第11話 お家の確認

 順調に王都に向かう中。街に補給に寄らなくて良い変わりに、魔物補給が必要なナビちゃん。それはもう嬉々として綾ちゃんが出てきた魔物倒しまくっていたよ。


 でもね、黒い霧が多くなってきたなぁって思っていたら、丘の下側で大きな黒い歪みと豚の魔物の群れが見えてきたの。二足歩行の豚の群れ、口から涎垂らして腰巻きだけの姿。お姉ちゃん魔物の名前について予想はしていたものの、ナビちゃんに確認していたんだ。


 「ナビちゃん、改めて聞くけどあれ何?」

 『オークという魔物です。あれだけの数で魔物の反応しか無いということはクイーンオークとキングオークがいる群れですね』

 「オークってもしかして女性も襲う?」

 『その通りですオーナー。この群れはクイーンがいるので群れの中に人の反応はありませんが、大抵群れになる為に人を捕まえて繁殖するそうですね』

 「はい、ギルティ」


 お姉ちゃんすぐにナビちゃんに頼んで、群れの中心にミサイル二発打ち込んだの。当然着弾と共に凄い轟音と爆風が私達にも向かってきたんだよ。ナビちゃんの結界あるからって無茶しすぎだよー!


 っていうか、綾ちゃんも冷静に残りのオークを倒していってる。……この二人すごすぎる。


 最後のオークを倒して魔物トランクに収納すると、オーク150、オーク破片多数ってあったよ。破片まで燃料になるからある種有効利用だよね。ナビちゃん気を使ってくれたのか、片っ端からすぐ収納していってくれたみたいだから、そこまで気持ち悪い状況は見なかったけどね。二人は耐性できたかも知れないけど、私はちょっとリタイア。


「奈津ー?大丈夫?」


 助手席に座っている綾ちゃんから心配する声が聞こえてきたけど、綾ちゃんもお姉ちゃんも強いなぁ。私は奥で休んでいる間もそのまま何事もなかったようにナビちゃんを進ませる二人。本当に頼りになるね。


 私は少し自分の部屋で寝ていたら気分治ったかな。


 うん、気分転換に料理しておこ。何が良いかなぁ。……トマト料理系は止めておこうかな。じゃ、冷凍アサリあったしクラムチャウダーと、焼きアスパラガスのシーザーサラダとパンで良いかな?あ、野菜ジュース発見。これもつけよ。


 野菜切りながら、鍋の準備して、バターを溶かして、野菜炒めて小麦粉入れて……なんか最近毎日やっているから手際良くなったなぁ。やっぱり好きこそものの上手なれだっけ。お母さんよく言ってたの。なんかわかるな。ん!良い味。


 「お姉ちゃん、綾ちゃん!お昼ご飯出来たよー!」


 家の中から叫ぶとナビちゃん中継して伝えてくれるから楽だなぁ。二人とも「良い匂い〜」って言って居住空間に戻ってきたみたい。あ、今日シルバは家の中で私といるよ。ゆっくりしたい気分なんだろうね。


 「二人ともお疲れー」

 「なっちゃんもう平気?」

 「わぁ!奈津クラムチャウダー作ってくれたんだ!」


 私が二人に声かけると、お姉ちゃんはまだ心配そうな顔してたな。大丈夫大丈夫。綾ちゃんは好物のクラムチャウダーでテンションが上がったみたい。へへっ、喜ばせるの成功だね。


 みんなでいただきますして食べ始めたら、今の状況を綾ちゃんが話し出したんだ。


 「だいぶ進んで来たから王都まであと少しですよね、佳織さん」

 「そうだねぇ。ナビちゃんによるとあと3日って言ってたっけ?だったらその前になっちゃんのスキルの確認しちゃった方がいいかなぁ」

 「あ、私のスキルって家の事?」

 「そうそう。今後の為にね、なっちゃんも見といた方が良いと思って」

 「そういえば奈津のスキル確認忘れてた!クリーニングや医院も調べてみたいよね」

 「綾ちゃん、一度には無理だよう」

 「ならなっちゃん、まず家見ようよ。もしかしたら王都でしばらく居る事になるかも知れないし」

 「あー、確かに。佳織さんの言うように情報ってすぐに手に入らないしね。奈津、丁度良い広場に来てるんだ。食べたらやってみようよ」

 「あ、いいね!そうしよっか」


 トントンと話しが進み、食後に確認してみる事にしたんだ。勿論、デザートしっかり食べてからね!


