最終話 ダンボールと幸せな思い出

「これがお父さんとお母さんの馴れ初めだよ」


 頼斗らいとがアルバムを閉じながらそう言うと、娘の恋白こはくは唇を尖らせながら不満そうな声を漏らす。


「むぅ、なんかおとぎ話みたい」

「事実だから仕方ないよ」

「信じらんない!」

「恋白ちゃん、お父さんを困らせないで。それにお母さんたちの思い出を疑われたら悲しいな」

「うっ、ほんとにほんとなの?」

「そんなおとぎ話みたいなことがなかったら、お母さんがお父さんと結婚したと思う?」

「……思わない!」


 あっさりと認めてしまう娘に、頼斗はやれやれと頭を抱えながらため息を零す。

 そんな様子を見てクスリと笑った白愛はくあは、彼の隣に腰を下ろして肩を寄せた。


「冗談。頼斗のこと、私は好きだよ」

「白愛……僕は大好きだけどね」

「私は愛してるわ」

「僕はめちゃめちゃ愛してる」

「だったら私なんて―――――――――」


 毎日のように繰り広げられるイチャイチャ劇に、恋白はそっとソファーから降りて自室へと向かう。

 相変わらず我が両親は仲が良すぎる。悪いことでは無いけれど、見せられる側としてはたまったものではないのだ。


「あのお母さんがダンボールをね。やっぱり、ちょっと信じ難いけど」


 彼女は自室の扉に手を掛けたところで足を止めると、やっぱりと思い直して更に奥にある父親の書斎へと入る。

 その棚の一番上の段。そこに昔から飾られていた意味不明な穴の空いたダンボール。

 あれの正体が何なのかをようやく理解した恋白は、そういうことだったのかと口元を緩ませるのであった。


「お母さん、夜中に頭が入らなくなってるって騒いでたの……これの事だったのかな」

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隣の席の女神様の引きこもり学園生活〜変わり者転校生はダンボール箱入り娘〜 プル・メープル @PURUMEPURU

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