第4話 街へ向かう道中

 移動中、居住空間の玄関扉は開けっぱなしにする事にした私達。結界あって安全だし、運転しているお姉ちゃんの様子が見れるからね。あ、そろそろいいかな。


「お姉ちゃーん!綾ちゃーん!ちょっと一休みしない?クレープできたよー!」


 そろそろ10時のおやつの時間になったから、キッチンから声をかける私。そうするとね、ナビちゃんがお姉ちゃん達に中継して伝えてくれるの。便利だよね。


 今日は朝からお姉ちゃんが運転して、綾ちゃんが助手席で魔物退治しながら、草原を移動中。私は居住空間で、おやつを作っていたの。綾ちゃん凄いんだよ!あっという間に操作覚えて、しかも命中率は3人の中で1番なんだ。


 実はゲーマーな綾ちゃん。魔物を殺すという覚悟はとっくに出来ていたみたいで躊躇いはなかったからなぁ。私はやっぱり躊躇しちゃって反応が遅いし無駄な射撃が多いの。だから命中率は私は三番手。ちょっと悔しいから後で練習させてもらうんだ。


「中身何ー?」

「いい匂いだねぇ」


 あ、2人キッチンに戻ってきた。用意しなくちゃ。今日のクレープの中身は、お姉ちゃんが好きな生クリームのチョコバナナと綾ちゃんが好きなツナフランクサラダと、私は生クリームとゴロゴロベリーソースがけ。フォークとナイフで頂きます。甘いものには紅茶だよね。


「2人の好きなものだよー。さ、食べよ食べよ」


 3人でダイニングテーブルの席につき食べ始めたの。2人から「「美味しいー」」の言葉をもらってご機嫌で食べてたら、綾ちゃんが気になる事を言い出したんだ。


「なんかね、魔物がおかしいんだよねー」

「魔物自体の存在が私達にとっておかしいじゃん。でもどんな感じにおかしいの?」

「と言うか私の目がおかしいのかなぁ。魔物から黒いモヤが見えるの」

「あ、わかる綾ちゃん!私も何だろうって思っていたんだ」

「佳織さんも?良かったぁ。私だけおかしいわけじゃなかったんだ」


 なんかね、最初の地点でもお姉ちゃんは感じていたんだって。でもこう言うものかなぁって流していたお姉ちゃん。綾ちゃんが不思議に思う事で、やっぱりおかしいと気づいたんだって。お姉ちゃんらしいや。


 話しながらでも既に食べ終えた綾ちゃん。「もう一回見てくるね」と車の方へ移動して行ったの。私は後片付けをしていて、お姉ちゃんはゆっくり紅茶を飲んでいたらね。


「ごめん!2人共ちょっと来て!」


 綾ちゃんが走ってキッチンに来たんだ。理由を聞いたら今結界に魔物がぶつかってきているらしいんだけど、それがどうもおかしい動きをしているんだって。


 3人で車に向かうとフロントガラスには、銀色の狼がぶつかってきていたんだ!でも何か目が細くなったり、丸くなったりしている様に見えるんだよね。しかも首を振って「グアウ!」と吠えていてなにかに抵抗している様にも見えるし……


「なんかあの姿みると、攻撃するの躊躇っちゃうんだよね」

「確かに。でも何か策ある?綾ちゃん」


 私が聞いても当然首を振る綾ちゃん。そうしてると、お姉ちゃんがナビちゃんに質問していたの。


「ナビちゃんはあの魔物を調べる事ができる?」

『スキャン済みです。モニターに表示します』


 何とナビちゃん既に魔物を調べていたんだ。お姉ちゃん曰く「ナビちゃん魔物の気配わかるんだもん。じゃ、調べられるかなぁって思ったら当たったね!」だって。鋭いんだか呑気なんだか。まあ、マイペースお姉ちゃんは置いといて、ナビちゃんによると……


 [シルバーフォレストウルフ]

 討伐ランク:A 状態: 瘴気によって状態異常を起こしている


 うーん、討伐ランクAって多分かなり強いってことかなぁ。それにしてもここ森じゃないのに、何でこんなとこにいるんだろう?っていうか瘴気?お姉ちゃんも同じ疑問持ったみたいでナビちゃんに聞いてたの。


