第11話 初討伐①

「あら、まだ貴方寄生しているの?」

今日の討伐場所を決める為に砦に入ってすぐに聖女とあってしまった。

「寄生しているつもりは無いですし、まだも何も今日が初めての討伐なんですが」

「貴女は実技訓練中にずっと座学をさせられて何も感じなかったの?」

「錬金はずっとやっていましたが?」

「モンスターを前に錬金をするつもり?」

「モンスターと戦う際に使うアイテムの錬金をしていたんです」

「アイテムなんて売店で買えば済むでしょ」

「売店で売ってるのは、回復ポーション位なので」

「そうよね、回復はヒールを唱えれば良いのだからポーションは不要よね」

「私はヒールを唱えられないんで、ポーションは必要ですね」

「だから寄生しているって言ってるんですわよ」


「華蓮(かれん)さん、うちのパーティメンバーを悪く言わないでくれ」

聖女の暴言に耐えかねて厳しい顔で蒼君が注意してくれた。

「優しさは美徳ですが、甘やかし過ぎるのは良く無いですわ」

「俺は自分を優しいと思った事はないよ、どちらかと言うなら超合理主義だと思う。

それに琴音さんに抜けられると本当にパーティ戦力が落ちてしまうんだ。

琴音さんがうちのパーティから抜けたいと思うような発言は控えて欲しい」

「もういいわ、今日が初討伐何でしょ、すぐにその女の無能っぷりがわかるから」

そう言って聖女は立ち去って行った。

「すげーな、俺聖女抱きしめるか、ハリネズミ抱きしめるか聞かれたら、迷わずハリネズミ選びそうだ」

一瞬暗くなりかけた雰囲気を竜司君の一言でガラリと変わった。

「さああんなの気にせずに行こう」


蒼君を先頭に売店の奥にあるカウンターに進んだ。

カウンターには、肩までの金色の髪の綺麗な女性が姿勢良く立っていた。

「すいません、今日初討伐で狩場の指定をお願いしたいんですが、ここであってますか?」

「はい、あってます、採取じゃなくて討伐でよろしいですか?」

「はい、討伐でお願いします」

「でしたら砦近くの日帰り可能でモンスターは出現モンスターはゴブリン、

ただし集落を築いていない流れのゴブリンなので出現頻度は落ちてしまう場所がありますが」

「理想的な場所ですね、そこでお願いします」

「分かりました、討伐から帰って来たら報告を忘れないで下さい。

報告が無いと未帰還扱いになり、捜索隊が編制されます。

新人の冒険者の方は一ヶ月免除されていますが、捜索隊の報酬は皆様の互助金で報酬が支払われますので」

「分かりました、日帰りしますので今日中か明日の午前中までには報告をします」

「お願いしますね、簡易地図をお渡ししますので持っていって下さい、討伐が終わったら返却をお願いします」

「はい、大切に扱います」


私達は地図に従い歩いて一時間かからない程度の場所にある森林にたどり着いた。

「ここからは、僕が先頭を歩くから少し離れてついてきて」

「頼む」

森林入って十分ほどで大和君が立ち止まり指を刺した。

「ここから先の右奥に三匹位固まってモンスターがいる」

「回避して別のモンスターを探そう」

「分かった」


それから更に歩いて大和君が今度は左方向を指差した。

「この先に二匹モンスターがいる、さっきと同じ位の強さ」

「了解、俺がここまで釣ってくる、

想定外のリンクが発生したら叫びながら戻るんで迷わず撤退して欲しい」

皆は緊張した顔で頷いた。

蒼君は音を出来るだけたてないように繁みの中を進んで行った。

「来るぞ」

その言葉に私達は腰を少し落とし身構える。

繁みの中から蒼君が飛び出し振り返ると人間の子供位の背の高さで、

緑色の肌をした小鬼が飛び出してきた。

『挑発』

挑発スキルでゴブリンは完全に目標を蒼君に定めた。

竜司君と大和君がゴブリンを攻撃するが相手が小さく素早い為に中々有効打が与えられない。

この世界最弱の魔物とはいえ、私達は初戦闘で全員LV1なのでゴブリンの方が格上。

幸いな事に速いは速いが攻撃力はあまりないようで、深刻な怪我は誰もしていない。

暫らく戦闘が続くと少しずつゴブリンは弱っていきもう少しで討伐出来るだろうと思った矢先だった。


「もう一匹近付いてくる」

戦闘が長引いたせいで残りの一匹も気付いたようだった。

「詩さん、拘束お願い」

「はい」

先程ゴブリンが出てきた繁みからもう一匹のゴブリンが飛び出してきた。

しかも今度のゴブリンは片手に短剣を握っている。

詩ちゃんはまだ呪文の詠唱中だ、私は咄嗟に詩ちゃんを守ろうとしたが、

大和君が横から牽制してくれた。

『氷縛』

詩ちゃんの詠唱が終わり魔法が発動して氷の薔薇のつるがゴブリンを束縛する。

まだレベルも低い為に拘束時間はさほどない、一枚また一枚と薔薇の花弁が散ってしまう。

私は左腰に下げていた黄色のボトルのお腹を押して中の液体をゴブリンに浴びせた。

液体を浴びたゴブリンは、ピクピクと痙攣してまともに動け無くなったようだ、上手くいった。

『ソードスラッシュ』

竜司の声がした方をみると最初のゴブリンが倒れた。

前衛職は全員で残りのモンスターを囲んだが痙攣してまともに動けないゴブリンは、

直ぐに倒す事が出来た。

「大丈夫、近くにモンスターの気配無し」

大和君の声に私達はホッとして、その場に座り込んだ。

「怪我した人いますか?」

私の声に皆が首をふる、全員怪我はしてないようだ。

「琴音さん、それ何ですか?」

「マスタードボトルですが中身は麻痺薬を溶かした液体が入ってて、

ボトルのお腹を押すと液体が1メートル位飛び出します」

「すげーな、錬金術師ってそんな戦い方するんだ」

「いえ実は実技訓練中に皆さんを待っている間暇だったので、

調理場を見てたら料理長がマスタードボトルを力一杯に押してしまって、

マスタードだらけになっていたので思いつきました」

皆は声を出して笑いだした、竜司君はツボに入ったらしく涙目で笑っている。

「ち、ちなみに右側の緑のボトルは?」

「回復ポーションが入ってます、直接飲むより効果は低いですが緊急用です。

間違えない様に違う色にしました」

「ガンマン琴音ちゃんだ」

「結構必死だったんですよ、あんまりからかうと黄色のボトルの中身かけちゃいますよ」

「ごめんごめん、それだけはご勘弁」

あまり本気で反省している様には思えなかったけど、実際私も怒って無かったので許してあげた。

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