12.初依頼

 さてさて、んじゃお片付けしますかね。


 とりあえずまずは大きめのゴミから手を付けることにする。

 持ち上げたり引きずったりして一か所に固めていく。

 大きいものに関しては後で業者が回収に来るらしいので、ある程度よかして放置でいいんだとか。

 それだったら最初から最後まで業者に頼めばいいのに、と思わなかった訳ではないが、資源削減とか考えて自己完結した。

 その辺気にしたら負けだ。


 渡してもらったほうきで落ち葉などを掃いていく。

 うわ、目に見えて綺麗になってくと気持ちいいな。

 この感覚は目が悪くなる以前では味わえなかったものかもしれない。

 ちなみに、俺が今患っている眼病は中三の時に発病してそっからずっと盲目だ。

 と言っても今高校に入学したばっかりだから一年経ったか経ってないかくらいである。


 それ以前は俺も健康な男子中学生であったので、普通に家でゴロゴロしたり友達と遊んだりと親の手伝いなんてほぼしてなかった。

 まぁそれを言ったら今もできてないのだが……。

 手伝いかぁ……そういえば考えてもみなかったな。

 ……うん、やっぱりただみんなの厚意を享受するだけじゃダメだよな。

 いつか何かお礼ができたらいいな。


 そうこう考えているうちに掃き掃除が終わる。

 一か所に溜まった落ち葉を見て一言。


「多……」


 こんもりしてちょっとした山みたいになっていた。

 今からこれをゴミ袋に詰めなければならない。

 幸い大量のゴミ袋とドジョウ掬いみたいな……なんだこれ、掬いかごとでも言うのかな?をもらっていたので落ち葉が余る、なんてことは起こらなそうだ。

 俺が頑張ればの話ではあるが。

 はぁ……やるか。


 中腰で掬いかごを使って、落ち葉をゴミ袋に掬い入れながらえっさほいさする。

 うわ、これ結構重労働。

 油断したら腰が砕け散りそうだ。


 5分ほど無心で掬い入れてようやく元の4分の1に届くかどうかぐらいが無くなった。

 あー、キツ。ちょっと休憩しよう……。

 地面に腰を下ろしてにじんだ汗を袖で拭う。

 ……こうして汗かいたのも久しぶりだな。

 感傷に浸りながら、少しの間休憩する。


「……さて、頑張るかぁー」


 重い腰を上げるために声に出して宣言してみた。

 若干起き上がりやすくなった気がする。

 やっぱり声に出すって重要だね。


 よく分からないやつでお馴染みの掬いかごを手に、未だこんもりする落ち葉に立ち向かう。

 依頼達成をギルドに報告しに行けたのはそれからおよそ30分後だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る