第4話 願い事
幼い頃から何度も「願い事が1つだけ叶うとしたら?」という問い掛けの答えを考えてきた。好きなアニメの主人公になる、だったり、世界一強くなる、とかもあったような気がする。漫画の悪役の影響で、世界征服とか不老不死になりたいなんて考えた時期もあったはずだ。
願い事の数を増やすだったり、お金を増やすことを考え始めたのは、少し年齢がいってからだろうか。高校や大学でも友人との会話の中でそんな話をしたことがあるような気がする。
たとえそれが決して叶わないものとわかっていても、「願いが叶うなら……」というのは、誰もが夢見てしまうものなのだ。
そして、今本当にオレはそれを夢に見ている。
姿なき運を司る「神様」は、オレがなにか答えるのを待っているのか、忠告をしてからは一向に話しかけてこなかった。この夢はオレがなにか願い事を言わないと覚めないのだろうか?
どうせ叶わないのなら適当なことを言ってしまえばいい。それなのにこう悩んでしまうのは、万が一その願いが実現したら……、とどこかで思っているからだ。
自分の願いを比較で考えたことなんてない。だから、今一番叶えたいのはこれだと決められないのだ。
仮に願いが叶ったとしても、きっと後から別の願いを思い付いて後悔する気もする。だったらいっそなにも願わないのがいいのか? いやいや……、それはそれで簡単なことでも言っておけばよかったと後悔するだろう。
『願い事をなんでもひとつだけ叶えてあげますよ?』
たったこれだけの問い掛けがとても哲学的なものに思えてきた。しかしその時、何年も前に誰かと話した会話を急に思い出した。
それは、今と同じで「もしも願い事がひとつだけ叶うなら?」の問い掛けから始まったものだったからだ。
そして、同時に当時のオレが出した答えも思い出した。たしかあれは高校生の時だったはずだ……。当時、付き合っていた彼女とそんな話をしたんだ。
「えっと……、願い事決まったんだけどここで言ったらいいのか?」
虚空に向かって話しかける。今、独り暮らしだけどこれを寝言で言ってたら嫌だな、と思った。
『決まったんですね? どうぞ、仰ってください!』
ちょっと条件付きの願い事だけど果たして聞き入れてくれるのか? ――とはいえ、わざわざ願う前に忠告をくれるほどの親切仕様だ。無理なら無理でそう言ってくれるのだろう。
それに……、そこまで無茶な願い事とも思えない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます