第17話 おまけ2ー② 初めてのオーク討伐とオークとんかつ

 紹介して貰った場所までは、徒歩で向かう事にした。

 砦から離れた場所に行く場合は、有料で馬車をレンタルするらしいけど、

 いつも行っている場所より多少遠い位で徒歩でも十分日帰り可能だ。


「琴音ちゃん、お願いがあるんだけど」

「何ですか?」


 砦から一時間程雑談混じりに歩いていたら、

 唐突に竜司君がきりだして来た。


「とんかつ作れるなら作って欲しーな」

「とんかつですか、材料も揃いそうですし、複雑な料理でも無いので作れますよ」


 オーク肉に小麦粉をまぶして売店で売っていた大きな卵にくぐらせて、

 黒パン粉をつけてオークラードで揚げるだけ。

 黒パン粉を作るのは力が要りそうなので男性陣に任せよう。


「マジでやった!!」

「俺もとんかつ好きなんだよな」

「異世界メシと言えばマヨネーズにとんかつですよね」


「ただしソースはお高いのでありませんから、

 お醤油か柑橘類を絞って食べるしかないですよ」


「平気、平気、俺塩派だし」

「俺はソースが無いなら柑橘類かな」

「僕は断然醤油派です」


 とんかつの話でキャツキャと盛り上がる男子達、

 視線を詩ちゃんに向けると、詩ちゃんは少し笑っていた。


 まだオーク退治して無いどころか、狩場についてさえいないのにな。

 捕らぬオークの肉算用である。


 それから更に三十分程度歩いて、教えて貰った狩場についた。

 ここからは、油断すると致命傷になりかねない。

 モンスターとの生命のやり取りだ。


 大和君があたりを伺いながら慎重に森林の中を進んで行く。

 私達は、少し離れて後からついていく。

 この森林に罠は恐らくないだろうけど突発的なアクシデントに、

 盗賊は回避出来ても、私達は反応仕切れないケースがあるからだ。


 かなり歩いたがオークは、見つからなかった。

 事前に詩織さんに聞いていた通り出現頻度は低いみたいだ。


「大和止まって」


 ふいに蒼君が先を歩いている大和君に声をかけた。


「どうしたの?」

「これ以上、森の奥に進むのは危険だ、

 今来た道にオークが出るかも知れないし少し引き返そう」

「分かった」

 大和君は注意を怠らずに、振り返ると来た道を戻るように歩き出した。


「モンスターの気配がする、ゴブリンより強い一匹みたいだ」

「よし狩ろう、俺がここまで釣りで引いて来る、何時もの隊形で待っててくれ。

 不味いと思ったら声を出してくれ、タイミングをみて撤退する、殿は俺が引き受ける。

 各自必要なポーションを飲んでくれ」


 蒼君と大和君と私は、私が新たに覚えた防御力上昇ポーション

 竜司君は、攻撃力上昇ポーション

 詩ちゃんは、MP回復ポーションを腰のベルトにさした。


 能力上昇系ポーションは、複数飲んでも効果は変わらない。

 回復ポーションは、普通に効くけどそこそこ量があるので、

 お腹がいっぱいになってしまう為、詩ちゃんは飲むのを控えた。


 蒼君がモンスターを連れて戻ってきた、戦闘の始まりだ。

 この前私が想像したオークとはかなり違った見た目をしていた。

 身長は蒼君と同じか少し大きいていど、緑色の肌に口には牙があり、

 お腹はでっぷりと太っていて動きはそれ程速くない。

 片手に持った太い木の棒を振り回し襲いかかって来た。


 蒼君が挑発でオークの注意を引きつける。

 他の前衛はスキルを使用せずにオークに攻撃していく。

 オークの敵意(ヘイト)が蒼君に安定して固定するまで、

 強力なスキルは使わない、詩ちゃんもまだ呪文を唱えていない。


「よしそろそろ良いぞ」

 オークの敵意が安定したみたいだ、余程のオーバーアタックをしない限り、

 蒼君からモンスターが剥がれる事は無い。


『パワーストライク』

 パワーストライクは、竜司君が覚えた新スキル。

 鋭く横に薙ぎ払うソードスラッシュと違い、

 力強く上から下に剣を振り下ろし敵に剣を叩き込む技。

