第2話 それぞれの能力

 3人のステータスが表示されて、私達全員が全員のステータス見る事ができたの。こういうのって本人しか見えないんじゃないかなぁ。でもまあ、この2人になら良いけどね。それでそれぞれのステータスがこんな感じ。


 名前 木崎佳織きざきかおり 20 人間

 HP 500

 MP 50,000/50,000

 スキル 車合成

 称号 召喚に巻き込まれた異世界人



 名前 木崎奈津きざきなつ 18 人間

 HP 500

 MP 50,000/50,000

 スキル ハウジング

 称号 召喚に巻き込まれた異世界人



 名前 斉藤綾さいとうあや 18 人間

 HP 500

 MP 50,000/50,000

 スキル  ネット通販

 称号 召喚に巻き込まれた異世界人


「はああ?」

「ハウジングってなんだっけ?」

「車合成だって。面白そー」


 それぞれが感想を言い合う中、場を取り仕切ったのは意外にもナビちゃん。


『皆さん、まずは落ち着いてください。説明します。HPは生命力、MPは魔力の数値でございます。皆さんの身体はこちらの世界についた時点でこの世界仕様に変化していたみたいです。私が自我を持ったのもこちらに着いてからでした』

「あれ?じゃあ、ナビちゃんもここにきた理由とか帰れるのかとかわからないんだ」

『その通りです、オーナー・佳織。ですが、この場所は何処かはわかります。現在地はハルウェル国フラット領内大平原です』


 国や領があるって事は異世界人がいるって事だよねぇ。でもまず何よりも気になるのは称号だよ。


「あ、ごめん。話に割り込むけど、みんなの称号みてると、召喚に巻き込まれた異世界人でしょう?召喚って事は帰れる可能性もある訳だよね?」

「あ、奈津。まずは帰る方法を探そうって事?」

「うん、綾ちゃん。それに私達意外にもあの場から呼ばれた人も居るはず。むしろそっちが本命だよね。呼ばれた理由とかもわかると思うし、そっちともコンタクトとった方がいいと思うけどどう?」

「私は方向性は良いと思うよー。でもね、まずは自分達の足元を固めなきゃ。ほらなっちゃん、思い出して。ラノベとかでは召喚によって強い力を持った人達って、この世界では異質なんだよね。って事は?」

「あ、そうか!捕まって良いように使われたりされかねないねぇ。それに私達女性だけだし、下手に異世界人とコンタクト取るのも危険かぁ」

「そういう事だよぉ。って事でここはまず、それぞれのスキルのチェックから行こうよ」

「さっすが佳織さん!というか木崎姉妹すごいわ。……私1人じゃなくて本当に良かった」


 綾ちゃんの気持ちはわかるなぁ。だって1人で投げ出されていたらもっとパニックになっていたと思うからね。

 で、まずはナビちゃんの指示の元、スキルをタップしたらこんなのが、それぞれ出てきたの。


【車合成】

 ・居住空間(亜空間タイプ)

 ・戦闘魔導具

 トランク収納/魔物タンク/結界/魔素充填機能(初期搭載装備)


「お姉ちゃん!お姉ちゃん!居住空間開いて見て!トイレあるかも」

「あ、そいうえば1番大事ね」

「いや、まず二つ見たらどう?」

「「それもそうか」」


 居住空間(亜空間タイプ)

