概要
——その時、確かに僕らは生きていた。
夕日に染まる病室の中、無数の魚を目にする。
横たわる人を取り囲むような光景は子供ながらにも異様だと分かった。
立ちすくむ自分に触れてはいけないよと祖母は言った。
それ以来、時折見るようになった透明な魚。
他の人には見えないらしいそれは、今日もまた電車の中でフワフワと浮遊している。
それほど混んではいない電車の中。降車口付近に背を預けて立ちながらそれを眺める。
特に何をするわけでもない。
害があるわけでもない。
だから自分はいつも、それをないものかのように過ごしていた。
ただ一つ違ったことは。
その日、魚に触れたこと。
それを機に、一ノ瀬和真は自身と同じように魚が見える人と遭遇する。そして、不審な事件を追う中で奇妙な出来事に巻き込まれていく。
横たわる人を取り囲むような光景は子供ながらにも異様だと分かった。
立ちすくむ自分に触れてはいけないよと祖母は言った。
それ以来、時折見るようになった透明な魚。
他の人には見えないらしいそれは、今日もまた電車の中でフワフワと浮遊している。
それほど混んではいない電車の中。降車口付近に背を預けて立ちながらそれを眺める。
特に何をするわけでもない。
害があるわけでもない。
だから自分はいつも、それをないものかのように過ごしていた。
ただ一つ違ったことは。
その日、魚に触れたこと。
それを機に、一ノ瀬和真は自身と同じように魚が見える人と遭遇する。そして、不審な事件を追う中で奇妙な出来事に巻き込まれていく。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!きららかに沈む
清涼な水に、心身を浸した心地がした。
余人には見えない魚。それを見る和真の世界は、スイミーの絵本の優しい水彩画を彷彿とさせる。
派手さはないものの、丁寧に綴られる文章。言葉の一つ一つに、作者の心が籠っているような温もりを感じて安堵する。
ひりひりと痛むことのない傷薬。
この作品は動か静かと言えば静であり、ゆえにこその柔軟がある。受け止めてくれる気がする。
一方で、痛いものは痛く、美味しいものは美味しく、嬉しいものは嬉しく、きちんとした描写に抜かりがない。没頭できる。
この世界の創造主である作者と、作品に、両手いっぱいの花束を贈る。未来に幸あれ。
あなたも、この作品を読めば、きっときららかに沈…続きを読む