15.魔法を使いたい!
あれから数日経って腰痛もとうに治った今日。
ふと思う。
『魔法を使ってみたい』
チュートリアルで魔法陣で火を起こしたが、それっきりだ。
発射したり自由自在に操ったりしてみたい。
そう思うとだんだん我慢できなくなってきて、ふと今日も来ていた目の前のグラさんに聞いてしまった。
「あの、魔法を使ってみたいんですけど、何か知りませんか?」
しまった、と思う。
店長から教えられていたお客対応マニュアルではこちらからお客さんに話題を振るのは好ましくないとされている。
幸いその理由が他のお客さんがいる場合に捌ききれなくなるからなので、今は店内にグラさん以外いないのでセーフだ。
ただ、意図したものでは無かったので、一応気をつけていかないと、と自身を戒める。
「──魔法か。それなら知り合いの本屋に魔導書を扱ってる奴がいる。紹介してやろうか?」
「魔導書?魔導書って魔法陣を書いて発動させる武器なんじゃないんですか?」
自分がチュートリアルで扱った武器の名前が出てきて驚く。
「あぁ、確かそんな使い方もあったな。まぁ、詳しいことはその本屋に聞けばいいさ。なんだったら納品ついでに今から連れてってやるから、親父さんに許可もらってこい」
「へ?……あ、分かりました!」
突然のことに一瞬呆けてしまったが、取り直して店長に許可を取りに行く。
「店長!ちょっと出てきてもいいですか!」
「おう、分かった。あんま遅くなるなよ!」
「了解です!」
うちの店長はこうやってバイト途中の退出も許してくれるのだ。
流石に1時間超えたら時給を引かれるが。
ちなみに店長の遅くなるなよは昼までには帰ってこいよ、という意味だ。
「許可もらいました」
「おう、じゃあ行くか」
グラさんはパンの入った袋を片手に俺に背を向けて歩き出す。
いつもは見送っていたその背中を今日は追いかけて行った。
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