明治恋獄綺譚

文明開化によって華やぐ帝都である日、女学生・紅緒のもとに水銀を名乗る小狐の妖魔が現れる。
愛らしい見目に反する青年の声で、水銀は言った。

「おまえが欲しい。戦乙女になってくれないか」

それは妖魔を相棒に、恋心を力に変えて戦う娘たちの呼称。
平穏に見える帝都は悪しき妖魔の玩具にされていて、心を弄ばれ、取り殺される乙女が絶えないという。
小狐、黒猫、白蛇、鴉。動物に擬態した妖魔は恋する女学生らの胸に魔弾を撃ちこみ、恋心を鉱石として可視化する。その鉱石は想いの強さ、恋のかたちに呼応して輝く武器となり、乙女を戦乙女にする――。

帝都を守るために生み出される戦乙女。
彼女たちはまだ知らない。恋というもののおそろしさと、命を蝕む鉱石の呪いを。


◇act.1―薔薇輝石の乙女
　　　　 無垢な恋に…続きを読む