【異動】
働き始めて1年半くらい経った頃…
「Kが異動する」
いつかは来るとは思ってたけど、
予想してたより衝撃が大きかった。
「大丈夫?ショックやでな…」
「またあっちの店に行けば会えるし!」
みんな気遣ってくれた。
複数店舗ある飲食店は仕方ないこと。
しかも、オシャレな新ジャンルの店舗での
店長に任命されたとのこと。
" 出世ってやつよな。
こんなにしっかりしてるもん…
その上カッコいいし… "
" そりゃ適任よな… "
副店長が上司に認められた。
すごい人ってことは、
私は見てきたからわかる。
喜ぶべきこと。
でも…
店長とkちゃんの絡みが見れなくなる。
2人でイジってもらえなくなる。
働いてる時のカッコいいkちゃんが
見れなくなる。
kちゃんに会えなくなる…
どうしよう…
寂しすぎる…
店長やバイトの人達は、
寂しがる私を励ましてくれた。
二度と会えなくなるわけじゃない。
励ましてくれる人達もいる。
kちゃんと一緒に働けるあと少しの間、
楽しく過ごそう。
ちゃんと送り出そう。
その後、
いつものメンバーで送別会もやった。
でもやっぱり…寂しくて仕方なかった。
そして、
複雑な気持ちのまま、最終日を迎えた。
ついに異動の日が来てしまった。
前にバイトの子と話した事を考えてた。
ネタとしては分かってるやろうけど…
店長のことも大好きだったけど、
kちゃんへの大好きは何かが違った。
でも、本当に彼女になりたいわけじゃない。
なれるとも思ってない。
だから伝えなくてもいいんじゃないか。
でも…
ネタじゃなくて、
本当に大好きなこの特別な気持ち。
もう毎日会えなくなるなら…
迷惑かもしれないけど…
ちゃんと伝えたい!
そう決めた私は、
人生で初めて自分から男の人を誘った。
『kちゃん、
今日終わったらご飯行かへん?
最後の日やから。
あ!用事あったらいいから!』
緊張しながら言った。
「大丈夫やで。行こう!ありがとう。」
いつもの優しい笑顔で答えてくれた。
" マジで!?OKもらったけど!どうしよ! "
心の中では、嬉しくて飛び跳ねてた。
よく考えたら2人きりでご飯に行くのは
2回目だった。
1回目の時は、
店の人同士で難しい問題が起きて、
その相談聞いて私が苦しんでた時だった。
本当にしんどくなって
店を辞めようとも思ったくらいになった。
店長に誘われて、2人で話した。
大好きな店長と話し合いをしても、
まだ苦しくて辞める気が残ってた。
それを聞いたkちゃんが、
少し不機嫌そうに誘ってきた。
初めての2人きりだったけど、
私が変な意固地になりすぎてて、
kちゃんに少し怒られた。
でも、そのおかげで
私の辞める気はなくなった。
あの時も、kちゃんが助けてくれた。
たくさん助けてくれて
たくさん教えてくれて
たくさんドキドキさせてくれて
たくさん笑わせてくれた。
今日が最後…
楽しく一緒に働こう!
そう思って仕事をした。
仕事が終わり、
よくみんなで行ったお店に
2人で行った。
緊張して何を話したか覚えてないけど、
きっと、いつも通りだったんだろうな。
そして帰り道…夜の繁華街。
『kちゃんが異動になったら
言うって決めてたことあるねん。』
「なにー?」
感謝、尊敬、憧れ、寂しさ…
そして、ずっと大好きだった気持ちが
一気に溢れた。
だけど、
『ずっと好きやった。』
泣きながら、この一言しか言えなかった。
「…知ってたよ。」
kちゃんは頭優しく撫でて、
私の頭をそのまま
自分の胸の中に優しく抱えた。
「これしかしてあげれへんけど…
嬉しいで。ありがとう。」
どこまで私の気持ちが伝わったのかは
分からない。
けど、大好きだったことは
ちゃんと伝わったんだと思った。
『伝えたかっただけやから。
ありがとう。』
『…また会えるやんな?』
「また会えるわ!
てか、店来てくれたら会えるし!」
頭から手を離して、顔を見合った。
「泣くなよー!」
って言われながら2人で笑った。
今思うと、疑問がある。
みんなから慕われてたkちゃん。
なぜ最終日に本人の予定が空いてたのか。
もしかしたら私が誘うって分かってたから、
kちゃんを空けててくれたのかな。
もしそうだったら、
あの時のみんなに感謝しかない。
あの日、
勇気を出してちゃんと伝えれて
本当良かった。
そうしてkちゃんは異動した。
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