01.オアリブなるもの

 どうやらゲーセンに着いたみたいで、ゲーセン特有の騒がしい音がする。


「え-っと、オアリビングオアリビング……っと、あった。兄ちゃん、行くぜー」


「おう」


 気持ち大きめの声で返事する。


「うっは、『お一人様1プレイのみ』だってよ。張り紙されとる」


「え、マジか。相当人気なんやな、そのゲーム。というかそんなんで今空いてんの?」


「うん、なんか奇跡的に一個だけ空いとる。最高やな」


「……というかこっからどうすん?そもそも台がどんな形しとるかも分からんし」


「あぁ、そりゃもちろん手伝うから安心しとけ」


 ここまで来たときと同様に藤真の肩に手を置いて、誘導してもらう。


「あ、段差あるわ。そこ」


「……おせぇ、すね打った。……痛ぇ、お前のせい」


「そーりーそーりー」


「ぶっ殺すぞお前」


 おっと、つい口が滑ってしまった。

 まぁ、こんなの日常茶飯事なので罪悪感なぞ沸かない。


「はい、そこに椅子あるから座って。あぁ、右の方な」


「おっけ……ってうわスゲェ、ふかふかじゃん。何この椅子」


「そりゃ良かったな。とりあえず頭に吸盤みたいなん付けるからなー」


「ゲームで吸盤なんか使うん?……まぁいっか」


 そうして、吸い付く……というより、貼り付くようなものをおでこと頭全体に七個ぐらい付けられた。


「んじゃ、起動するで。楽しんできてや」


「お、おう……」


 言い知れぬドキドキ感と共に、やっぱり俺にゲームなんか出来ないのでは無かろうか、という不安が襲ってくる。


 すると、機械的な声が聞こえてきた。


『こんにちは。この度は、オンライン・アライブ・ライフ・ヴァーチャルをご利用頂き、誠にありがとうございます。ただ今より、チュートリアルを開始します。拒否される場合は視線を上へ逸らして下さい。……それでは、これよりチュートリアルを開始します』


 その言葉の後に、俺の思考はまどろみ、眠るようにして落ちていった。

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