第9話 銭湯に入ろう

 カララララ……

 むわっと湯気が立ち込める大浴場。湯気の先には一面の壁画。タイルのシャワーが設置された洗い場の前には、銭湯ならではの黄色い桶に木の椅子。奥には大きな湯船に掛け流しのお湯が注がれていたの。


 「うわぁ!広いねぇ!」

 「おしい!富士山じゃない……」

 「これ15人くらい入れそうだねぇ」


 綾ちゃん、壁画が富士山じゃないのに残念がってるし。うん、ここの絵は湖の絵だからねぇ。お姉ちゃんは何気に広さ確認してる。


 そうそう、早速私達3人で大浴場入る事にしたんだ。もう3人とも入る準備は万端!タオルもあったしね。あ、お姉ちゃんも綾ちゃんも堂々と裸で入って行ってる。2人共スタイルいいからなぁ。


 「奈津?何タオル巻いてんの?取りなさいって」

 「どーせ体洗う時取るんだよぉ。取っちゃえ」


 なんとなく身体にタオル巻いてみたんだけど、2人に取られた私。まあ、銭湯のルールに反してたしね。でも私2人に比べたら小さいからなぁ。どこがとは言わないけど……


 とりあえず、3人並んで洗い場に座りまずは身体や髪を洗い出したんだ。


 「シャワーあって良かったね。蛇口だけしかないと思ってたよ」

 「綾ちゃんもそう思ってた?私お湯もお水で調整するのかなぁって思ってたんだ。でもちゃんと温度で出来るようになってて良かったよ」

 「2人共どうせなら背中洗いあおうよ」


 私と綾ちゃんは昭和初期の銭湯をイメージしていたんだ。だってそんな雰囲気だったんだよ、ここの内装。木の温もりが懐かしいっていうのかなぁ。番台もちゃんとあったの。お金を入れると石鹸とシャンプー、コンディショナーがセットになって出てくるようになっていたんだ。不思議だったなぁ。勿論オーナー権限で私達はお金かかってないけどね。あ、お姉ちゃん。背中流すのやってあげる。


 「奈津の背中は私やってあげるね」

 「綾ちゃんありがとう」

 「なっちゃん、なっちゃん!ちょっと力強いよぉ」


 私がお姉ちゃんの背中を洗い出したら、綾ちゃんも私の背中を洗ってくれたの。ん?お姉ちゃん、力強かった?ごめんごめん。


 「これってさー、奈津いいポジションだよね」

 「なっちゃんの背中今度は私がやるねぇ」

 「ふふふ。たまには真ん中もいいものだね」


 そうなんだ。私は真ん中にいるから、綾ちゃんとお姉ちゃんに洗ってもらえるんだよねぇ。役得役得。あ、お姉ちゃんくすぐったいよぉ。もちょっと力入れて!


 きゃいきゃい言いながら、髪も身体も洗ってスッキリした私達。銭湯の醍醐味大浴槽に入ったんだけど、「あっっつい‼︎」ってすぐ足をお湯から出す綾ちゃん。


 「あー、やっぱりそっち側ってあっついお湯だったんだねぇ」

 

 お姉ちゃんは大きめに仕切られているほうのお湯にまったり入っていたんだ。いやいや、わかってたんなら教えようよ。綾ちゃんは小さめに仕切られた浴槽を試そうとしたみたい。こう言っちゃなんだけど、綾ちゃんナイス!私入る前で良かったぁ。


 結局3人とも丁度いい浴槽に入って、満足のため息を吐く私達。


 気持ちいいなぁ。やっぱりお風呂って良いよねぇ。あ、シルバも一緒に入れないかなぁ。でも魔物ってお風呂嫌がらないかな。

 ん?シルバはって?シルバは外で見張りをしてくれているよ。ついでにご飯食べてくるみたいな雰囲気伝わってきたしね。


 「はー……きーもちいい……たっぷりのお湯に浸かるのって良いね」

 「綾ちゃんわかるー!家のお風呂とまた違った感じなんだよね。開放感があるし」

 「そうだねぇ。で、気持ちよさそうな所ごめんねぇ。このあとの事だけど、一個提案して良い?」


 私と綾ちゃんがまったりとお湯に浸かって話していたら、お姉ちゃんが話しを持ちかけてきたんだ。なんの提案だろう?


