第13話 ゴールドラッシュ 柳美里


衝撃作と言ってもいい、いい意味でどろどろしていた、いい意味で粘着質のあるダークサイドの作品。


少年は父を殺した。その孤独なナイフを駆使して。


家庭崩壊で姉は援助交際し、兄は知的障害、母は失踪、父はパチンコ経営でワンマン。親のレールに敷かれた少年は大麻を吸っている、学校には行けずに。


大人びていると言ってもどこか子供らしさも残す少年。


舞台になった黄金町には行ったことはないけど情景がありありと見えた。


どぶ川の河口とか、薄汚れた風俗店とか、魔界が。


絶望という言葉にも種類がある。


過去に起きた少年事件をモチーフにしているが、この絶望は今すぐ目の前にもある種類かもしれない。


触れたいけど触れらない絶望の色。


全体に漂う脅迫めいた絶望を感じました。



≪印象に残った一行≫



・くるときは町だった場所が瓦礫の山と化している。



私は東日本大震災を不意に思い出しました。


柳美里さんが書店経営している福島の光景が残像のように見えた。

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