第2話 異世界転生①

琴音は気がつくと学校の制服を着て見知らぬ広間に座っていた。


一瞬パニックになりそうだったが何とか自制して周りを見回す、

同年代の男女二十人位が琴音と同じ様に制服を来て座っていた。

自分と同じ制服を着ている人もいれば、違う制服の人もいた。

大半の人はまだ目が覚めていないようなので、

何とか記憶を取り戻そうとしたが無駄だった、

自分の名前以外は日本という国に住んでいた事や

その国での常識的な知識しか思い出せず、

家族の有無や何故自分がここにいるのかは全く思い出せない。

まるで頭の中で霧がかかったようだった。


だがこれだけの人数の同年代が似たような境遇にいた事で少しだけ安堵する事が出来た。

今自分が騒いで目立つのは良くない様に思ったので、

皆が目を覚ますまでじっと待っていることにした。


時間が経つと少しずつ目を覚ます人が増えてきて、

比例して騒がしくなっていったので十分もすればあらかた目を覚ます。


暫らくするとファンタジーの冒険者の様な格好をした、

二十代前半の若者が広間に入ってきて全員の前に並んでいった。

「ここはどこなんだ」

「家族の元に帰して下さい」

自分と同じ様にここに連れて来られた人達の中から、

何人かが色々不満や疑問を投げつけていった。


「静かに」

広間に入ってきた人の中で、

立派な鎧を身に着けた人がそう言うと、

潮が引くように一斉に静かになった。

「これから説明はするが、まず第一に我々も君達と同じ様に数年前に気がつくとここにいた。

だから、何処から何の為に連れて来られてどうすれば帰れるのかは分からない。

ましてや我々が君達を無理やり連れてきた訳でもない」


広間に入って来た人は一気にそこまで言うと周りを見渡して、

ある程度理解出来ている事を確認すると更に説明を続けた。

「我々はこの国の国王に頼まれてこの世界に来たばかりの君達を一週間支援に来た。

この人数を一度に相手にすると収拾がつかない。

五人一組でパーティを組んでパーティのリーダーを決めてくれ。

頭の中でステータスと唱えると自分の職業が分かるので、

後から説明するが、パーティの目的はモンスターと戦う事だ。

その為にバランスの良いパーティを組んで欲しい。

今から一時間後にまた来るのでそれ迄に決まっていない場合は暫定的にこちらで決める」

そう告げると後から広間に入って来た人達は、広間から出ていった。

皆先程の言葉に従い自分の職業を確認していく。


『ステータス』

名前:琴音(ことね)

LV:1

職業︰錬金術師見習い LV1

スキル:錬金、回復ポーション作成(下)

能力:格納

   ???

   ???

加護:錬金術の極意


モンスターと戦うも何も回復ポーション作成って戦闘出来そうにないんだけど......

琴音は自分の職業を確認したが、職業的に戦闘は無理だとの結論に至った。

そんな事を考えていると、一人の男子生徒から声がかかった。

着ている制服から自分とは違う学校みたいだ。

「ねえ君職業は何?」

「私は錬金術師見習いみたいです」

「へ?錬金術師って.......スキルとかは何かある?」

「回復ポーションが作れるみたいです」

「そ、そうかありがとう、頑張ってね」

そう言うとその男子生徒は次に近くにいた別の派手目の見た目をした女子生徒に声をかけた。


「ねえ君職業は何?」

「私は聖女みたいですわね」

その派手めな女子生徒はさも誇らしげに周りに聞こえる様にそう言った。

その言葉を聞くと周りから感嘆の声が聞こえる。

聖女と言えば回復職でも上位、これからモンスターと戦うのであれば、

是非にでも自分のパーティに入って欲しいのだろう。

その女生徒の周りには人だかりが出来た。


それから何人かは声をかけて来たが、

皆琴音の職業が分かると直ぐに離れていった。


もう良いわ、残り者のパーティに入れて貰おう、嫌がられるだろうけど


時間が経って少しずつパーティが決まって行く中で、

自分から声をかける気もおきないので琴音は時間が経つのを待った。

「ごめん、俺は蒼(あおい)って名前で騎士見習いだけど、

まだパーティが決まってないなら職業を教えてくれないかな」


琴音は自分の職業を知れば、またどうせ直ぐに離れていくのだろうと思いながら、

声がかけられた方に振り返ると顔が見えなかった。

少しみあげると背が高く彫りの深い顔立ちの男子生徒が経っていた。

「私は琴音と言います、職業は錬金術でまだ能力も一つしか分からなくて加護も一つしかありません」

「へぇ、今俺の他には竜司(りゅうじ)って剣士見習いと組んでるんだけど、

良ければ一緒にパーティを組んでくれないかな」

「え?」

自分の職業を知れば落胆して直ぐに離れていくだろうと思っていたけど、

何か納得した雰囲気でむしろ食い気味にパーティに誘ってくれた。


同情?

そんな感じでも無かった、勘違いかも知れないけど寧ろ逃してたまるかみたいなオーラを感じる。

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