 攻撃力上昇ポーションを飲んだ一撃は、オークの敵意を瞬時にあげて、

 蒼君から剥がれそうになる。


『盾撃(シールドバッシュ)』

 蒼君が覚えた盾職の攻撃スキル。

 盾を前面に体当りする技、盾での攻撃の為鋭さは無いが、

 盾の広い面積での衝撃で相手を一瞬硬直させる事が出来る。


「詩さん」

「はい!」


『氷投槍(アイスランス)』

「ブギィ」


 詩ちゃんの放った氷の槍がモンスターにささり、

 豚の悲鳴の様な声を出して叫ぶ。


 詩ちゃんの新スキル。

 氷の槍をモンスターに向かって放つ。

 鋭利な攻撃はオークの様に脂肪で覆われたモンスターに相性が良い。

 欠点と言えば、詩ちゃんのいる後方から直線の攻撃なので、

 今みたいに連携を取るか、詩ちゃんが動いて当てるしか無い事。


 大和君も新スキルを覚えているけど、

 短剣スキルなので肉厚のモンスターには向いてないらしい。

 私に短剣に属性をつけて欲しいと頼んだのはその為だった。


 かくゆう私は更に役にたてていない。

 所詮マスタードボトルで液体をかける攻撃なので、

 味方が乱戦している時に使える技ではないのだ。


「よし、討伐完了」

「周囲にモンスターの気配なし」


 蒼君の戦闘終了の合図を聞いて、大和君が探知スキルで安全を確認する。

 敵を倒した直後の油断が一番危険らしいからだ。


「よっこいしょ」

 私はオークに触ってオークを格納する。

 別段持ち上げている訳でもないので、よっこいしょも何も無いのだけど、

 何となく重そうな物を格納する場合は口に出してしまうのだ。


「そこまでは強く無かったな」

「ゴブリンより、頑丈で力もあったけど、その分ノロマだし、チョイ強い程度じゃね」

「連携も綺麗に決まりましたしね、魔法撃ちやすかったです」

「そうだね、だけどやっぱり力推しで来るから、俺か竜司が足止めしないとまだ辛いかな」


 皆で戦闘後の感想いい終えたので、オークを探しに歩き出した。

 戦っている時間より、探している時間の方が遥かに長いけど、

 生命を大事に、これ大切。


 その後運良く二匹倒せたので私達は砦に帰還した。


 オーク三匹で九金貨、傷みが少ないのと格納で保存状態が良かったので、

 初回討伐祝い込みで十金貨貰えた。

 一人当たりでも二金貨、二十万円だ!

 美味しい、美味しすぎるオーク。


 しかもとんかつ用のお肉とラードもお祝いに貰えた。

 今日はとんかつパーティだ。


 オーク肉を叩いて繊維を壊して柔らかくします。

 お肉に下味をつけます。

 小麦粉をまぶして溶き卵にくぐらせ、黒パン粉をつけます。


 フライパンで熱したオークのラード油で揚げます。

 大量に入れると温度が一気に下がってしまうので一個ずつ入れましょう。


 野菜は高いけど、キャベツっぽい野菜を千切りにした物をそえます。

 アサリのお味噌汁があればパーフェクトなんだけど、その様な物はありません。


「はい、完成です、皆で食べましょう」


 おお~と皆から歓声があがった。

 食べてみた感想としては......


「美味い」

「最高」

「美味しい」

「美味しいです、想像したのと違いくどくなく、上品なお味ですね」


 そうなのである、オークの油なのでもっとギトギトした味になるかと思っていたのだけど、

 上質な黒豚のラードで揚げた様な上品な味がする。

 お肉自体も柔らかくて臭みがまるでない。


 売ってよし食べて良し、その後調子にのってオークを狩りまくった私達は、

 砦でオークハンターと呼ばれてしまったのだった......

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【短編読み切り】錬金術師のすすめ 〜異世界転生したけど生産職でした 忠野雪仁 @yukihito_tadano

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