第8話 パーティミーティング

今日の午後は早めに錬金の訓練をやめて湯浴みをする事にした。

女性用の湯浴み室は、三部屋あってドアにかかっているプレートで使用中かどうかが分かる。

流石にまだ早いので全ての湯浴み室は未使用だった。

一番左端のドアノブを回して入ると石造りの床にタライが置いてある。

私は部屋からタライを持って調理場へ向かった。

「すいません、湯浴みしたいんでお湯貰えますか?」

私が声をかけると調理場からエプロンをした小太りの年配の人が出てきた。

「あら早いわね、タライをちょうだい」

「はい、お願いします」

私が持っていたタライを渡してカウンターで待っていると、

直ぐにタライにお湯をはって持って来てくれた。

「大丈夫?持てるかい?」

「はい、これくらいなら平気です」

そう答えると両手でタライを抱えて湯浴み室に戻った。

一度タライを床に置いてプレートを使用中にして湯浴み室に入り服を脱いで籠に入れた。

棚に何セットか置いてある湯浴み一式の中の一つから布と粉状の石鹸を取り出して、

髪と体を洗う、この世界にはシャンプーリンス、ボディソープの様な物が無いので

粉石鹸を使うがあまり泡立ちが良くなく髪も少しごわつく。

私はまだセミロングだから良いが、詩ちゃんみたいにロングの女の子は大変だろう。


夕食の時間までまだあるので部屋に戻って考えを整理する事にした。

今日早めに訓練を切り上げたのは訳があった。

錬金術師見習いから下級錬金術師になれたのだ。

その際にスキルポイントが付与されて、

スキル一覧と錬金一覧からポイントでスキルと調合を覚えられるみたいで、

皆にどれを覚えて欲しいか相談してから決めたかった。


実技訓練時間も終わり、夕食の時間になるとパラパラと人が集まってきた。

詩ちゃんも湯浴みをして来てからきたので少しだけ遅れて食堂のテーブルについた。

私も詩ちゃんも本来なら食事後に湯浴みする派だけど、

その自家帯は非常に混むのだ、一応時間は決まっているけど守らない娘も多い。

揉めるのが嫌なので早めに湯浴みする事にしている。


夕食のメインおかずは、鶏肉っぽい肉の山賊焼き、デザートにオレンジが付いた。

詩ちゃんも黒パン一個で平気だからと、蒼君と竜司君にあげたので、

二人は黒パンを五個ずつ食べたが流石にお腹は一杯になったようだった。


「食事が終わったら皆と相談したいんだけど良いかな」

皆は快く了承してくれたのだが、個人に割り当てられた部屋に全員が入るのは厳しいので、

食堂があくまでの間に男性陣は湯浴みに向かった。


「そう言えば今日はもめなかったの?」

「私は魔法使いのグループに行けたので平気でしたが、

回復職組は聖女対その他回復職女子でバチバチに揉めたみたいです」

「うちのパーティに回復職人がいなくて良かった......」

「本当ですよね」

「そもそも何を揉めてるんです?」

「聖女さんが他の回復職の娘に回復量が少ないと嫌味を言ったのが発端ですね」

「あ~ね、言いそう」


私と詩ちゃんが親睦を深めていると男性陣が戻って来た。

「ふー混んだ、混んだ」

「男性の方が早いけど人数も多いですからね」

「琴音さん、相談って何?」

「実は錬金術師見習いから下級錬金術師になれて、

スキルポイントが貰えたんで皆が希望する調合があるか確認したくて」


私は空いている時間に書き写した覚えられる調合一覧を皆に見せた。

「MP回復ポーションは鉄板だろうね」

蒼君の言葉に詩ちゃんもウンウン頷いていた。

「もし良ければ状態異常耐性ポーションも欲しいかな」

「はい、竜司君と大和君は何かありますか?」

「攻撃力上昇ポーションが欲しい」

「僕は武器属性付与スキルをお願い出来るならお願いしたい」

「分かりました、後は麻痺薬を覚えて残りのポイントはとっておきます」

「麻痺って何に使うの?」

「私の場合は戦闘中の回復が厳しいので、ポーションを飲めない状況の人に飲ませてあげる時間稼ぎです」

「なるほど」

「スキルポイント使って覚えた物じゃないと錬金って出来ないの?」

「本を見る限り出来るみたいだけど、

調合一覧でポイント使って覚えられる錬金は普通の錬金だと無理みたい」

「まあそりゃそうか、攻撃力上昇ポーションとか状態異常耐性ポーションとか破格の効果だしな」

竜司君はそう言ってくれたけどどれだけ効果があるのか分からないので、

微妙にプレッシャーを感じてしまった。


「そう言えば琴音さん、見習いが終わるまでどれ位かかった?」

「他職は分からないけど、錬金術師は職業LV5で上がりました」

「騎士見習いLV5だから明日にでもあがるかな」

「お前ら早いな、俺はまだ剣士見習い3になったばかりだ」


「あの私もスキルポイント残っているんで相談に乗って欲しいです」

「魔法使いは詳しく知らないから最終的に先輩に相談した方が良いと思うけど、

波の後半になるほどモンスターは強くなるみたいだから、満遍なく属性を上げるんじゃなくて、

一属性もしくはニ属性に絞った方が良いとは思うよ

覚えた属性が効かないモンスターは物理職に任せるか最悪逃げよう」

「はいありがとうございます、その方向性で明日先輩に相談してみます」

詩ちゃんは嬉しそうに蒼君にお礼を言った。


「そろそろ住む所も決めないと」

「そうだよね、個人で借りるのはお金が無駄だから、パーティで借りるか、男女で借りるかかな。

これは、琴音さんと詩さんで決めて良いよ」

「私としては、この世界がまだ怖いから住む所はパーティで一緒、

部屋は別々で家事は当番制が良いです」

「私もそれが良いです、女の子だけで住むのは怖いです」

「分かったちょっと先輩に物件を相談して見るよ、お金稼げる様になるまでボロ屋とかでも良い?」

「良いと思います、装備を揃えるの優先で節約しましょう、

誰か怪我や病気にかかった時の蓄えも欲しいですし」


全員の意見が一致したので、後は蒼君にお任せしようと思うけど、

京さんあたり詳しい気もするので明日聞いてみる事にした。

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