推理によって謎を解くミステリーといえば探偵モノ、名探偵といえば大怪盗!
というものの、現代日本の法律やテクノロジー、警察の人海戦術を掻い潜って華麗に盗みを成功させるのは難しく、リアリティと両立させながら怪盗を描くのも難しくなりました。
この物語は、現代の怪盗モノです。といっても怪盗の活躍や事件そのものより、怪盗であり主人公である青年、義統忍さんの複雑な家庭環境と拗れた父子仲が描かれてゆき、彼が怪盗を演じると決めた経緯を知ることができます。
なぜ警察に頼るのでなく、怪盗なのか。狙いを定めた連作の絵画に、一体どんな意味と価値があるのか。
理由があろうと盗みは犯罪ですが、その辺りの采配も非常に良く練られていて、楽しく読めるエンターテイメントとなっています。ぜひご一読ください。