【出会い】

高校を卒業して、すぐ就職した事務の仕事がうまく行かず…


「お前は事務職より飲食店の方が絶対向いてるから!」


高校の先生に言われた言葉がよぎった。




『事務職してみたかったんよなー。

 …ま!しゃーないか!』


出勤3日で限界がきて辞退させてもらった。




『とりあえず、遊ぶお金は自分で稼がないとね!』


アルバイトを探すことにした。




数日後…




軽い気持ちで応募した居酒屋のアルバイト。


店長が履歴書を見て色々質問された中、


「得意科目、政治経済?得意なん?」



" あ…そこついてくる? "

と焦り、苦笑いで、


『いや…先生がおもしろかったから…』


と言うと、

店長は「そっか!」と笑った。




面接が終わり、

" こりゃ駄目やろな…次探しとこー "

と思いながら帰る。




後日…


『え!採用!?ラッキー!』


絶対に不採用だと思ってたから驚いた。




出勤日、緊張しながらお店に行くと、


「今日からよろしく!」

と笑顔の店長。


次に紹介されたのが…


「こっちは副店長のK。」


「よろしく!」

と笑顔の副店長。


『よろしくお願いします!』


と言ったけど、


"え…やば。

めっちゃカッコ良くない?この副店長。"


内心、違う意味でドキドキした。




それからアルバイトがスタート。



「お前、面接で得意科目を

 政治経済ってゆーたやろ?」


『うん。』


「それで、Kにゆーてん!

 ええオモチャ来たでー!って。」


『えー!?

 アレで採用ってことやったん!』


「お前絶対、政治経済とか分からんやろ!」


と笑われ、採用理由が判明した。



店長・副店長を筆頭にみんな良くしてくれ、

気付けばイジられキャラになり、

おかげですぐ馴染めた。


仕事終わりにご飯連れてってくれたりで、

店長・副店長・アルバイト数名とは

特に仲良くなった。



私より13歳上の店長をhちゃん

私より5歳上の副店長をkちゃん


と呼ぶようになってた。


この2人の絡みが大好きだった。




そんな中、

店長不在の日に私がミスをしてしまった。


注文の聞き間違え。


お客さんに謝ってすぐ、

焦って間違えたものを取り替えようと

取りに行った。


正しいものを渡しに行こうとすると、

バイトの子に止められた。



「もう少し待って。今あんな状態やから。」



パッと見てみると、




そのお客さんの足元で副店長が

土下座をしていた。



『え…』



頭が真っ白になった。


そこから正しいものを

どうお客さんに渡したのか覚えてない。



ただ…申し訳なくて怖くなって

泣いてしまった。



あとで聞くと、

私の謝り方が気に食わなかったそうで、

それに対して副店長が

土下座をしていたとのこと。



副店長から少し厳しめに、


「ちゃんと伝わるように謝らないとあかんねんで。」


と言われ、


『ほんとにごめんなさい…』


俯いて言うと、

笑顔で優しく頭を撫でてくれた。



そのあとはすぐ、いつもの副店長に戻ってた。



謝ったつもりだった…


でも、ちゃんと伝わるように

謝れてなかった…


教えてくれた副店長に、

感謝と反省の気持ちでいっぱいになった。



それと同時に、


" こんなことも

当たり前のようにできるんや…すごいな "


新たに 尊敬 という気持ちを持った。




いつの間にか、

私が副店長のファンであることが

店のみんなが公認になってた。


当本人もネタとして公認してくれてた。



それくらいの時期に、

副店長には

モデルをしている彼女が居ることを知った。


" そーやでなー。

そりゃそれくらいのレベルの彼女

おるよな… "


少しショックながらも納得してた。


でも、ただ一緒に働けて過ごせるだけで

本当に満足だった。




本当に毎日バイトに行くのが

楽しくて仕方なかった。


夜メインだったけど、

昼が不足してる時は快く

『入りまーす!』と手を挙げれるくらい。


昼から勤務すると昼過ぎから夕方まで

一旦閉店し休憩に入る。


まかないを食べたあと、

店の色んなところで各々が昼寝する。


夕方オープン前になると

いつも何かしらの方法で、店長か副店長が

笑かして起こそうとしてくる。


それもまた楽しくて仕方なかった。




時々、アルバイトの子達に


「kさんに告ってみたら?」


とか言われたした。


私は本当に今以上を求めてないし、

今のみんなとの関係も変えたくなくて、


『えー!せーへんよ!今のままでいいの!』


と返事をしてた。



そんな時、


「もしkさんが異動とかになっても?」


と聞いてきた人がいた。



あ…。飲食店やしあり得る話…。


もし異動があれば一緒に働けなくなる。

会えなくなる…。


『そーやな…

 その時は伝えるだけ伝えよかな!

 別に付き合えるわけでもないしな!』


と言って、毎日楽しく過ごしてた。

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