 「あのね、やっぱり目に見える自衛手段も必要だなぁって思ったからね。護衛雇うのってどうかなぁ」

 「あ、佳織さん、私も思ってた!シルバいるけど、やっぱりいざと言う時対応してくれる人って必要だよね!」

 

 うん、綾ちゃんが言うように私も思ってたんだよね。もし、この店やるにしても必要だよねって思うけど……


 「実際問題どうする?私達のスキルって特殊だよ?」

 「「それなんだよね」」


 私が言うと2人共同じように悩んじゃったんだよね。


 「うん、そうなんだぁ。それでなくても家だって必要になるし、雇うお金も必要だし、期間だってどれくらいになるかわからないしねぇ」

 「とはいえ、佳織さんの提案は私は賛成。ここで悩んでいても仕方がないでしょう。詳細は王都に行って現地で考えようよ」


 綾ちゃんは前向きだなぁ。お姉ちゃんは現実的だし。あ、家なら私が何とかできそうだけど……後で調べて見ないとね。それより身体かなり温まったなぁ。のぼせそうだし、上がろっかな。


 私が上がると2人も一緒に上がってきたの。みんな身体真っ赤になってた。結構熱いお湯だったんだね。


 脱衣所では扇風機が回っていて気持ち良かったの。これどうやら自動で回るみたい。センサーでも付いているのかな?あー……風が気持ちいい。


 「なっちゃん、ほら身体拭いて」

 「奈津入る前はタオル巻いていたのに、お風呂上がりは扇風機の前で裸で仁王立ちって……」


 お姉ちゃんに後ろからバスタオルをかけて貰ったんだけど、お風呂上がりの私の様子に綾ちゃんが爆笑。でも裸で扇風機って気持ちいいんだもん、ついやっちゃうよね。あ、お姉ちゃん体重計に乗ってる。何キロ?秘密?お姉ちゃんでも秘密かぁ。


 遊びながらもそれぞれドライヤーで髪を乾かして、綾ちゃんにスキンケア用品も出してもらってお風呂上がりの工程も終了。女性がお風呂に時間がかかるのってこう言う事なんだよねぇ。


 カララララ……


 「はあー!良いお湯でした!」

 「うん、こういうのもたまには良いねぇ」

 「旅の途中ならこうやって楽しんでも良いね」


 綾ちゃんもお姉ちゃんも満足したみたい。私も旅の間にたまには良いかなぁって思っていたら、綾ちゃん早速自販機でコーヒー牛乳買ってたんだ。あ、良いなぁ!私も買う!


 「瓶に入っているコーヒー牛乳なんて久しぶりだよ」

 「この紙の蓋ってどうやって取るの?」

 「なっちゃん、お姉ちゃんがやってあげよう」


 綾ちゃんが美味しそうに飲む中、私は蓋開けに奮闘。そしたらお姉ちゃんが備えつけの蓋を取る道具で簡単に取ってくれたの。綾ちゃん曰く「考えたら取る方法わかるっしょ」だって。うう……面目ない。


 あ、それにね。私達が今いる入り口兼休憩所には、木の長椅子とコーヒー牛乳自販機とTVがあるんだけど……


 「TVって何映るんだろうね」

 「つけて見たら?」

 「あ、リモコン発見!」


 興味を示す私に促す綾ちゃん。お姉ちゃんはリモコン見つけたみたい。でね、お姉ちゃんがTVをつけると、ドアップのシルバの顔が映ったんだ。


 「あは!シルバだ!匂い嗅いでる!」

 「佳織さんこれリモコンで周りも見る事出来ますか?」

 「あー、横とか押してみるといいかなぁ」


 私がTVに映ったシルバに喜んでいると、綾ちゃんとお姉ちゃんがリモコンで操作を試してたんだ。予想通り周りを見る事もできたんだよ。しかも360度銭湯の周りを確認できるの。


 「へえー、これ便利だね」

 「うん、中から外の様子を見えるのは良いね」

 「中にいると忘れちゃうけど、異世界だもんねぇ」


 お姉ちゃんが言うように、この中にいると日本にいるみたいだもんね。やっぱり警戒は必要かぁ。でもそうなると、確認しておきたいのがまだあるかなぁ。


 「あのね2人とも、今日はもう無理だけど明日確認したいのがまだあるんだけどいい?」

 「ん?奈津のスキルでって事?」

 「いいよお。なっちゃん家確認したいんでしょ?」

 「さっすが、お姉ちゃん!当たり!」

 「そっか。今後を考えると必要かもね。私は金策を考えようかな」

 「綾ちゃんが頼りです!」「頼りにしてるねぇ」


 うん、この3人だとサクサク物事決まっていくからいいな。

 

 結局今日はもう少し進んで、また誰にも見えない広場見つけたら、そこを今日の野営地にして次の日に確認をすることにしたの。


 今度は家屋の家の種類を調べるんだ。

 どんな感じの家が出るだろうなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る