第16話 おまけ2ー① お肉を売ってお金を稼ごう

 砦のカウンターで詩織さんがニコニコ笑っている。

 私も負けじとニコニコ笑い返している。


 ゴブリンも余裕を持って倒せるレベルになったので、

 砦で別の狩場を紹介して貰う事にした。


 経験値的に物足りないのと、

 倒しても魔石と希に短剣が手に入るくらいで、

 細々と生活していく分には問題ないけど、

 波がくる前に装備を整えるだけのお金を稼げない。


「私、少し耳が悪いみたいでして、もう一度教えて貰えませんか?」

「はい、お仕事なので何度でも。

 次の討伐モンスターは、オークがお勧めです」

「じゃあ何でこの前あんな話しをしたんですか!」


「この前お話したモンスターは、亜種のオークソルジャーですよ?」

「オークは、オークじゃないですか」


「オークもゴブリンと同様に集落を形成します。

 亜種はある程度の大きさの集落でしか生まれません」

「でも普段ならいない所にも出現する事があるんですよね?」

「はい、討伐に絶対はありませんから。

 ですがそれはどの場所でも起こり得る事です。

 寧ろ今回ご紹介する場所は、最新の情報でもオークの出現頻度が低い場所で、

 近くに集落はないでしょう」


「討伐適正レベルは、どれくらいですか?」

「1対1の戦いでしたら、職業やスキルにもよりますが、

 安全マージを取ってレベル7~9位が推奨ですね。

 五人パーティならレベル4もあれば十分です。

 特に皆さんのパーティは、バランスも良く能力も充実しているので、

 事故でリンクしても二匹まででしたら、何とかなると思います」


「他にお勧めのモンスターはいないんですか?」

「うーん、強いて言えばゴブリンの亜種ですが、

 集落が近くにある可能性があるので、オーク単体より危険ですよ?」


「琴音さん、大丈夫ですから、この前の詩織さんの例えは極端な例で、

 普通は大和の探知で直前まで分からないほど、オークは素早く移動しないよ。

 それに中級回復ポーションも沢山持って来てくれるんでしょ?」

「はい、ここの売店に並んでいる以上持って行きます」

「う、それはどうかと思わなくもないけどなら安心だね」


 周りの皆を見ると、ウンウンと頷いているので、

 私もどうにか冷静になれた。

 前回の詩織さんの話を聞いた後、

 戦った事もないのにオークに軽いトラウマがあったのだ。


 私が納得した事を確認して、詩織さんは更に話を続けた。


「後は、オークはお金が稼げるんですよ、

 冒険者の人気がありませんからいつも品不足気味ですし」

「お金になるのに人気無いんですか?」

「ええ、オークの素材で一番高く買い取れるのがお肉なんですよ。

 でもそのまま持って帰るには重いし、

 その場で解体するには巨体なので時間がかかりますし、

 血の匂いで別のモンスターがリンクして来るので。

 ドロップは魔石くらいですし、一応牙も買い取っていますが安価ですので」


「ちなみに一体まんまだと、おいくら位ですか?」

「大きさや痛み具合にもよりますが、三金貨(一金貨十万円)位ですね、

 結構お肉の量がとれますから。脂肪も上質のラードになりますしね」

「ウハウハですね」

「はい、ウハウハです」


 私はポーションを売店に下ろす都合上、

 格納の能力の話しを詩織さんには教えていた。


 流石に何十本もガチャガチャと持ち運ぶと瓶が割れそうで怖かったのだ。

 私ならオークを処理しなくてもまるまる格納して持ち帰る事が出来る。


 今回紹介して貰える討伐場所は安全第一の場所で、

 一日討伐しても、1~3体位のオークを見つけるのが精々らしいけど、

 それでもゴブリンとは比べ物にならない稼ぎだ。

 これで皆の装備を揃える目処がたった。


 蒼君は先輩のお下がりのお気入りの革鎧があるのだけど、

 盾は最初に支給された盾なので良い盾が欲しいらしい。

 盾職と言うだけあって、盾にはこだわりがあるみたいだ。


 竜司君は、剣を二本買うと言っていた。

 剣の長さや重さがあまりに違うと双剣の能力がいかせないらしい。


 大和君は、新しい短剣を買うので私に属性付与をして欲しいらしい。

 錬金失敗しても壊れないか心配だ......


 詩ちゃんと私は、今ひとつピンと来ないので、

 実際に買うときになったら決めようと思っている。

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