「ねえ、ナビちゃん。瘴気って何かわかる?」

『申し訳ありません。人体や魔物にも有害な物とだけ判明しております』

「ん?そしたら私達だって危険なんじゃない?」

『オーナーを始め、皆さんは影響無しとデータに出ております』


 異世界人には影響無しかぁ。案外この瘴気の事で召喚したのかな?って思っていたらナビちゃんが意外な一言を言ったんだ。


 『この車の結界は瘴気を通しません。むしろ魔物が結界に接触すると多少浄化されるようです』

「……ねえ。魔物の様子がおかしいのって結界のせいってことにならない?」

「綾ちゃん!私もそうおもった!」

「でもあの魔物どうするの〜?それにわかったからって、私達に何かできるの〜?」


 私と綾ちゃんが同じ意見だった事に喜んでいたら、お姉ちゃんがのんびりした口調で鋭い事を聞いてきたの。こう言うところもお姉ちゃんならではなんだよね。


「……もしかして、異世界人の能力なら瘴気って何とかできる?」

「その仮説が正しいなら、出来るのなっちゃんかなぁ。リフォームって戻すって意味なんでしょう?もしかして瘴気抜けたりして」


 ボソッと呟く綾ちゃんのとんでもない仮説に乗るお姉ちゃん。いやいや、リフォームって建物に使う言葉じゃん!って思ったけど、ここは異世界。しかもスキルのある世界。


「……試してみよっか?」

「そうだね。今後瘴気に侵された人に会わないとも言えないし、試すいい機会になるんじゃない?」

「それにあの魔物可愛いし」


 試してみようと言う私の言葉に、綾ちゃんが起こりうる仮定を伝えてきたの。流石綾ちゃんだね。お姉ちゃんなんか呑気に魔物が可愛いなんて言ってるし。もうマイペースなんだから。


 ともかくやってみよう。ええと……ステータスを出して……ハウジングのリフォームをタップしてっと。


 『リフォームする対象を選択して下さい。

 シルバーフォレストウルフ×1 ←

 決定 キャンセル』


「あ!お姉ちゃん正解!なんか出たよ!」

「ありゃ、本当にそうなの?」

「奈津、まず先に進んでみて」


 あ、2人共私の後ろからいつの間にか覗き込んでいたんだね。声が近くから聞こえてびっくりしちゃった。あ、うん。先に進むね。「ほら早く」って綾ちゃんに急かされちゃった。


 『対象フォレストシルバーウルフ 選択して下さい。

 ・リフォーム MP150

 ・プロテクトリフォーム MP300 ←

  実行   キャンセル』


 フォレストシルバーウルフに対象を決定すると、リフォームとプロテクトリフォームって出てきたんだ。因みにそれぞれタップしたらちゃんと説明が出てきてね。


 ・リフォーム MP150

 状態を元に戻す。また瘴気に侵される危険性あり


 ・プロテクトリフォーム MP300

 状態を元に戻す。1ヶ月瘴気に侵されない状態になる。


 だって。それで、お姉ちゃんや綾ちゃんと話した結果、危険な魔物がまた暴れ出したら大変じゃない?って事になってプロテクトリフォームをする事にしたんだ。するとね……


「あ、身体が光り出したねぇ」

「ほら奈津!身体から黒いモヤが出てきたよ!」

「本当だ!しかも空中で消滅したみたいだね!」


 お姉ちゃんが驚きもせず実況中継する中、私と綾ちゃんはちょっとハイテンションで魔物から瘴気と思われるものが出ていく様子をみてたの。そして残された魔物はと言うと……


「ねえ、奈津。なんか魔物お座りしてるよ?」

「え?何で?」

「尻尾も振ってる。可愛いねぇ」


 瘴気が抜けてもまだ車の近くにいるシルバーフォレストウルフ。しかも、お座りして尻尾まで振ってる。確かに犬みたいで可愛いけど大型犬より大きいよ、あの子。


「ああやっていると飼いたくなるねぇ」

「いやいや、佳織さん。あれ魔物だから」

「あー、お姉ちゃん犬飼いたがっていたもんね。あの子だったらシルバとか言って飼いそうだね」


 私がそう言った途端「ガウ!」って言って伏せをしたシルバーフォレストウルフ。ん?なんか返事したっぽいけど、なんか言ったっけ?私が悩んでいるうちにナビちゃんが、驚きの事を伝えてきたの。  


『スキャンしたところ、状態がテイム状態となっております。おそらく先程の言葉で決定的になったかと』

「は⁉︎え?誰の言葉?」


 私が驚いていると「えー、なっちゃんじゃない〜?なんかシルバで反応した気がするし」とマイペースにいうお姉ちゃん。綾ちゃんは綾ちゃんで考えるポーズをとりながら、「……と、言う事は奈津がリフォームかけた魔物はテイム出来るって事?うわぁ、そりゃ凄いわ」なんて独り言言ってるし。


 三者三様に反応する中、思わずステータス確認してみたら、


 名前 木崎奈津 18 人間

 HP 500

 MP 49,700/50,000

 スキル ハウジング

 称号 召喚に巻き込まれた異世界人

 テイム シルバーフォレストウルフ(シルバ)


 うわぁ!本当にあった!

 って言うか、どうすんのこれ?

 え?連れて行くの?

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