第6話 実技訓練②
私は再び広間に向かうと京さんは、実技訓練の手伝いをしていた。
前衛職っぽい人の指導の手伝いをしてるようなので、京さんも前衛職なのだろう。
邪魔するのも嫌だったので遠目で見学していると京さんはこちらに気づいてくれた様で、
もう一人のベテランの人と少し話してからこちらに小走りで近付いて来てくれた。
「琴音ちゃん、何かあったの?」
「お忙しい所すいません、実は錬金術の素材が終わってしまって」
「あれ可笑しいな、もっと時間がかかるって聞いてたんだけど、
まあ良いか、そう言えば昨日分の素材を渡して無かったわね。
ちょっと売店にいって来るからここで待ってて」
「良いんですか?」
「支給品、支給品、どうせ国から経費で落ちるから良いのよ」
「ありがとうございます」
大して時間が掛からずに、最初に貰ったセットを京さんがくれた。
「ちなみにベルトと試験管はこれが最期の支給品だから壊さないように気をつけてね」
「はい、気をつけます。
ちなみになんですが、完成した回復ポーションと素材って交換できますか?」
「今新人が来たばかりだから比較的高く売店で買い取ってくれるわよ。
回復薬十個で十五個分の素材と試験管で交換してくれるわ、
次は第一波何でそれ以降だとただの回復ポーションだと心許なくなってくるんで、
段々と相場は落ちて来るけど」
「分かりました、色々ありがとうございます」
「良いのよ、気にしないで」
そう言って京さんは実技訓練に戻って行った。
私は貰った素材持って食堂に向かった。
回復ポーション作るペースが速いと言われたが、それも加護のおかげも知れない。
私は再度食堂で回復ポーションを作り始めた。
馴れたせいか最初の頃よりも早く素材が無くなってしまった。
今回も一回も失敗しなかったので二十本の回復ポーションが午前中だけで出来上がってしまった。
直ぐにでも売店に行こうかと思ったけど、あまり目立つのも不味いような気がしたので、
残りは午後にする事にして、錬金術の本を読み進める事にした。
本を読むと錬金術師は錬金するたびに慣れてきて、
ある程度馴れるとより上位の錬金が出来るらしい。
『ステータス』
名前:琴音(ことね)
LV:1
職業︰錬金術師見習い LV3
スキル:回復ポーション作成
能力:格納
???
???
加護:錬金術の極意
私は馴れる、馴れないがステータスで確認出来るのか知りたくて、
ステータスを確認すると錬金術師見習いLVが1から3に上がっていた。
ステータスで実際に上達が確認出来るとモチベーションが上がる。
皆が来るまで食堂のテーブルで待っていたがお昼を過ぎても誰も来なかった。
どのみち食堂でしか錬金の許可は出て無いので食事時間が終わるまでは、
本を読み進めるしかないのだけど、疎外感が半端なかった。
「待っててくれたんだ」
「蒼君、でもまだ詩ちゃんが来てないの」
「詩さんは此処に来る途中少しだけ話せるタイミングがあったから声かけたけど、
もう少しかかるんで先に食べてて欲しいといわれたよ」
「もう随分お昼を過ぎてるけど何かあったんですか?」
「聖女の子が同じ回復職の女の子泣かせてしまったみたいで先輩も含めてフォロー中みたい」
私にだけ嫌いだから強くあたって来るのかと思っていたけどどうやら違うみたいだった。
自己顕示欲モンスター、なぜあんな人が聖女に選ばれたのか不思議で仕方がない。
「腹減ったー、肉肉肉肉肉~」
私達のテーブルでは竜司君が荒ぶっていた、まあ食べ盛りだし仕方がないよね。
果実を絞った物を薄めたジュース、黒パンは二個までおかわり自由、
鶏肉っぽい感じのステーキ、スープがお昼ご飯のメニューだった。
竜司君はガツガツ食べて行った、もはや黒パンの硬さにも慣れたのかそのまま噛みちぎっていた。
「消えた」
「ちゃんと竜司君が責任持って食べられるなら、私の分おかわりしてあげようか」
「あれ女神じゃね?」
「待て竜司、一個ずつな」
「蒼君もお腹空いてたんだごめんね」
「本来なら盾職なんでタンパク質を多く取るべきなんだけど、
何せ運動量が多すぎてエネルギーが足りて無い感じかな」
私はチラッと大和君をみたら大和君は盗賊職で、
そこまで体力勝負で無いらしく自分の分だけで大丈夫と言っていた。
私は自分の分の黒パンを追加で取りに行って二人に手渡したが、
二人はあっという間に黒パンを食べてしまった。
「もう少しゆっくり食べた方が同じ量でもお腹一杯なるよ」
「琴音さん、俺達も流石に分かってはいるんだけど、気がつくと黒パンが無くなっているんだ」
「妖精さんの仕業じゃね?」
竜司君がちょっと局所的に弱い様な発言を真顔でしてきたので、
今後も私の食べられない分は二人にあげようと心に決めた。
座学と錬金しかしてないので太るのが怖いし。
結局後衛組が戻って来れたのは、それから二十分程度後で暫らく食堂は錬金の訓練に使えそうに無かった。
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