 そして食後外に出たシルバと私達。


 「では確認をしたいと思います!」

 「「ハッ!お願いします!」」


 私の遊びの敬礼に、ノリノリで敬礼で返してくれる二人。ひとしきりみんなで笑ってから、ステータスボードの家屋から住居をタップ。

 

 住居

 ・平家 MP25,000

 (キッチン、トイレ、風呂付き 和室×4 洋室×1)


 「ありゃ?住居は一つなんだ」

 「なっちゃん、和室の数多いねぇ」

 「しかもなんでLDKってついて無いの?」


 住居タップしてみたら意外にも一つだけ。お姉ちゃんは和室の多さにワクワクしてるし、綾ちゃんは表記の仕方に疑問持ったみたい。ま、出してみたらわかるでしょ。


 タップするとシュンッと現れたのは瓦屋根の平家。日本家屋だねぇ。お姉ちゃんったら、きゃあ!って喜んでいる。好きだもんね、こういう家。


 カララララ……と引き戸玄関を開けると、広い土間が私達をむかえたの。木の香りがいいにおい。あ、靴箱ある。玄関の広い広間の両端には和室6畳と洋室8畳があったよ。


 そして玄関広間から続く広く長い廊下の左には、トイレと洗面所とお風呂とキッチン。右側には襖で仕切られた和室が3部屋。


 「ここは茶の間でしょう。で、ここは居間。八畳の大きい部屋は客間かなぁ」


 嬉しそうに襖を開けて確認するお姉ちゃん。うん、ここ実家に似てるもんね。綾ちゃんはお姉ちゃんの説明に納得してる。


 「あ、奈津。シルバの場所があるね」

 「ああ本当だね。5畳くらいの広縁かぁ。濡れ縁もある!陽の光も当たるしいいね、ここ!」

 

 続き部屋の和室を挟んで広縁とくれ縁があったの。あ、因みに濡れ縁はガラス戸や木戸の外側の廊下の様な空間で、くれ縁はその逆の内側の廊下の事だよ。広縁は内側の廊下が広くなった空間の事なんだ。木崎家は和モダンが好きな両親がいたから知ってるけど、最近こういう家って少ないもんね。


 「きゃー!なっちゃん!綾ちゃん来てみてー!」


 あれ?お姉ちゃん居ないと思ったらお風呂の方にいたんだ。何かあったのかな?


 「みてみて!あのアニメのお風呂なのー!」


 お姉ちゃんが興奮しているけど、うわぁ本物!お風呂場はタイル風呂で小さな湯船と広い湯船の二つ付いた五右衛門風呂だったんだ。へえ、実際はおっきいんだね。


 「ねえ佳織さん。なんで湯船二つもあるの?」

 「これねー!大きい湯船は入浴用で小さな湯船は熱いお湯を沸かして置く用と掛け湯用なんだって。前に調べてみた事あったけどまさか実際に触れるなんて嬉しい〜!」

 「あー、お姉ちゃんあのお風呂憧れていたもんね」


 お姉ちゃんあのアニメ大好きで今でもたまに見てるもんね。おかげで私も覚えちゃったけど。でも、これどうなっているのかな?ん?何、お姉ちゃん。ええと、大きな釜の下で火が焚かれ、その煙が小さな釜の下をくぐることで、両方のお湯があたたまるって?でもこれ蛇口からお湯出せるみたいだよ。


 お姉ちゃん薪本気で集める気だったんだね……見るからにガッカリしてる。私としては良かったぁ。薪集めるの大変だもん。


 「不思議だねぇ。お水も出るし、電気とガスもつくよ?お風呂のお湯も出るし。生活には困らなさそう」

 「綾ちゃんの洋室もあるしね。客間を私の部屋にしても良いし、これも使い勝手がありそう」

 「でもなっちゃん出す家屋って昭和の時代の物なんだねぇ」


 綾ちゃんもこれなら住めると思ったのか高評価。お姉ちゃんは元々和風の家好きだったから高評価は当然だけど……確かに私の出す家屋って、以前にTVでみた昭和時代のものなんだよねぇ。性能は違うのもあるけどね。だってトイレがね、ウォシュレット付きの水洗だったもん。正直和式トイレじゃなくて良かったぁ。あ、シルバ広縁で日光浴してる。気持ちよさそう。


 「でもやっぱりこの作りは目立つねぇ」

 「うん、佳織さんが気にいっていても、私はナビちゃんの居住空間が好きかなぁ」

 「綾ちゃんはそうだよね。私どっちでも良いけど」


 そう。お姉ちゃんが言うようにこの世界の家はレンガ作りの中世の家って感じだったからやっぱり違和感はあるんだ。使い所は気をつけないといけないかな?でもそんな事言ったら銭湯もナビちゃんの車もそうだけどね。


 確認をした私達は一旦外に出たんだ。この家は色々家具も揃えなきゃいけないし、とりあえずナビちゃんのトランク収納に入れて貰ったの。


 そしてナビちゃんの居住空間に戻ってきた私達。


 「んー!帰ってきたって感じ!」

 綾ちゃんはこっちがやっぱり好きみたい。

 「あのお風呂は入ってみたかったなぁ」

 お姉ちゃんにとっては憧れのお風呂だもんね。後で一緒に入ろ。

 

 私もやっぱりこっちが慣れたから好きだけど、もしかしたらスキルアップしたら時代が進んだ家になるのかなぁってちょっと思っていたんだ。どうなるだろうね?


 結局、今日はもう進まずこの場所で泊まることにしたんだ。だからお姉ちゃんはシルバをブラッシングしてるし、綾ちゃんはお風呂にゆっくり入りにいったの。私はお菓子でも作ろうかな。王都に行ったらお菓子も売ってみたいからね。ふふっやりたい事もやれることもいっぱい。


 ま、王都の状況次第だけどね。

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