第3話 まずは確認作業

 「朝だ、あーさーだーよー♪朝ごはんの時間♪」

 「……んー、いい匂い……」

 「おはよう!お姉ちゃん。顔洗って来てー。ご飯だよ」

 「はーい」


 呑気にキッチンで歌を歌いながら朝食を作る私の後ろで、目を擦りながら起きて来たお姉ちゃん。ん?綾ちゃんはって?綾ちゃんは既に起きていて食材を既に出して貰っていたの。今は今朝私のスキルで出したダイニング4点セット MP39,000 に座って、自分のスキルの確認をしているよ。


 そして異世界2日目の今朝の献立は、フレンチトーストミックスベリーソースがけにアスパラとベーコンのワンプレートディッシュ。付け合わせはサラダとヨーグルト、飲み物はティーパックの紅茶でーす。朝はしっかり食べないとね。


 本当綾ちゃん様様なんだよね。食材に油にフライパン、お皿にカップにナイフとフォークっていっぱい出してもらっちゃった。私はこの後部屋の内装があるからって、率先して出してくれたの。私より早く起きていたしね。責任感強いんだよ、綾ちゃん。


 「わぁ!美味しそー」


 あ、お姉ちゃんも戻って来た。じゃ、席に着こう。


 「「「いただきます!」」」


 思い思いに好きな物から食べる私達。みんなで美味しいって言いながら食べる食事って最高だよね。


「奈津、このベリーソースいいね。どうやったの?」

「ん?冷凍のミックスベリーとイチゴジャム混ぜただけだよ。溶けると美味い具合にソースになるんだよね」

「なっちゃんの料理って美味しいでしょー。綾ちゃん」


 ベリーソースが気に入ったのか綾ちゃんがレシピを聞いてきたの。レシピってレシピじゃないけどね。お姉ちゃんは好物が朝から出て来てご機嫌で食べてる。自慢じゃないけど、本当に簡単なんだよ。とはいえ、お姉ちゃんの言葉に喜びながら私も食べていると、綾ちゃんがお姉ちゃんの方を向いてこれからの行動を確認してきたの。


 「それで、今日はどうしますか?」

 「そうねぇ……私はまず、戦闘魔導具を合成させてナビちゃんと周辺地域の情報を整理したいかな」

 「私は部屋を完成させたいけど、綾ちゃんは?」

 「私は奈津のサポートかなぁ」


 お姉ちゃんは意外にも考えていたみたいで、装備の増強をしてくれるみたい。私はやれる事って生活環境整えるぐらいだしね。綾ちゃんはサポートって言ってくれるけど、綾ちゃんいないと私達生きていけないんだよね。本当に3人の力が補い合えるものでよかったぁ。


 それで結局、まずはお昼までそれぞれ動いて、お昼にお姉ちゃんのまとめた情報を聞いて考える事にしたんだ。あ!お姉ちゃん、一応居住空間のドア開けながら確認してね!


〈佳織サイド〉

 ふふっ。なっちゃん心配性なんだから。嬉しいけどね。それにしても、美味しかったぁ。なっちゃんも綾ちゃんも心強いし、頼りがいあるのよね。私ってば1番年上なのに2人に頼ってばっかりになっちゃったし、ここらで頑張んないと。とはいえナビちゃんって言うこれまた心強い味方がいるからやっぱり頼っちゃうけど。


 「ナビちゃーん!おはよう!」


 挨拶しながら居住空間から車内に移動すると、窓の外は昨日と同じうさぎだらけ。うわぁ、よく結界持ってくれたなぁ。そんな事考えながら運転席に着くとナビちゃんも挨拶してくれたの。


 『おはようございます。オーナー・佳織。既にメンテナンス済み。結果は良好。いつでも出発できます』

「さっすがナビちゃん。でもねぇ、今日はまず戦闘魔導具の合成と周辺の情報整理しようと思うの」

『畏まりました。まずは合成を致しましょう。一晩でオーナーと同期完了。こちらからもオーナーのステータスが開けます。タップで進んでいって下さい』


 便利だねぇ、ナビ画面から私のステータスにいけるんだ。ええと今のナビ画面は……こんな感じになっているのね。


 08:50 MP50,000/50,000

 居住空間 戦闘魔導具 結界 トランク収納 魔物タンク


 画面の下に一覧できる様に並んでるんだね。んー……そういえば結界とかトランク収納とか魔物タンクって詳しく調べてないなぁ。一個ずつ見ていこうかな。


【結界】  ↓

 強度 弱ーーーーーーー強(強度アップ:魔物10)

 範囲 車体から2メートル以内

 侵入許可 オーナー、奈津、綾


 あー、こうなっているんだ。ふむふむ、強度を上げる為には魔物が必要⁉︎魔物がエネルギーになるんだ!でもどうやって?もしかしてコレ?


【魔物タンク】

 在庫数 0

 速度ブースト変換 0/10

 弾補充(500) 0/5

 魔導レーザーブースト(三発) 0/10


 魔物が変換されるんだ‼︎でもどうやって取り込むんだろう?ダブルタップしてみよっか。あ、画面が外の画面に切り替わった。へえ!360度見れるんだねぇ。ん?この四角い点線は何?あ、まだうさぎが丁度点線の中に入っているし、タップしてみよっか。


『生命反応有り。収納不可』


 ……そっかぁ。やっぱり生きたままは駄目か……

 うん!覚悟決めなきゃ!ここは日本じゃないんだもん!私がやらなきゃ、2人を守れない!よし、気合い入れた!じゃ、攻撃魔導具の魔導ガトリング 一丁MP5000を二丁合成しよう。ダブルタップっと。


 するとね、ナビの周りが光り出して、助手席にボタン付きハンドルレバーとナビが移動して現れたの。ナビの画面も大きくなって見やすくなったし、レバーで画面の視界も動くね。で、多分ボタンを押すと攻撃できるんだろうけど……弾あるのかなぁ。あ、右上に弾残数が、右500/500、左500/500ってある!初回は弾付きなんだね。良かったぁ。

 

 ちょっと助手席に移動して、うさぎ倒してみよう!方向はあってるね……照準を合わせて……行くよ!


