巻き込まれ召喚!ハウジングスキルと仲間達で生き抜きます!

風と空

第1話 プロローグ

 その日は急な豪雨が降ってきたんだ。

 お姉ちゃんが仕事休みなのもわかっていたし、折りたたみ傘も持ってなかったから、出たがらないお姉ちゃんを得意のお菓子で釣って、迎えに来てもらったの。


「もう、なっちゃんは仕方ないなぁ。お姉ちゃんは貴方のタクシーじゃありませんよ」

「うわぁ、佳織さん。私まですみません!」

「綾ちゃん、良いんだって。お姉ちゃんには私のケーキがあるんだから」


 買ったばかりの新車を運転しながらぼやいているのは、私のお姉ちゃん。木崎佳織《きざきかおり》 20歳。高卒で就職して今年二年目の会社員。今日は有給消化でお休みだったんだって。

 なんだかんだで優しいお姉ちゃん。会社では高嶺の花と言われるくらいのロングヘアの美人さんで、私の自慢。でもお姉ちゃん家ではほけーとしていて、私といるのが好きなインドアの人。まだ彼氏はいないんだって。というかできるのかなぁ?


 そして車に同乗しているのは、私の親友、斉藤綾さいとうあや 18歳 高校3年生。ショートカットが似合う可愛いタイプの美人さん。性格がサバサバしていて、一緒にいて気を使わないんだ。のんびりの私をよくサポートしてくれるの。


 え?私?私は木崎奈津きざきなつ 18歳 高校3年生。お菓子作りが得意で、ぼーっとしているのが好き。んー、外見はお姉ちゃん程ではないけど綺麗とは言われるよ。髪はセミロングくらい。でもうちの家訓は『内面を磨け』なんだよね。だからどちらかというと、人の内面で判断するから余り気にしないんだ。


 それに3人に共通しているのは、男性が苦手って事かな。あ、だからと言って女性が性的に好きって訳じゃないけど。でも本当に小さい頃から好意を持たれやすいって、大変なんだよ。私も経験したけど正直怖い。付き纏われたり、しつこかったり、そんなつもりなかったのに言いがかりをつけられたり。


 だからこの3人だけで良くまとまって遊ぶ事も多いの。お姉ちゃんは時々会社の付き合いや友達とも上手くやっているみたいだけどね。会社ではクール系なんだって。未だに信じられないよ。


 あれ?雨が凄くなってきたなぁ。


 「うわぁ、初めてワイパー高速にしたよお。ふふふっなんか面白ーい」

 「なんか車も一生懸命なんだねぇ」

 「またこの姉妹はのんびりしてー。結構怖いよ、これ。佳織さん大丈夫?」


 私とお姉ちゃんがほけほけした感想をする中、綾ちゃんが心配そうにお姉ちゃんをみていたんだ。この時は大丈夫だったんだけど、家まで後少しの曲がり角を曲がった時ー


 「眩しい‼︎」


 前方から急な光が飛び込んで来て、何も見えなくなったの。

 私達がわかるのはここまでなんだ。


    **************************************


「……ちゃん!なっちゃん!」


 ゆさゆさ揺さぶられている気がする。……お姉ちゃん?なんか泣きそうな声しているけど、どうしたんだろう?


 「……ん……お姉ちゃん?」

 「なっちゃん!」

 「奈津!」


 目を開けると、運転席から心配そうに私を見るお姉ちゃんと隣から覗きこむ綾ちゃんの顔が見えたの。


 「うん、眼福」

 「あ、良かったぁ!なっちゃん」

 「奈津!良かった、いつも通りだね」


 私の言葉に安心する2人。起きたてで目の保養ができるって良いよね。ってあれ?


