第13話 情報入手
警戒心がなくなった様に見えるお姉ちゃんとロティは、それはもう盛り上がっちゃって……
「ロティ!次はこの味試してみて〜」
「ん?……これは!なんて強い酒精なんだ!」
え?お姉ちゃんウィスキー出しちゃってる!綾ちゃんいつの間に?
「ん?佳織さん飲みたいって言ってたからね」
「駄目だよぉ!お姉ちゃんウィスキー飲むと絡み酒になるんだから!」
「ええ!そうなん?………あ、ごめん奈津。もう遅いかも」
綾ちゃんが指さす方向には、既に出来上がってロティに絡んでいるお姉ちゃん。ウィスキーをドボドボ注いじゃってるよ……
「くう〜!効くね〜!」
「おお!ロティやるぅ!ハンナもどーお?」
ああ〜、もうロティさん、お姉ちゃんにストレートを一気飲みさせられて。顔赤くなってるじゃん。しかもお姉ちゃん、ビン持ったままハンナさんにも絡みに行ったよ。流石に止めなきゃなぁ。
「あー!お姉ちゃんストップ!もう駄目!ハンナさんやロティさん帰れなくなるでしょう⁉︎」
「んー?いいじゃない?なっちゃん、家出しちゃえ!」
お姉ちゃんからビンを取り上げてハンナさんを救出したのは良いけど、お姉ちゃんたら、家の事まで喋っちゃった!綾ちゃんまで「え!」って言ってるし。勿論ハンナさん達の顔には疑問の表情が浮かんでる。まだ今なら誤魔化し効くか?
「あー、酔っ払いの話は気になさらずに。お水持ってきますか?」
「ん?ああ。頼むよ。これ結構効いてきたからね」
「ロティ、貴方飲みすぎですわ。いくらなんでも遠慮しなさい」
あ、よかった。誤魔化されてくれそう。ロティさんも顔赤いし、ハンナさんは流してくれたっぽい。
「気にするなぁ〜!ここに泊まれば良いの〜!なっちゃんのスキル凄いんだから!家だせるのよ〜!泊まっていけ〜!ぐもっ……」
お姉ちゃん!更に追い討ちかけないでぇ!って綾ちゃん、お姉ちゃんの口塞ぐのちょっと遅かったよ……
「は?」「え?」
あ……まずい。二人共顔こっち向いちゃってる。綾ちゃん〜(泣)
「あー……なんと言いましょうか。とりあえず、今日のこの後のご予定どうするつもりだったのか聞いても?」
綾ちゃんお姉ちゃんの口塞ぎながら二人に聞いているけど、既に決まっている様な気がする……
「本当はすぐお暇するつもりでしたの。でもロティがこの状態では移動が困難ですわ。宜しければ此処で野営をさせて頂けたらと考えていましたわ……」
ちょっと足にきているロティさんを支えながら、ハンナさんが申し訳なさそうに話してくれたけど。……確かにロティさんはふらふらしてるし、これは移動無理だねぇ。
「……プハっ!だーいじょーぶー!この二人ならナビちゃんが大丈夫っていってたもーん!見せて護衛お願いした方良いって!」
お姉ちゃんったら綾ちゃんの拘束解いて、まぁた問題発言をしてきたぁ!綾ちゃん「あーあ……」って諦め顔だよ。……でもナビちゃんが大丈夫っていうのは本当みたいだなぁ。ナビちゃんから確認取れたし。
さて、どうしようか?