 ダダン!


 よし、二発で倒れた!まだ周りにいっぱいいる。弾を補充してみたいし、10匹倒して見よう!いっくよー!


 ダダダダダダダダダダダダダッ‼︎


 ありゃ?押しっぱなしだと連弾なんだ。凄いけど一挙に減るなぁ。ええと何匹倒したかなぁ?んー……と、5匹かぁ。結構連弾だと無駄弾が出てるねぇ。でも仕方ないかな、私素人だし。必要経費っと!


 とりあえず周りでうるさかったうさぎを、連弾で片付けてみたの。それで魔物タンクに収納したら、一角兎合計24匹だって。うわぁ、結界なかったら危なかったなぁ。しかも一角兎だったから結界持ったかもね。


 『お見事です。オーナー・佳織。この辺りに魔物反応はありません』

 「ありがとう!あ、今思いついたんだけど、もしかして私がやらなくてもナビちゃんの協力あれば、弾の自動補充とか魔物タンク収納ってできたりする?」

 『可能です。今回はオーナーに理解してもらう為に全て行って頂きました。但し、私はサポートのみとなります。例えばオーナーが攻撃し私が運転しながら進む事は可能ですが、逆は今のところできません』

「そっかぁ。今のところ……ね。いずれ可能になるかもしれないんだね!了解!ところでナビちゃん。この周辺には街や村ってあるの?」

『ここから東300キロにセイナスの街、南に500キロにプルームの街がございます』

「どんな街かはわかる?」

『申し訳ございません。そちらはインプットされておりません。ただ地形より言えるのはセイナスの街が海寄り、プルームの街が王都寄りとなります』

「ありがとう!それだけでもわかれば助かる!じゃ、一旦居住空間に戻るから、何かあったら教えてねぇ」

『畏まりました』



「たっだいまー!」


 あ、お姉ちゃん戻って来た。なんかご機嫌だけどいい事あったのかなぁ?


「おかえりー!お姉ちゃんご機嫌だねぇ」

「んふふふ。私もちゃーんと役立つって事わかったからねぇ。って言うか部屋になったねぇ!」

「そうでしょう、佳織さん!リビングらしくなったんですよ。キッチンに合わせて北欧風のインテリアにしてみたんです。奥の部屋は畳だけど」

「綾ちゃん、またそれ言う。いいじゃない、畳の部屋で」

「うん、いーよ。いずれ奈津が二段ベッド出してくれたら」

「それは了解!でもまだお昼前だねぇ。お茶にしよっか?」

「「賛成ー!」」


 紅茶あるし、簡単に綾ちゃんにクッキー出してもらってたからそれでいこう。お姉ちゃんと綾ちゃんはリビングのソファーで座って話しをしてるから、そっちに持って行けば良いかな。


 「やっぱり良いね!ただ真っ白の空間よりカーペットやソファーがあると!」

 「佳織さん、トイレやお風呂も終わったから後で見て下さいね」

 「ところでお姉ちゃんの方はどうだったの?」

 「うふふー、あのね……」


 紅茶とクッキーを持って行ったらお姉ちゃんが部屋の事気に入ってくれたみたい。綾ちゃんの好みを優先したトイレやお風呂もちゃっかり宣伝してるしね。で、私がお姉ちゃんの方の進展聞いたらね……


 「え!あの兎達お姉ちゃん倒したの?」

 「魔導タンクってそんな役割持ってたんだ……凄いですよ!佳織さん!」


 私と綾ちゃんはお姉ちゃんのスキルにびっくり。お姉ちゃん頑張ってくれたんだなぁ。そんな私と綾ちゃんの反応を見て、笑顔でピースサインのお姉ちゃん。


「えへへ。年上だもん、2人を守らなきゃね!で、ナビちゃんによると、東と南に街があるみたい。東が海寄り、南が王都寄りだって。どうする?」


 お姉ちゃんの言葉に考え込む私達。うーん、海寄りも捨てがたいけど、普通に考えると召喚行ったのって王都の様な気がするんだよね。情報が入るのはその近くの街の方だし……そう考えていると、綾ちゃんが話し出したの。


 「私は王都寄りが情報が入るから良いと思います。佳織さんや奈津はどう思う?」

 「綾ちゃん、同じ同じ。私もまずは情報掴むのが大事だと思うの」

 「あ、お姉ちゃんもそう思う?私も一緒!王都寄りの街にまず行ってみたい!」

 「うん、2人とも一緒でよかったぁ。そうすると街での行動の指針が必要だと思うんだけど。まずは現地通貨の調達。そして街に溶け込む服装の調達。下着は私が出せるから問題ないけど服はやっぱり浮くと思うし」

 「綾ちゃん流石だねぇ。それに私達女性だけだから街に入る時の理由作らないとね」

 「お姉ちゃん、絡まれたりした時の対処方も考えておいた方がいいよ」


 こんな感じで意見を3人で出し合った結果、今日はこのまま待機。理由はMPの回復待ちなんだ。3人とも結構使っちゃったからね。今朝MP量がフルになってたから、1日たてば回復するっていうのもわかったし。あとまだ今日試したいことあるしね。


 まずは明日からプルームの街を目指す事になるけど、不安な反面、ちょっとワクワクしている自分もいるの。

だって異世界の街なんだよ!

どんな街なんだろう?楽しみだなぁ。

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