第二部 第一章 彼の行先(1)

吉祥寺駅裏の喫煙所で結果的に落ち合った二人。彼女は唐突に、

「面倒なことは抜きでホテルに行こうよ」

彼は面食らった訳でもなく、平然と

「いいですよ」

と快諾した。 早速二人は終始無言で駅近くのホテルと向かう。

〈Hotel Passage〉

に足を向ける。いつの間にか二人は手を繋いでいた。602号室のパネルを選択するとエレベーターの6のボタンを押す。彼女は徐ろに彼にキスをしてきた。彼もそれに答える。

なだれ込むように602号室に入ると二人は直ぐに服を脱ぎだし、ベッドに入った。

「軽い女だたと思った?」

「いいや、おれもそういう気持ちがあったし」

「そう、じゃ良かった」

「実は、俺がバイト始めたのは自分で事業を興したいからなんだ」

「へー!それは凄いね。どんな事するの」

「具体的にはまだだけど、IT系の仕事を個人的にやってみたい」

「じゃぁ、資本金がいるわね」

「そのお金を作ってるけど、なかなか貯まんなくてね。それより一人でやるのは中々しんどくて」

「私が手伝おっか?」

「いいの?」

「役立つかわからないけど、私で良ければ」

「ありがとう。助かるよ」

由梨は彼の肩にもたれ掛かっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る