第14話 才ある錬金術師と盾職のプライド 蒼視点

「蒼君、先輩のお下がりの防具使いやすいみたいですね」

「凄い使いやすいよ、使い込んでいる革鎧がこんなに良いとは思ってなかったよ。

特に鎧表面が良くメンテされて鞣されてて、ゴブリンの短剣を弾くと言うより、滑っていくんだ」

「良かったですね、色も少し黒っぽい革で格好良いです」

「琴音さんのおかげだね、ありがとう」

「もう、何度もお礼を言わないで下さいね」

「でも、右手を守る小手に前面にプレートがついた鉢巻まで貰えたからね」


その日の討伐も順調にこなして、話をしながら砦へと帰ってきた。

「よう、蒼」

「先輩、こんにちは、防具ありがとうございました。」

「あれは交換だから良いって、所で蒼、この後時間取れるか?」

「俺一人ですか?」

「ああ、お前一人が良い」

「ごめんみんな、換金して先に帰っててくれる?」

「夕食作って待ってますね」

「ああ、そんなに時間はかけねーから、安心してくれ」


蒼は砦の食堂で先輩におごって貰ったコーヒーを飲みながら先輩の話を待った。

「この前琴音ちゃんからポーションを交換で貰ったじゃねーか」

「そうですね」

「あれの性能がエグい」

「エグい?」

「ああ、まずMP回復ポーションだが固定値回復かと思っていたが割合回復だった。

しかも使った人間の最大MPの半分回復した。

最大MP100の人間なら50回復、200なら100回復。

初期のレベルだと凄さの実感わかないと思うが、

レベルが上がるごとにMPの最大値も増えるから、うちのパーティの魔法使いが歓喜してたよ」

「それは確かにエグいですね......」

「次に状態異常耐性ポーションだが、ポーションが効いてる間はかなりの耐性が付く。

ここだけの話だが、元々俺は能力に状態異常耐性を持ってるんだが、

ポーションが効いてる間は異常耐性無効になった。

能力持ってない奴はそこまではいかないけどな」

「言葉も無いですね......」


「最後に中級回復ポーションだが、

これは流石に固定値回復だったんだが、ハイヒール以上に回復した。

盾職のお前なら分かると思うが、

回復職がハイヒール唱えると結構なモンスター敵意が上がるんだが、

ポーションだから敵意は変わらない、つまり回復職にモンスターが流れない」

「聞けば聞くほどですね」

「そこでお前さんに相談なんだが、

適正値段で良いので琴音ちゃんのポーションを砦の売店に卸してくれないか?

汚え言い方だが俺も俺の仲間も波で殺したくない」

「......それを琴音さんじゃ無くて、何故俺に?」

「琴音ちゃんは良い子だから、こんな話をしたら儲けなしでアイテム提供してくれそうだからな。

お前さんならシビアに判断してくれると思ってな」

「分かりました、琴音さん次第ですが、売店の人と値段を相談して卸したいと思います。

先輩達の生存率は、最終的に俺達の生存率に繋がりますので」

「助かる、売店のネーチャンには俺から話しておく、

卸元の情報はお前さんのパーティと売店のネーチャンとうちのパーティメンバーだけに絞る。

ハイエナみたいな奴が琴音ちゃんに集ろうとするからな」

「お願いします」


「前にお前さんに良い子捕まえたなって言ったが、こういう意味じゃ無かったんだけどな」

「それは分かります。

うちのメンバーは皆自分の職業にしっかりと考えを持ったメンバーしか集めてません」

「つくづく琴音ちゃんのパーティリーダーがお前で良かったよ、お前はお前の世代のリーダーだ」

「先輩の世代は先輩がリーダーですよね」

「ああ、だからさっきのお前さんの言葉じゃないが、琴音ちゃんの生存率は俺達の生存率だ。

何か困った事があれば全力で俺達世代がフォローするから、気易く相談してくれ」

「琴音さんに言っておきますよ、何故か彼女は自己評価が低くて、

更に頭は良いんですが自分の事になると途端にポンコツになりますから真意は伝わらないと思いますが」

「まあ無理もねえよ、いきなりこんな世界に来て、更にお前さんが直ぐに囲っちまったからな」

「囲ったって人聞きが悪い」

「守ったの方が良いか?」

「降参です先輩、勘弁して下さい」


自分の考えをしっかり持ってそうだから、パーティに誘ったんだけど、

まさかここまでの才ある人とは流石に気付かなかった。

これは俺がしっかり立ち回らないと潰されるな。

何故この世界に来たのかは分からないが、パーティメンバーは俺が守る。

盾職のプライドにかけて。


蒼は一人食堂に残って、お人好しの女の子の顔を思い浮かべながら、

リーダーとしての決意を新たにした。


~ 完 ~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る