 ・2LDK(キッチン・水洗トイレ・バスルーム・リビング10畳・10畳部屋) MP9,800


 戦闘魔導具

 ・ガトリング魔導銃 一丁 MP5,000

 ・魔導レーザー砲  一門 MP7,000


「うーん……今もうさぎ達突進してきているし、戦闘魔導具も必要だけどねぇ」

「佳織さん、結界みたいなのが機能しているから、まずは居住空間やってみません?」

「そうだね、やってみよっか。ナビちゃんどうすればいい?」

『オーナーが車内に居るのであれば、ステータスウィンドをタップすると、合成が開始されます』

「わかった」


 お姉ちゃんがダブルタップしたと同時に後部座席が光り出し、気がつけば私と綾ちゃんが白い空間にいたの。でもキッチンもあるし、扉もある。


「綾ちゃんここってお姉ちゃんのスキルの中かなぁ?」

「まあ、そうだろうね。って言うかガランとしているね」


 私と綾ちゃんが話していると、バタンッと奥から音がしてバタバタッと足音が近づいて来たんだ。


「なっちゃん!綾ちゃん無事⁉︎」


 私達のいる部屋に飛び込んできたのは、やっぱりお姉ちゃん。でも心配したんだろうなぁ。私達を見た途端「よかったぁ!」と抱きついてくるお姉ちゃん。


「もう……後ろ向いたら二人はいないし、扉が出来てるし、一人だし!」


 あー……そうだよね。いきなり一人にされると心細いもんね。お姉ちゃんは私と綾ちゃんをもう一度ぎゅっとして、ようやく顔を上げてくれた。


「大丈夫だよー。お姉ちゃんと綾ちゃんは絶対どこに行っても一緒だからね。って言うか、ついていくし」

「あ、私も。この世界に来たからってわけじゃないけど、二人と離れる気ないし。ね、佳織さん」


 私と綾ちゃんの言葉に「ふふっ、そうね」と笑うお姉ちゃんはいつものお姉ちゃんの顔に戻っていたんだ。私達の絆は元から強かったけど、ここに来てより強く感じるようになったんだよね。


 3人揃った事だし、早速内覧開始したんだけどね。キッチンはIHコンロはあるし、流し台からお水は出る。あと大事なトイレも水洗でちゃんと使えたよ。お風呂も追い焚き仕様だし、シャワーもちゃんとお湯が出たの。排水とかどうなっているのか不思議だったんだけど、それは今更だしね。問題は……


「何もかもが白いねぇ」

「うん。こうも白だけだと味気ないねぇ」


 私とお姉ちゃんが呑気に言うなか、何か考えていた綾ちゃん。


「ねぇ、奈津のスキル、ハウジングだったよね。ハウジングの能力でこの部屋なんとか出来ないかな?」


 あ、そうか!私のスキルあったね。ハウジングって確か色んな意味あったからまずは調べてみた方がいいね。3人が部屋の真ん中に集まって、私のステータスボードを調べてみる事にしたんだけど。こんなのが出てきたんだ。


【ハウジング】

 ・土地    レベル1/5

 ・家屋    レベル1/5

 ・家具    レベル1/5

 ・インテリア レベル1/5

 ・リフォーム   レベルMAX

 ・リノベーション レベルMAX

 ・ハウジング   レベル1/5


「これ住宅関係凄いねぇ」

「綾ちゃん、リノベーションとリフォームの違いってなんだっけ?」

「確か、リフォームが「戻す」って意味でしたよね。古い家を新築同等にするとか。で、リノベーションは「高める」だから既にある建築物に改修を加えて価値を高める……自分好みにするって事かなぁ」

「「なるほど」」


 綾ちゃんの説明で、今のこの状況で必要なのはリノベーションという事になって、リノベーションをタップしてみたんだ。


『改修する箇所を選択してください。

 キッチン リビング 個室 トイレ 洗面所 浴室

      戻る 決定』



「これ、お姉ちゃんのスキルの中でもやれそうだね」

「わぁ!嬉しい!真っ白空間ってちょっと寂しいんだもん」

「ね、奈津。試しにここのキッチンからやってみない?」

「だね」


 まずは私達の今いるキッチンから始める事にしたんだけど、タップしてみるとね。


『改修箇所を指定して下さい。

 床・天井/壁・窓/設置物・家具

 戻る 決定』

 

 なんか部屋作りゲームみたいに指示が来るんだね。そして試しに床と天井をタップしてやってみたらね。


『床と天井の材質を選択して下さい。

〈床〉 MP 1,000

 フローリング/クッションフロア(ビニル床材)/フロアタイル(ビニル床材)/タイル、石材/畳/カーペット

〈天井〉MP 1,000

 クロス(ビニール・紙・織物)/木質系(無垢材・合板・繊維板)/無機質系(ロックウール板・繊維板)


 すごく面白いのが、一つ一つタップすると種類や色柄がより細かく表示されるの。ステータス画面ごしに完成形がどうなるのかわかるものだから、もう3人で「あれは?」「これどう?」って夢中になっちゃって。


 結果出来たのが優しいベージュのクロス張りの天井に、水に強いクッションフロア。床色は濃い茶。この調子で壁もキッチンもやったら、キッチンは約MP5,000かけてホワイトベースの北欧スタイルに変わったの。変わったといえば、リノベーションやったところは暗くなったのね。で「インテリア」見てみたら、

 ・シーリングライト(自動設置可能) MP300

 ってあったの。他にも可愛いのがあればって思ったけど、レベル1じゃそんな種類なかったんだ。で、それぞれの部屋に取り付けて明るくしていたらね。


 ぐうぅぅ……


「あー、ごめん。お腹空いて来たぁ」

「なっちゃんも?私も実はさっきから空いてたんだ」


 ぺろっと舌を出して笑うお姉ちゃんも実はきゅるるってお腹なっていたんだって。綾ちゃんはそうでもないみたい。スキル使うとお腹空きやすいのかな?