「うーんと、家に着いたんだっけ?」


 ぼーとしながらまだ車の中にいる2人に聞いてみると、苦笑するお姉ちゃんと頭を抱える綾ちゃん。


 「あのね、なっちゃん。窓の外見てみて」


 お姉ちゃんに言われて窓の外をみてみると、あれ?一面緑だらけ。


「大草原だねぇ」

「ここまで何も無いと凄いよね」


 緊張感のない私の答えにお姉ちゃんも乗ってきた。


「あー!もうこののんびり姉妹は!……でも焦ってもどうしようも無い状況だもんね。とにかく3人共目が覚めて良かったよ」

「だね。お姉ちゃんここって何処だと思う?」

「そうねぇ。とりあえず地球かどうかが疑わしいの」


 お姉ちゃんの指差す方向を見ると、草の間からピョコッと長い耳が見えたんだけど……


「野生のうさぎ?うわぁ珍しい!」

「うん、珍しいと思うよ」


 なんか綾ちゃんが呆れているような気がするけど、なんで?そう思って窓の外を見ると、あれ?うさぎってツノあったっけ?それにこっちに向かって走ってくるけど、あれ当たったら車に穴開かない?


「ぶつかる!」

「大丈夫。見てて」


 私が叫んでも、綾ちゃんは冷静だったの。ええ⁉︎穴開いちゃうんだよ。って嘘!


「弾き返した⁉︎」

「そうなの。さっきからあのうさぎ達あんな感じなんだけど、何かに弾かれているんだよね」


 お姉ちゃんが頬に手を当ててふうっとため息ついたんだ。どうやら私が起きる前からあんな感じみたい。んー、とりあえずこの車に乗っていると安全って事だね。


「そっか。良かったねぇ」

「いやいや、他に言う事あるでしょう!奈津!」

「ん?綾ちゃんこのカーナビおかしいよ?」

「もう!佳織さんまで!って本当だ」


 え?どれどれって私もカーナビを覗き込んでみたらね。


『#¥€£&※〆s^%¥#€£《オーナー。私に触って下さい》』


「え?何これ?読めるんだけど?」

「私にも読めるよ」

「てか、これって佳織さんの事じゃないかな?」


 日本語じゃないのに3人共読める文字。普通のカーナビなのに指示されている不思議な現象。綾ちゃんが言うように、多分これお姉ちゃんの事だろうな。


「そうだよねぇ。えいっ」


 呑気なお姉ちゃんは疑いもせずにカーナビに触ったんだ。お姉ちゃんらしいったら。でもね、お姉ちゃんが触った途端に画面が光って表示が変わったの。


『#¥&*tyx%a&€€£$《オーナーの魔力を登録完了》

 これよりオーナーの言語での表記に切り替えます』


 え?今度は魔力?何それ?


『初めまして、オーナー・佳織。そしてこの世界にようこそ!

 奈津様、綾様』


 混乱している私達に、カーナビはさも当然のように挨拶をしてきたのよね。これには流石に驚いたけど、それはそれ。受け入れるのも早いのも木崎家なの。『物事を自分の考えで理解するな。現状をしっかり把握するべし』も家訓なの。


 「ナビちゃん宜しくねえ。で早速だけど色々教えて欲しいんだけど」


 お姉ちゃん、音声対応出来るかもわからないのに普通にカーナビに話しかけちゃってる。でもカーナビもそれに音声で答え出したんだよねぇ。もうなるようになれだね。


『これより音声にて対応致します。まずは皆様、ご自分の能力をご理解下さい。ステータスオープンと唱えてみて下さいませ』


「なんかラノベみたいだね」

「あ、お姉ちゃんもそう思った?」

「うわ、この年でいうのか」


 綾ちゃんはなんか恥ずかしがっていたけど、私とお姉ちゃんはネット小説結構読んでいたからなぁ。このパターンってちょっとワクワクしちゃったんだよね。

 

 3人が一斉に「ステータスオープン」って言ったら空中にパソコン画面みたいなものが浮かび上がってきたの。


これがまた三人三様だったんだ。


気になる単語も出てきたんだよ。

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