03.剣という名のロマン

 当たり前だが、剣は鉄で出来ている。

 鈍く輝く刃、それこそが格好良い。

 しかし、それを形成するのは鉄という紛れもない金属なのだ。

 何が言いたいのかと言うと、重いのだ。単純に。

 想像の3倍くらい余裕で超過するほどに重い。

 いや、俺が軽く見積もりすぎていたのもあるかもしれないが、それでも重いものは重い。

 ぶん回すどころか、俺の中の理想である軽やかで舞うように剣を振る姿など程遠い。

 ただ振り下ろすだけでも腕の筋繊維がミチミチと悲鳴をあげる。

 ちょっと待って、ホントにヤバいこれ。


 誇張でもなんでもなく腕が上がらなくなってきた。

 ……やめよう。

 元々俺は体が強い方じゃないし、どちらかというと病弱な部類だ。

 体育なんかでは毎回ドベだったし、筋肉もない。


 剣、もっとちゃんと振れたらなぁ……。

 やっぱり俺にはゲームなんて無理なんだろうか。


 思考がマイナス寄りになって、なんだかいたたまれなくなってきた。

 やめたい……。結構切実に思った。


『プレイヤーの欲求減少確認。シャットダウンします』


 すると、突然機械音声が響き渡り、視界が真っ暗になる。


 さっきまで普通に起きてゲームしていたはずなのに、まぶたが勝手に開き、目覚めた時のような倦怠感を覚える。


「ん?終わった?」


 藤真の声が聞こえてきた。

 何が何やら分からないが、どうやら俺はゲームを終了したらしい。

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