【罪悪感】
相変わらずkちゃんは優しくしてくれる。
自分でも分かるくらいに大切にしてくれる。
本当に心から幸せを感じれるはずなのに…
その優しさが辛かった…。
あれからずっと罪悪感が残ってた。
Rくんと会った日から間もない時期。
kちゃんが軽い手術を1泊で受けることになった。
持病とは関係ないことだけど、軽くても手術。
手術当日は、
kちゃんの母親が地元から
大阪に来る予定になると聞かされた。
「ちゃんとAのこと紹介するから。」
kちゃんが笑顔で言った。
なんてこと…
こんな私を紹介?
大事なお母さんに私を紹介するの?
罪悪感がピークに達してしまった。
こんなことを隠したまま、
お母さんに紹介してもらうなんて…
その次の日。
私は罪悪感に耐えられなくなり、
kちゃんに言ってしまった。
あの日の事を…
『本当にごめんなさい…』
泣きながら謝った。
この時の私は、
少し甘えた考えもあったのだろう。
いつも優しい、少し大人なkちゃん。
束縛ないから、そんなに怒らないかも…
なんて思ってたかもしれない。
でも、kちゃんの反応は予想外だった。
kちゃんの手が震えてる。
今まで見たことない顔をしている。
完全に怒ってた。
「前に言ってたやつやんな?」
「暴力ふるうやつって言ってたよな?」
まだ同じ職場だった時に、
私はRくんとの事をkちゃんに言っていた。
kちゃんはその事を覚えていた。
「なんで…」
「なんでそんなやつに…」
kちゃんが怒りで震えながらうなだれる。
” 許してもらえないかもしれない… ”
この時、改めて自分のした事を悔いた。
kちゃんは無言で私の携帯電話を取った。
” あ…中身をチェックするのかな… ”
今までは携帯電話を取られた時は、
チェックされて番号を消されたりしてた。
” もうRくんと連絡とることもないし… ”
そう思った瞬間。
バキッ
kちゃんは私の携帯電話を
真っ二つに折って、外に投げた。
「二度と連絡とるな!二度と会うな!」
怒りに震えながら私に怒鳴った。
「これで許すから!だから二度とするな!」
きっとkちゃんは
初めて味わった気分だったんだろう。
《許す努力》を必死でしてくれている…
その時、私はその努力を理解した。
二度とこんな顔させない。
二度とこんな声にさせない。
もう絶対に傷付けない。
『本当にごめんなさい…』
泣いて謝る言葉しか出ない私を
kちゃんは抱きしめてくれた。
「携帯潰してごめん。
明日新しいの買いに行こう。」
まだ気持ちの処理ができていないはず。
なのに…
なんでそんな言葉が出てくるんだろう…
その必死な優しさに溺れてしまった。
翌日。
以前、kちゃんの職場で紹介されて
知り合った料理長がいた。
怖い感じだから少し苦手だったその人から
連絡があった。
「kから聞いた。相談してきたわ。」
「お前、なんであんな事をkに言った?」
低くて機嫌の悪そうな声だった。
『嘘ついてるのが申し訳なくて…』
思わず小声になりながら答えた。
「お前、それって自分が黙ってるのが
苦しかっただけやろ。」
「しんどくて吐き出したかっただけやろ。」
『……』
何も言えなかった。
「kに伝えたのは間違いやったで。」
「アイツは優しいやつや。
だからお前を許そうとして苦しんでる。」
続けて言われた。
「自分がやったことは自分で消化せな。」
「何でも正直に言うのが相手の為と
思ってたら大間違いやで。」
「…二度とするなよ。」
私は初めて気付いた。
私は自分を守った…
苦しさから逃れる為に…
大切な人を傷付け苦しさを背負わせた…
《若かった》《知らなかった》
だけでは済まされない。
付き合ってまだ1年も経たない頃、
私は自分の甘さを痛感した。
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