第5話 実技訓練①
朝用意された服に着替えて洗面所に向かい身支度を整えて食堂に向かった。
一応詩ちゃんの部屋をノックして起こしてきたがどうも低血圧みたいで、
低い声で先に行ってて欲しいと言われた。
食堂につくとテーブルがいくつか並べられていて、
蒼君の名前が書いてある紙が置いてあるテーブルに座って皆を待つことにした。
「おはよう」
「ちぃっす」
「おはようございます」
男性陣が食堂について挨拶をしてきたので私も挨拶で返した。
「詩さんは来ないの?」
「一応声をかけて来たけど低血圧っぽくて」
「女性は多いよね、その点竜司はいつでも無駄に元気だ」
「無駄ってなんだよ、元気に無駄はねーよ」
「昨日から気になってたんですけど、蒼君と竜司君てここに来る前から友達なんですか?」
「記憶は無いけど同じ制服を着てて近くにいたし、気が合うんで多分だけど友達だったのかな」
「分からねーぞ、実は蒼は俺の親の仇だったかも知れんし」
「......斬新な設定だな」
「大和君は、知り合いとかいなの?」
「同じ制服の人は二人いましたが全く何の感情もわきませんでした」
「そっか私と同じ制服の人はいなかったけど、仮にいても大和君と同じ様に何とも思わないかも」
大和君は普段から無口だけど割ときっぱり話すので気がるに話しかけられる。
「おはよーうございます」
「おい、詩ちゃんが浮遊霊みたいな感じでこっちに歩いて来るぞ」
竜司君の言い方に私達は思わず笑ってしまった。
確かに右へ左へとフラフラしているし、バランスを取っているのか分からないけど、
両手を前に差し出して歩いて来る姿は、浮遊霊に見えなくなもない。
「詩ちゃん大丈夫?」
「はい、へーいきです」
詩さんが席につくとテーブルに食事を運んで来てくれた。
黒パン、チーズっぽい物、スープ、サラダと創造していたより豪華な食事だった。
「うお、異世界飯テンション上がるわ、頂きます」
早速食べ始める竜司君に習って私達も食事を始めた。
「黒パンかてー」
「竜司君、黒パンは手でちぎってスープに浸して食べるのが常識ですよ」
「どんな常識だよ、てか大和は何でそんな事を知っているんだよ」
「…フフフ」
私達は、大和君に言うとおりに食べようとしたけど、確かに硬くて手でなかなか手でちぎれなかった。
「二人はちぎらずに、そのままスープに浸して食べた方が良いかもね」
私と詩ちゃんはちぎる事を諦めて素直にスープ皿にパンを浸して食べた。
「あ、美味しいかも」
「硬さはともかくとして、味は良いですね、そんなに高くないならここを出た後も食べたいです」
私とやっと覚醒した詩ちゃんは、黒パンの味に好感を持った。
男性陣は本当に噛んでますかと疑ってしまう位のスピードで食べ終えていたけど、
私と詩ちゃん、特に詩ちゃんは比較的ゆっくり食べ終えた。
「琴音さんはこの後はざがくだったけ?」
「はい、皆は前衛職と後衛職に別れて実技訓練ですね、頑張って下さい」
「ありがとう、琴音さんも頑張ってね」
「はい」
昨日の広間の入り口の前まで来ると入り口で京さんが待っててくれた。
「遅くなってすいません」
「良いわよ、はいこれ」
京さんが錬金術の本と回復ポーションの素材となる薬草と水の入った瓶と空の試験管が十本収まったベルトをくれた。
「ありがとうございます」
「良いのよ、初期支給品扱いだし、錬金術用の部屋はこの砦の中に無いから、
錬金術は食堂でやってね、何か困った事があったら私はここにいるから相談しに来てね」
「はい、よろしくお願いします」
私は食堂に戻って錬金術の本を読んでみた。
初期の錬金術は比較的感嘆で片手に素材、片手に完成品を収める容器を持って、
完成品のイメージをしながら錬金と唱えるだけで良いらしい。
ベテランで複雑な錬金をする場合は錬金釜という物を使うみたいだけど、
まだまだ見習いだし随分先の話しになるだろう。
冒険者にはいないけど、現地住民の人の中には錬金術師もいるらしく、
初めは簡単な錬金術でも成功率は、四割~六割程度らしい。
一週間は一日で十個分の回復ポーションの素材をくれるみたいなので、
昨日一日分を除くと、二十四~三六個の回復ポーションが出来そうだ。
初めの頃は弱いモンスターと戦うと蒼君が言っていたので何とかなりそうだけど、
足りなくなったら私の取り分から素材を買って準備しようと思う。
私の場合は装備はそこまで必要で無いので多分だけど大丈夫だろう。
私は雑念を払って本に書いてある回復ポーションをイメージして錬金と唱えた。
私はイメージが終わり集中する為に瞑っていた目を開けると、
空だった試験管に回復ポーションらしき液体が入っていた。
どうやら成功したらしい、最初の錬金が上手く言って良かった、幸先が良い。
私はこのいい流れに乗って次々に錬金をしていくと二十分ほどで材料が無くなった。
結果は全部成功だった。
先住民の人が書いてくれた本には馴れないあいだは成功率は、四割~六割程度って書いてあったのに......
私はこんな所で幸運を使った様で少しだけ怖くなった。
あれ、でも待ってそう言えば加護に錬金術の極意って言うのがあったから、
加護のおかげかも知れない。
いきなりやれる事が無くなってしまったので私は京さんの所に相談しに行くことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます