第19話 魔力回復のイエロースリムポーション改

 オンファロデスから、おすすめのレシピを聞いて、わたしはさっそく作業に取り掛かることに――。


「あの、オンファロデス……いつまでお店にいるつもりです?」

「いつまでって、別にずっといてもいいだろ」

「だめです。企業秘密の作業だってあるのですから、見られるわけにはいきません」


 わたしはオンファロデスを追い出した。

 抵抗すると思いきや、意外と素直に外へ出ていってくれた。


「あ、あの、今の方は?」

「ああ、マーガレットさんに紹介していなかったですね。あの錬金術師とは前に少しトラブルになって」

「そ、そうなのですか!?」

「オンファロデスという、ちょっと嫌な奴でしたけど今はちょっと違うみたいです」


 面白い提案をしてくれたから、ほんの少しだけど警戒は解いた感じ。まだ完全に信用したわけじゃない。


 マーガレットに手伝ってもらいつつ、わたしは魔力回復ポーションの開発に取り組む。

 魔力回復といえばイエローハーブ。

 そこへ魔力の塊とも呼ばれている『魔女の爪』を混ぜ合わせる。爪といっても本物ではない。爪のような形をした植物。



【魔女の爪】

【詳細】

 リトルウィッチが落とす植物片。食べると少々魔力を回復する。材料として使用できる。



「それは『魔女の爪』ですね」

「知っているのですね、マーガレットさん」

「はい。教会でもよく見かけました。その状態でも魔力をほんの少しですけど回復できるんですよね」

「そうみたいです。もともと魔法使いモンスターの一部ですからね、魔力が込められているんでしょう」


 さっそく調合していく。

 隠しレシピも混ぜ、しばらくして完成した。

 見た目は問題なし。あとは中身。


「アザレア様、わたくしが味見しましょうか?」

「よければお願いします」

「はい、ありがたいです。わたくし、魔力をよく使うものですから、これで回復できるのなら嬉しいです」


 そういえば、オークダンジョンではたくさんの治癒魔法を使ってもらっていた。実験には丁度いいわけだ。


「ではお願いします」


 わたしはイエロースリムポーションを渡した。



【イエロースリムポーション改】

【詳細】

 小型で重量が非常に軽い。

 携帯性抜群のポーション。

 魔力を中回復する。

 毒を回復する効果もある。



「こ、これがイエロースリムポーション、なんだか凄そうです」



 上品にポーションを飲み始めるマーガレット。果たして……効果は?



「どうですか?」

「味とか香りは完璧です。魔力の回復力は……」

「ま、まさか失敗ですかね……?」

「いえ、とても回復しました。魔力があふれそうなくらいに!」

「や……やったあああ!! 成功!!」

「はいっ、成功したみたいですっ」


 一緒になって喜ぶ、わたしとマーガレット。良かったぁ、無事に魔力が回復した。しかも、かなりの回復力があるみたい。


 グリーンスリムポーションも大量生産していく。


 うーん……一個一個丁寧にやらなきゃだから、大変。もうちょっと効率よく製造できればいいのになぁ。


「……楽に製造したい」

「え? どうしたのですか、アザレア様」

「ほら、現状はポーションを一個ずつ作っているでしょう。これが大変で……」

「確かにいっぺんに作れるものではないのですね」

「こんな時にイベリスさんがいてくれたら、なにか良い方法を教えてもらえそうなのに」


 未だに帰ってくる気配はない。

 もう日が沈んじゃうんだけどなぁ……。

 ちょっと心配。


 今はとにかく一個ずつでも、生産することにした。



 ◆



 ポーションの製造を続け、夜も更けてきた。……お腹空いてきた。


「うぅ……」


 さすがのマーガレットも疲れていた。そろそろ休憩しようっと。


「ごめんなさい、マーガレットさん。ご飯にしましょう」

「ご飯ですね! では、わたくしが作ってきます」

「え、お料理できるんですね」

「よく言われます。聖女なのにお料理するなんてとか。でも、わたくしの趣味はお料理なんです! なので料理スキルがかなり高いですよ~」


 へえ、エルフの作る料理には興味があった。人間にはない味とか知ってそうだし。うん、ここはマーガレットにお願いしようっと。


「では、キッチンに案内しますね。ご飯、お願いします」

「ありがとうございます!」


 彼女をキッチンへ案内し、晩御飯を作ってもらうことにした。


「なにを作ってくれるのです?」

「そうですね~。教会でよく作っていた『カリー』にしましょう」

「カリー?」

「ピリ辛で美味しい料理ですよ~。お楽しみです」

「はじめて聞く料理なので期待しています」


 その間にわたしはお風呂へ。

 ゆっくりと疲れを癒し、体を清めた。


 湯船に浸かっていると、窓からなにか音が。え……うそ。人間?


 警戒しながら窓を開けると、そこには――。


『ホホ~』

「え、フクロウ?」


 なにかを咥えたフクロウがいた。

 これは手紙?

 受け取れってことらしい。

 わたしはフクロウから手紙を受け取り、開封してみた。すると、中身はイベリスからだった。こ、これは……!



【アザレアさんへ】

 私は今、ポインセチア城にいる。

 仕事の関係でしばらく戻れそうにない。

 だが、こっちへ来てもらう分には構わない。陛下も君に会いたがっている。もしよければ一度お城へ来てもらえないだろうか。歓迎するよ。



 そういうことなんだ。

 ポーション開発も大事だけど、イベリスのことはもっと大切。ご飯を食べたら向かおう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る