第13話 ズッキーニカレー
わたしの住んでいる場所だけなのかもしれないけれど……豚のひき肉に、何やら味が付いている。ふつうにスーパーでパック入りのひき肉を買って餃子を作ると、まず、こねているときに「ん?」と思う。食べてみて「んんん?」と思う。で、パッケージを見ると、「自然な感じに味付けしております」……いらんわっ!
そこで、アダム(豚肉)を買っている農場のジェニーに、「豚のひき肉ある?」と聞くと、「ソーセージ?」と返ってくる。ちなみに、アメリカでソーセージはソーセージ状のものを「ソーセージリンクス」と言い、ハンバーグのような形のものを「ソーセージパティ」と言います。というわけで、「ソーセージ味のついた豚ひき肉」は「ソーセージ」と言うのです。
なので、
「ソーセージじゃなくて、ひき肉」
そしたら目を丸くして、
「何に使うの⁉ どうやって⁉」
どうやら、豚のひき肉を使った料理はポピュラーではないらしい。
「味ついてるけど、ほとんど一緒よ!」
という言葉を信じて、ソーセージで餃子を作りました。……ないわ。
ソーセージの味がごま油ともショウガとも合わないです。それでしかたなく、月森、挽肉用の機械を買いました。
夏場は月森家、野菜を庭に植えています。毎日の習慣として朝晩、庭の作物を見に行きます。収穫量としては、「キュウリ、一日3,4本。黄色いプチトマト一日1kg。ラズベリー500g、ズッキーニ2,3日ごとに2,3本」。
今日とれたものを今日食べる、というのを楽しみにしているので、ズッキーニが収穫できた日はズッキーニずくしになります。でも、昨日の夜の感じだと、今日はズッキーニがない。
もともと私はあんまりズッキーニは好きではなく、「ズッキーニ食べたい」というダンナのために植えたのに、ダンナ、長期出張中。息子は食べないので、娘と二人でせっせと消費をしています。
ズッキーニがないの、うれしいな、と、思い、今日は餃子にしようと思いました。
餃子のために、挽肉を作ろうと、塊のアダム(豚肉)を解凍し、挽肉機を用意しました。切っていくうちに、「これ、挽肉にするよりとんかつにした方がおいしそうじゃない?」。はい、決定。とんかつ用に切り分けました。厚さ2センチのでっかいやつ。切っていくと、骨付きだということに気づきました。
あら大変。わたし、骨の分までお金払ってるのね。……というわけで、「これ、将来とんこつラーメン作れそうじゃない?」はい、決定。骨は圧力鍋で20分加熱。
骨の周りの肉は筋っぽいところもあるので、いろいろ切っていったらやっぱり挽肉にした方がいい感じのゴロゴロ感。「これ、やっぱり餃子じゃない?」はい、決定。で、残りの肉を挽きました。
あら大変。これ、量が多すぎるじゃないの。
と、その時、作物の偵察に行っていた娘が大きなズッキーニを持って戻ってきました。
「草の陰に隠れてた!」
あら大変。ズッキーニまで調理しないといけません。
パン粉をつけたフライド・ズッキーニか、ベーコンとニンニクと炒めるか、サラダにするか、マリネにするか、チヂミにするか、が多いですね。ダンナはラタトゥイユも好きみたいですが、わたしはあまり好きじゃない。個人的には「ズッキーニカレー」が一番おいしいと思ってます。
恐ろしいですねー。この状態で、すでに「餃子ととんかつとズッキーニカレー」が今日の献立になりました。「全部作んなくてもいいんちゃう?」なんですが、すでに戦いは始まっています。ここで引き下がるわけにはいきません。
と、その時、ラズベリー摘みに行っていた息子が、大きなキュウリを持って戻ってきました。
「草の陰に隠れてた!」
あら大変。とれたてのキュウリは即、浅漬けにしなければならないわ。……というわけで、キュウリの浅漬けも追加。
……とかいっているうちに、熱波のおかげで毎日毎日たくさん熟してくれるトマトと余った挽肉と冷蔵庫の野菜を混ぜてミートソースに。……と思ったらトマトソースが多すぎたので、ケチャップも作っちゃえ。
というわけで、今日作ったもの。
とんかつ(2センチ厚 三枚)
餃子(60個)
ズッキーニカレー
ミートソース
キュウリの浅漬け(大きめのキュウリ2本と巨大キュウリ1本)
後日使う用の「とんこつスープ」
ケチャップ 500cc
デザートには摘んだだけのラズベリー500g
というわけで、今日はズッキーニカレーを紹介します。こちらは、野菜の水分だけで調理するので、ドライカレーのような感じです。もちろん、水を足して普通のカレーにしてもおいしいです。
材料
挽肉300g~500g(お好みで)
ズッキーニ 大1本。
プチトマト 30個
玉ねぎ 1個
ニンニク 2かけ
ショウガすりおろし 小さじ2
塩一つまみ
オリーブオイル
カレールー(好みの濃さで)
鍋にオリーブオイルを少し入れて、挽肉、ニンニク、ショウガを炒めます。肉の色が変わったら、スライサーで薄切りにした玉ねぎとズッキーニとトマトを入れて塩一つまみ。ざっ、と混ぜて、蓋をし、弱めの中火にかけてゆっくり水分を引き出します。こげないように、時々かきまぜます。野菜が煮えたらトマトも潰します。カレールーを入れて出来上がり。
ちなみに、うちはわたし以外、全員小食。
全部食べ切れるはずもないのですが、それでも月森選手、頑張って食べすぎておなかぱんぱん。
残りは明日食べればいいじゃない? と思うでしょ? でも明日には、キュウリが3本とズッキーニが2本、トマト1kgとラズベリー500gが待ってるんです。「食べきれないなら誰かにあげたら?」……いやです。全部自分で食べるのです。
カレーにまたズッキーニを足して、加熱して、ルー足して……と、毎日カレーばかりが増えていく……。
「おいしい!」を追求するだけの、月森さん家のアメリカごはん 月森 乙@「弁当男子の白石くん」文芸社刊 @Tsukimorioto
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