第三部 第一章 路線変更

「なんか変じゃないか?」

「なにがよ」

彼と由梨は自宅近くのファミレスでコーヒーを啜りながら話し込んでいる。

「いや、だってさ、補助金の申請が通らないのは母親の年金額が多いせいなんだぜ?そんなの今まで聞いたこともないし、そんな事実も知らなかった」

「まあそうね。お母様もそんなに派手な生活をしている訳でもなさそうだし。その年金額ってどのぐらいなの?」

「役所の人は申請額より多いってしか言ってないから、実際いくらなのかは今は分からない。でも一般的な年金額よりも多いことは確かだ」

「お母様に直接聞かないと分からなそうだけど、だめそうね」

「こうなったら補助金の件は一旦止めて、この年金の件を探ってみないか?」

「構わないけど、どうやって調べるの?」

「それはいろいろさ」

「いろいろって?」

「まぁ正攻法じゃ無理だろうから、母親の生い立ちから追ってみる」

「そんなのでわかるもんなの?」

「やってみなきゃわかんないけど。実はおれ、入院生活が長くてろくに両親と暮らしてなくて」

「そうだったの。まぁいろいろあるわよね」

「だから、母親がどういう人生を歩いてきたか、今思うとよく知らないんだよ」

「あたしも似たようなもんかな。田舎を出てから、親元離れてだだいぶ経つし」

「悪いが、協力してくれないか」

「もちろんいいわよ。なんだか面白そうだし」

「じゃぁ早速取り掛かるか」

二人は暫くしてファミレスを後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

背徳の代償(停止中) イノベーションはストレンジャーのお仕事 @t-satoh_20190317

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