第二部 第二章 彼の行方(2)

自然の流れで彼は由梨と付き合うことになったが、バイト先の連中には伏せておいた。何かと面倒なことになるかも知れない為である。由梨とは他人の体で彼は清掃のバイトを続けた。

出会いから約3ヶ月後、彼は由梨を呼び出した。

「大分見通しも立ったし、事業を始めようと思うんだ」

「いいわね。この前言ってたIT系の仕事?」

「うん、プログラミングの初歩を教えるサイトを立ち上げようかなって」

「へー、なんか凄そうね。私はそっち系は全然わかんないからさ」

「そういう人に教えるんだよ」

「あ、そっか」

「そんで、まだ資金が足りないから公的な補助金とかを申請しようと思ってて」

「そんなのあるの?」

「在るみたいなんだ。IT、特にプログラミングは国でも推進してるし、小学生の授業科目にもなってるくらいだから」

「そういう子供にも教えるわけね!いいわね!」

「その資金集めを手伝ってほしいんだ」

「いいわよ。私にできることなら」

「助かるよ」

彼は自分の夢を叶える第一歩を由梨と踏み出した。

1週間後、彼は由梨を家に呼んで事業資金の件を調査していた。

「あら、いらっしゃい」

ぎこちない笑顔で由梨を迎えたのは彼の母親だった。彼が女性を家に招き入れた記憶は母親には遠いものであった。と同時に、彼の病状が快復していることを嬉しく思っていた。

「お邪魔します。千堂由梨といいます」

「由梨さん、よろしくね」

母親は申し訳無さそうにその場からそそくさと身を隠した。

「優しそうなお母様ね」

彼はその答えを保留している。二人は2階の彼の部屋で事業の補助金について調べ始めた。

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