第13話 夜道
「べーちゃん大丈夫? ちゃんと歩ける?」
2時間程度で同窓会はお開きになった。委員長の締めで終わり、店の外へ出た後はそれぞれ挨拶を交わしながら、みんな三条駅の方へと歩いて行くようだった。
思ったより酔いがまわっていて、足元が少しふらついてる。お手洗いに一度も行かなかったので、立ち上がらなかったから気付けなかったのだ。ナオは心配して何度も「大丈夫?」と言ってくる。
同窓会のあった店のある通りにベンチがいくつかあった。オレはそこでしばらく座って休むことにした。会社の飲み会でもこんなになったことはない。まったくおいしいと思わないビールを気付いたら何杯も飲んでいたようだ。
ベンチにいたのは15分くらいだろうか。心配する同級生たちに適当な返事をしながら別れの挨拶を交わして、それも無くなってからしばらく時間が経っていた。オレは項垂れるような姿勢でずっと足元を見ていたので気付かなかったが、顔を上げると隣りにナオが座っていた。
「こんなになるまで飲んで――、ビールおいしないなんてよう言うわ」
彼女はオレの顔の前に500mlのミネラルウォーターを差し出した。ラベルのところにコンビニのシールが貼ってある。きっと近くで買ってきてくれたのだろう。ボトルの蓋は力を入れなくても簡単に回った。ナオが一度開けてから手渡してくれたみたいだ。
オレは3分の1程度を一気に飲んだ後、大きく息を吐いてから立ち上がった。店を出るときよりは幾分かマシになっている。
「無理せんと休んでたらええよ? 私、もうちょいここにいたげるから」
もう少しナオと一緒にいたいと思った。だが、それはオレにも彼女にもよくないとも思えた。
「ナオは先に帰っていいよ、オレは酔い覚ましがてら四条まで河原らへんを歩いて帰ることにする」
「そんなら私も一緒に行くわ、四条で電車乗り換えやからね」
そう言って彼女はオレの横を並んで歩いた。結局、2人で鴨川のほとりを1駅分歩いて帰ることになった。
夜でも外は暑かったが、川のほとりは涼しい風が吹いている。高校の時は並んで歩くとオレのペースが早くて、あえてゆっくり歩いたりしていた。けど、今はオレの足取りがおぼつかないのか、ナオのペースの方がむしろ速いくらいだ。
「今日はようけ星が見えるねぇ。あれと、あれと――、あれで夏の大三角形とちゃうかな?」
彼女は星空を見上げながらオレと同じくらいのペースで歩き始めた。ナオは星座の名前とかをいろいろと言っているがほとんど独り言のようで、こちらの返事を期待していないようだ。
オレは彼女に確かめたいことがある。そして、言わないといけないことがあった。四条の駅に着く前にそれを口に出さないといけなかった。この感覚は、ナオの誕生日に告白しようとしていた時となぜだか似ているように思えた。
オレが歩を止めると、2mほど先まで歩いてた彼女は振り返ってこちらに戻ってきた。少し首を傾げて顔を覗き込んでくる。
「どうしたん、べーちゃん? 気分悪いん?」
オレは意を決して彼女の目を見てこう言った。
「ナオは――、オレのこと怒ってないのか?」
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