とりあえず、綾ちゃんと相談させて貰う事をハンナさんから了承を貰い、綾ちゃんとボソボソ会議をする私。
「綾ちゃんどうする?」
「んー、結界に二人共入って来てるし、ナビちゃんもOK出しているしね。とりあえず、家を出す事方向で」
「お姉ちゃん、言っちゃったしねぇ……そういう事にしよっか?ナビちゃんのことは?」
「どうせ移動の時バレるけど……ねえ、奈津。今日はみんなであの家に泊まるってのはどう?」
「うん、そうしよっか」
相談後、ハンナさんに私達の家で泊まる事を提案をする綾ちゃん。その間にポヤポヤお姉ちゃんにナビちゃんから平家の家を出して貰う事に。あ、家出したら二人共すっごい驚いてる。……そりゃそうか。
「家を出すとは……」
「……凄いですわ……」
しばらく家の前で唖然とする二人を、綾ちゃんが背中を押して中に案内してくれたんだ。私は酔っ払いのお姉ちゃんを担当。
玄関を開けて、私はすぐにお姉ちゃんを和室に連れていき、布団をお姉ちゃんに出して貰ったの。お姉ちゃんは布団を出して横になったらすぐスゥッと眠りに入った。布団出して貰うまで大変だったけど。
……全く。ウィスキー飲むと手がかかるんだから……
「奈津ー!客間にソファー出してー!」
「はぁーい」
綾ちゃんに呼ばれた私は、お姉ちゃんが眠る和室から客間に移動して、2人掛けソファーMP8,000を2つ、センターローテーブルMP 6,000を出したんだ。2人は「アイテムボックス……?」って言ってたから勘違いさせとこう。これもスキルなんだけどね。
綾ちゃんはお茶を用意してくれるらしいから、その間に私は外のお片付けをパパッとやってくる。ナビちゃんに頼めば一発だからね。お肉は居住空間の戻したよ。
客室に戻ると、2人から質問攻めにされていた綾ちゃん。どうやら私を待っていたらしい。
「あ、奈津。片付けありがとう」
「ううん。で、どこまで話が進んだの?」
「ぜーんぜん話してないよー」
綾ちゃん2人の勢いに負けないなんて凄いや。今でも「これは?」「どういう事ですの?」って前のめりだもん。
「まず2人共落ち着いて。私達の事話す前に提案なんだけどさ。ロティとハンナ、私達が王都にいる間護衛お願い出来ないかな?」
「綾達は王都に滞在するのか?」
「んー、しばらくはね。まずは護衛を引き受けてくれるかどうかで話す内容が変わってくるんだ。ロティ、ハンナどう?」
綾ちゃんの提案に反応したロティは、ハンナと目を合わせてちょっと考え込んでいたんだけど、しばらくして綾ちゃんにロティが質問したんだ。
「護衛っていっても何をするんだ?」
「王都で私達ちょっと商売しながら調べたい事あるんだけど、その商売の警護と、私達が出歩く時の護衛かな。一般女性だけだとなめられちゃって、前の街でちょっと大変だったんだ」
「シルバーフォレストウルフがいてもか?」
「そうだねぇ。だから冒険者をいずれ雇おうと思っていたんだけど、そこにロティ達がきたからね」
すると、今度はハンナが綾ちゃんにきいてきたの。
「きっちり護衛代金払ってくれるのであれば、私は構わないと思いますわ。でも私達のパーティは高いですわよ?大丈夫ですの?」
「んー、それはなんとかなると思うし、今なら宿代や奈津の手料理付きだよ。どう?」
綾ちゃん私の手料理は駆け引きに使えないって。
「まぁ!料理して下さるの?ロティ、これは逃す手はありませんわ!」
「だな!宿代も込みだし、ディナの治療費に充てられるしこちらからお願いしたい案件だ」
まさかの料理に食いついて来た二人。話を聞いてみたらパーティ全員料理できないんだって。どうやって食べてたの?って聞いたら、屋台や外食がメインで作った事はないみたい。んー、私の周りの美人さん達って不器用な人多いなぁ。
「なら、後はもう一つ。私達の事を他で話さない事。これ絶対条件ね」
「それは依頼人との関係で当然の事だからな、なぁハンナ?」
「ええ、勿論ですわ」
二人からの了解が出て綾ちゃんから目線で確認がきたから、私も頷いておく。お姉ちゃんは大丈夫だろうし。
それからは綾ちゃんが説明する事に驚きっぱなしの二人。話したのは私達が召喚に巻き込まれた異世界人だと言う事。一人一人スキル持ちだって事。スキルに関してはおいおい見せていく事にして、まずはこちらも聞きたい事を聞いてみたんだ。
「王都では何か召喚について聞いていない?」
「……召喚かわからないが、王宮に聖女が現れた話は出ているぞ」
「そうねぇ。ねぇロティ?もうすぐお披露目があるんじゃなかったかしら?」
「そういえばあったな。今祭りの準備で人が集まって来ていたか」
