第3話 田園の憂鬱 佐藤春夫


東京の古書店で購入した。近代文学の作家の描写力は圧巻だ。これぞ憂鬱。難しい文体なのに短い期間で読めたのはその文体のリズムやアンニュイな世界観からか。読んでいる私まで焦燥感に駆られそうな、緻密な描写力に彩られたその小説は、小説が小説である理由を教えてくれる。私自身は小説を書く際、いちばん筆がのるのは主人公の告白体だ。投稿しているウェブサイトは多くの異世界転生物が発表されているが、私自身は『田園の憂鬱』のような告白体が好きだ。あまりプロットに囚われなくてもいい。文体でその憂鬱を記せば。



≪好きな一文≫


『それがランプの直ぐ近くで、死の舞踏のような歓喜の身悶えをする時には、ソロっぽくぼやけた茶色の壁の上を、それのグロウテスクな物影が壁の半分以上を黒くして、音こそは立たないけれども、物凄く叫び立てている群衆のように騒々しく不安に狂いまわった。』

・蛾の描写が鮮明に分かる。解析度が上がる。

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