何が故に

　介護事業所に勤める有川正士は、誰もが認める有能な男である。しかし、不器用で直線的な人となりは否定できず、身の回りにうごめく矛盾と不合理に度々翻弄され憤りをおぼえながらも、人並でありふれた毎日が続いている。
　職場の同僚である中森由美に恋心を抱いているが、自分の心を伝える雰囲気づくりなど当然できる訳もなく、日々触れる彼女の仕草や振る舞いに一喜一憂するのみである。
　ある日、偶然出逢った洋食店で、ここの若旦那仁野雅志と意気投合し、職場の上役三橋常男や同僚高瀬邦彦らとともに、道理に合わぬ出来事との闘いを織り交ぜた日常が展開する。