私の質問に答えてくれたロティの「聖女」と言う言葉で、それだ!っと私と綾ちゃんが目を合わせる。
それから情報のすり合わせをしていくと、現れた時期は同じ。なぜ私達が草原に現れたかは不明だけど、聖女は一人。王宮で保護されている事。聖女は世界を浄化する力を持っている事。で、結構聖女はこの国に現れている事。……現れた聖女はこの地で寿命を全うした事……
「……んーこれはなんとも……」
二人からの話に考え込む綾ちゃん。私もそっかとため息ついちゃったんだよね。何人か現れているなら帰った子もいるんじゃないかと思ったけど……いないのかぁ……
「あ、そういえば浄化って何を浄化するの?」
「ん?……そういえば奈津達はこの世界に来て身体がだるくなったりしないのか?」
不思議そうに私の質問に質問で返してきたロティによると……この世界には瘴気という人体に害になるものがあって、1ヶ月に一度神殿で人体を浄化させないと死に至る病になるんだって。しかも魔物が発生する場所は瘴気が濃い場所だから、冒険者は頻繁に神殿に通わないといけないみたい。
「んー?魔物は倒しているけどそんなの感じた事ないなぁ。ね、奈津」
「うん。怠くもないしね。……あ!でも綾ちゃん、もしかして黒い霧の事なんじゃない?」
「え?シルバから出て来たアレ?」
「そうそう!でもアレ以来シルバも私達もなーんにも変化はないよねぇ」
私と綾ちゃんの会話を聞いていたロティとハンナは更に考えこんじゃったけど、何かハンナが気づいたみたい。
「ねえ、ロティ?そういえばこの結界に入ってから身体軽くならなかった?」
「……言われてみればそうだな。神殿で浄化かけてもらった時よりも身体が軽い」
「そう……やっぱり!これって凄い事ですわ……!」
興奮気味のハンナによると、どうやらナビちゃんの結界にも同じ効果がある事。そして話を聞いた限りだと、私や綾ちゃんのスキルも同じ効果があるんじゃないか?だって。
確かに私のスキルはシルバで実証されているし、しかもテイムできるし……綾ちゃんはどうなんだろう?
「これは大変な事ですわ。瘴気は神殿でしか浄化されませんし、それも完全には浄化はできないのですわよ!聖女様しか出来ないと思われた浄化ができる人材が此処に3人もいると知られたら……」
「私達の手に負えない事になるな。王宮行き決定じゃないか?多分王家に囲われるだろうな」
ハンナとロティの言葉に、私と綾ちゃんは顔を見合わせて嫌〜な顔をする。うわぁ、使い潰されそう……
「うん、王宮には近づかない方向で!」
「そうだね、綾ちゃん!」
私と綾ちゃんがガシッと手を組んで決意している様子に、ふふっと笑うハンナとロティ。
「なら、その方向で動こう」
「そうですわね」
二人共笑って受け入れてくれるけど良いのかなぁ?
「え?良いの?この世界の人たちにとって私達の力役立つんだよ?」
あ、綾ちゃんもこの二人の反応にびっくりしてる。普通は利用しようとか頼み込んできたりとかしそうなのにね、って綾ちゃんの顔みながら私が言ったらね……
「そんなの奈津や綾達が責任感じる事じゃないだろ?」
「そうですわ。勝手にこの世界に飛ばされて来た上に、この世界の為に働いてくれなんて言う王家が馬鹿なんですわ」
「ああ、そもそも召喚が本当なら、この世界は度々人攫いをしている事になる。そんなのが許されている方がおかしい」
キッパリと言うこの二人がかっこいい。と言うかそんな考えが普通なの?って思わず聞いちゃった。
「まぁ、違うだろうなぁ」
「そもそも、私達王家を信頼しておりませんし。それこそ望んで行って下さるなら別ですけど。それに歴代の聖女様の話にも裏話ありますもの」
ハンナ達にも聞こえてくるくらい、聖女の苦労話は結構あるみたい。……なら確かめた方がいい事ばっかりだね。
「ねえ、綾ちゃん。もしよければ聖女さんには接触してみたいね」
「あ、奈津も思った?私も同じ。但し確認だけね。だって進んでやりたいならそれはそれだしね」
「うん。それに更に情報持ってるかもしれないし」
「よし!王都での目的に加えようか!それも踏まえて二人共護衛の依頼になるけどいい?」
綾ちゃんの護衛依頼の確認に笑顔で頷いてくれた二人。
やった!護衛が王都入る前に決まったよ!
綾ちゃんと手を取り合って喜んでいたら、がらっと音がしてお姉ちゃんが入ってきたの。
「んー……?なぁにぃ?どしたの?」
部屋の入り口で目を擦りながらこっちを見るお姉ちゃん。
お姉ちゃんまだ目が半分開いてないよ……
ま、でもこの話聞けばおきるでしょ。
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