「じゃあ、そろそろ私のスキルの出番だね!」

「「待ってましたー!」」


 綾ちゃんが胸を張って、私とお姉ちゃんが拍手で綾ちゃんのスキルを歓迎する理由はね……


【ネット通販】

 ・スーパーマーケット

 ・ドラックストア


 綾ちゃんのスキルにこの二つがあったのを既に確認済みだからなんだ!


「綾ちゃん、今日はできたらお弁当がいいなぁ。明日からちゃんと作るからね?ね?」

「綾ちゃん、私には期待しないでねぇ」

「うん、そうだね。佳織さんには無理させないようにする。で、奈津には明日からお願いする事になるかなぁ」


 そう、この3人で料理ができるのは私なんだ。綾ちゃんは頭はいいのに、手は不器用なの。何回も包丁で指切るんだもん。見てて痛いったら。で、問題のお姉ちゃん。なんでだろう?何回教えても黒焦げか、不思議な物が出来上がるの。こんなところで完璧な人っていないんだなぁって実感するんだ。


 それで結局綾ちゃんに出して貰ったのは、


 幕の内弁当 MP700×3

 ほうじ茶(ペットボトル) MP100×3

 プリン3個セット MP100

 銀スプーン3個セット MP200

 割り箸30本入り MP110


 合計 MP2810。ん?プリンはいらないって?女の子にはデザートが必要なんです。これは必要物に入るの。

 それで、早速みんなで「頂きます」をして食べ出したんだけど、出来立てみたいでほんのりあったかいの。味も日本の味そのままだったし、やっぱりスキルって不思議だよねぇ。

 そんなこんなで美味しいお弁当を食べ終わり、デザートのプリンまで行く頃には話す内容は今後の事。


「生活するって物入りだねぇ」

「あ、懐かしい。アニメでそんなフレーズあったねぇ」


 私が思い出したのは、魔女の女の子が生活し始める時に言った言葉。お姉ちゃんもあれ良く見てたからわかったみたい。


「まぁ、実際物入りだね。でも考えてみると、生活するのに必要な物は3人いれば揃っちゃうね。佳織さんは拠点と移動手段だし、奈津は料理もしてもらうけど内装や家具インテリアは揃うし、私は食料と薬関係だし」


 綾ちゃんの言葉に「便利よねぇ」とのんびりお茶を飲みながら同意するお姉ちゃん。


「お姉ちゃんそれで済ませちゃうんだ。まあ、考えても仕方ない事だけどね」

「うん。本当に二人のその割り切りの良さには助かってるよ。だって、他の子と一緒だったらもっと面倒な事になってたと思うし」


 綾ちゃん面倒って……

 まぁでもそこは同感かなぁ。他の女の子って感覚ちょっと違ったし、慣れ親しんだ3人が一緒だから落ち着いていられるんだし。


「そうすると、あえてこの世界に溶け込む必要は無いかなぁ」

「いや、佳織さん。念には念を入れて、誰かがスキルが使えない時の状況も想定しておいた方がいいと思うんだ。下調べはした方が良いよ」

「さっすが綾ちゃん!でも、はい!」

「はい、奈津さんどうぞ」

「はい!まずは本日寝る所が大事かと思うのです!で、ちょっとこれ見て」


 綾ちゃんと先生と生徒ごっこしながら二人に見せたのは私のステータスボード。


 ・インテリア

 掛け敷布団セット MP10,000


 ・家具

 マットレス付き二段ベッド MP39,000


 ・リノベーション

 選択項目:個室→床→畳(10畳) MP1000


 それぞれ順番に見せていったんだけどね。私が言いたい事はこれ。


「やっぱり日本人なら畳だよね!」

「あー、木崎家そうだったっけ?」

「なっちゃん、ベッドにも憧れてなかった?」

「んー、それはそれ。でも現状この広さはベッドじゃないでしょう?って事で、今日は合宿みたいにみんなで寝ようよ」

「「賛成!」」


 二人とも賛成してくれたけど、綾ちゃんは実はベッド派なんだよね。今日はMPの消費量が大変だからいずれ揃えるからね。

 ご飯を食べ終わってから早速動き出す私。綾ちゃんはドラックストアからパジャマやタオル、シャンプー、リンス、基礎化粧品を出してくれて、3人交代でお風呂に入ったの。


 新品の畳の匂いに新しい布団。

 私達3人一緒でよかったね、って言いながら異世界初日の夜は更けて行ったんだ。

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