07.リスタート

 えー、今俺は日野さんに肩を貸してもらって、自宅の階段を上っています。

 どうしてこうなったかと言いますと――


 ◇◇◇


「──一緒にやらない?」


 予想外だった。

 てっきり、「何それ?おいしいの?」「ですよね〜、あははははー」か「何それ?どんなやつ?」「え、えーっとですねぇ……あはは……」みたいな展開になると思っていた。

 ……そう考えれば俺って日野さんがオアリブ知らないこと前提で考えてたんだな……。

 世の中には女性ゲーマーの人だって沢山いるだろうし、反省しなければ。


 って違う!

 どうしよう!?俺が初心者ですらないモグリ中のモグリだと知られたら……ガッカリするよな!?

 かと言って返事しない訳にも……!


「――え、えっとほら、俺目があれじゃん?だから一人でセッティングとか出来なくてさ?

 だからちょっと難しいかな〜って。

 いや、別にやる気が無いわけじゃないよ?

 いやー、残念だなぁ!本当残念だなぁ!ハハ……」


 よし、よしよし!

 我ながら良い言い訳じゃないか!?

 言ってることも別に嘘じゃないし!


「あ、目があれなんだったら、多分オアリビングの方だよね?だったら私行けると思う!」


「え゛」


 ◇◇◇


 ……とまぁ、こんな感じで妙に興奮した日野さんに連れられて今に至る。


 もうどうしようも無いのと、別にやる気も無いわけじゃないので、諦めて機械が運び込まれたであろう自分の部屋に案内する。

 部屋に着くと、日野さんが感嘆したようにため息をほぅ……と漏らした。


「うわぁ……おばさんとおじさん、奮発したなぁ……」


 ……今の日野さんの呟きから察するにあの機械相当に高い……?

 …………聞かなかったことにしよう……(震え)。


「あ、ごめんね。立ち止まっちゃって。よい、しょっ……よし、前に椅子があるから、それに座ってね」


「分かった」


「あ、横向きだからこういう風に……よし、おっけー!」


 日野さんに誘導してもらって無事着席完了である。

 一人じゃここにすら来れないからなぁ……。

 こういう時に盲目の不便を実感する。


「えっと、この吸盤を頭全体に付けて……っと。よし、出来たよ。違和感ない?」


「……うん、大丈夫」


「よし、じゃあポチッとな。いってらっしゃーい」


『こんにちは。この度は、オンライン・アライブ・ライフ・ヴァーチャルをご利用頂き、誠にありがとうございます。ただ今より、チュートリアルを開始します。拒否される場合は視線を上へ逸らして下さい。……それでは、これよりチュートリアルを開始します』


 前回とまったく同じ機械音声と共に、俺の思考はまどろみ、眠るようにして落ちていった

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