとうって何だ?」
もっともだ。日当なんて言葉知らないよね。私も中学生の頃は知らなかったよ。バイト求人見るようになって知ったもん。君が知らなくて当たり前だ。
「その子たちから、仕事内容は聞いてる?」
「はずれの根採れば、小銀貨1枚と肉3本って聞いてる」
「そ。その条件から小銀貨1枚の条件がなくなる」
「なっ!?バカにすんな。それじゃただ働きじゃねぇか」
「こればっかりは君らの目で見てもらわないとだけど、ウォークの実を実らせるのはこっちでやる。でも、収穫とかはめんどうだから任せたい。こっちの取り分は400個。それ以上は獲れても君たちのもの」
「そんな生る訳ねぇだろ。孤児の俺らだって、知ってるよそのくらい」
「信じるか信じないかは君次第だけど、このおじいさんは人とは違う」
「カエデ、俺はおじいさんだろうか」
「うん」
「…そうか」
しょんぼりするグランに、慰めの言葉はない。だって事実だからな、179歳。
「魔力がべらぼうに高い。だから、実は取り放題になるはず。生らせたことないけど」
「う、嘘だったらどうするんだよ」
「私が絶望する」
「あ?」
「私が、絶望する」
大事なことなので、目を見てはっきりしっかり、発音良く答える。
「「「「「「・・・」」」」」」
全員が困惑した空気に、私は続けた。
「まぁだとしても、今日の取分肉串3本は確実に手に入る。君たちにしたら、付いて行って実が生らなくても働かずして今日のご飯が手に入る。400個生らなくても同じ」
「・・・でも、中途半端に生ったら?」
「そうだなぁ。収穫手伝える子は何人?」
「10人だ」
「木に実が100個以上500個ないようなら、収穫してくれたら1人小銀貨1枚出す。500個以上生ったら最初の話に戻るってのはどう?君たちは私たちに渡すもの以上獲れば、それを売ればいい」
「何で500なんだよ。お前ら400しか必要ねんだろ?」
「500はないと、君たちの損失になる。ウォークの実は1個60くらいで買い取ってもらえるって聞いてる。多分、薬事ギルド行けばそれ以上で買い取ってもらえるんじゃないかな?となると、君たちは小銀貨1枚相当に当たる16個を収穫しないと損だ。10人手伝ってくれるなら、160個君たちの分はないとこの仕事に旨味がない。私たちはせめて340個くらいは欲しいから」
560個生らせられないようなら、こっちの取分を削って渡せばいい。
少し難しかったのか、リーダーの子は難しい顔をして後ろのハーフエルフっぽい男の子に相談している。
「………どう思う」
「いいと思う。本当にそんなに実が生ればだけど。今日はどっちにしろご飯にありつけるし」
「…いいだろう」
「じゃ、交渉成立。他の小さい子たちは、この子らの収穫手伝って。報酬はこの子たちと同じ条件。でも、こっちの取分ちょっと増やす。そうだなぁ。みんなで500個採ってくれれば、その中から選別する。それから、5人で受けるんなら、悪いけどボーナスはなくなる。どんなに頑張って採っても、1人小銀貨1枚。数取り終わったら止めてもいいけど、少し多く収穫しておけば、明日売る分になるんじゃない?」
年少組の子供たちは、顔を見合わせやがて頷き合う。
何はともあれ、まずはこの子らの串焼きを買いに行くことにした。
■ カエデ ヤマシナ (6) Lv.9 女 ヒューマン
HP 90/90 MP ∞ SPEED 7
ジョブ:チャイルド
魔法属性:全属性 『上級魔法 Lv.100』『身体強化魔法 Lv.3』『治癒魔法(ヒール)Lv.100』『回復魔法(キュア) Lv.100』『完全治癒(リディカルキュア) Lv.100』『付与魔法 Lv.15』『特級火魔法 Lv.1』『古代闇魔法 Lv.I』
スキル:『探索(サーチ) Lv34』『審眼(ジャッジアイ)Lv.27』『隠密 Lv.5』『逃走 Lv.4』『狩人 Lv.10』『スルー Lv.999』『万能保管庫(マルチアーカイブ)Lv.1』『ユニーク:絶対防御』『双剣術 Lv.10』
状態:『若返り』『闘神の加護』
称号:『異世界人』『怠け者』『食道楽』『料理人』『破壊魔候補』『自己至上主義者』『画伯(笑)』『発明者』『デザイナー』
アイテム:奴隷[竜人:グラディオス]
所持金 169,656,910ユール
■グラディオス (179) Lv.326 男 竜人
HP 1,690/1,690 MP 2,690/2,690 SPEED 299
ジョブ:戦闘奴隷〔契約主:カエデ・ヤマナシ〕
魔法属性:闇・風・火属性 『古代闇魔法 Lv.X』 『上級風魔法 Lv.100』『特級火魔法 Lv.45』
スキル:『隠密 Lv.89』『剣術 Lv.97』『体術 Lv.100』『暗殺術 Lv.60』『従僕スキル Lv.82』
称号:『紫黒の死神』『始祖竜の末裔』
■ウォルフ:(9)Lv.13 男 獣人(狼属)
HP 125/125 MP 39/39 SPEED 194
ジョブ:孤児
魔法属性: 火・無属性『身体強化魔法Lv7』
スキル:『追跡術 Lv5』『噛千切 Lv5』『掻爬 Lv7』
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