【決心】

起きていると泣くしかできなかった。


泣き疲れて眠ろうと目を瞑ると

楽しかった幸せな日々を思い出し、

また泣いてしまう。


ご飯も食べれず、

ただ泣くことしかできない日々が続いた。


体重は激減し、だんだん体力はなくなり、

歩くだけで倒れそうになってた。


感情のコントロールも出来なくなった。



それでも友達は毎晩、

私を連れ出してくれた。


そんな中、ふと…


” この子達に申し訳ない ”


そんな気持ちが芽生え出した。



” 今度は友達に甘えている… ”


” もし、この子達にも愛想を尽かされたら… ”


そう考えると違う怖さが出てきた。



でも、分かってはいるけど

私は自分ではもう、どうにもできなかった。



” 薬でどうにかならないか… ”


そう思い、初めて精神科へ行った。



鬱病・神経症・パニック障害…


色んな病名がつけられた。



処方してもらった薬を飲んでも

すぐ心が落ち着くことはなかった。


ただ、眠れるようになった。



睡眠を取れるようになると、

徐々に上を向けるようになった。



kちゃんの為にも…


心配してくれる人達の為にも…


何とか自分を変えないといけない。




kちゃんから離れる努力をする覚悟を決めた。




昔から行動力はあった。


” まずは全く新しい環境に行ってみよう ”



働く場所を探すことにした。



飲食店・アパレル関係…


kちゃんを思い出すような場所は

なるべく避けた。



私が全く知らないような仕事を探した。



” パチンコ屋さんか… ”


しかもオープニングスタッフだった。



全く知らない仕事だし、騒がしい場所。

ここなら…この気持ちを少しでも

忘れさせてくれるんじゃないかと思った。



すぐに採用された。


オープニングスタッフだったのもあり、

目まぐるしい生活になった。


新しい人達に、新しい仕事。

全く知らないことをイチから覚えながら、

店を開店させる準備で忙しかった。



でもまだ鍵は持ったままだった。



最低な事をしている自覚はあった。

心苦しかった…。



” この鍵を返す時は完全に離れる証 ”


そう思って、なかなか手放せなかった。



ちゃんと返すことを目標に、

自分を立て直そうと頑張った。



そんな中、そのパチンコ屋で

ある出会いがあった。


その人は年下だったけど、

私よりも色んなことを経験した人だった。


私の話を全部聞いてくれて、

最悪の状態も理解してくれた。


最後はその人が踏み出すきっかけをくれた。



そうやって色んな人達のおかげで

やっと…


鍵を返す決心がついた。




別れを告げられてから、

どれくらいかかったんだろう。



kちゃんの優しさに

最後の最後まで甘えてしまった。




よく晴れた日のお昼頃。


久しぶりに歩く駅から続く思い出の道。



決心をつけたはずなのに…

やっぱり苦しくて涙が出てしまった。



そうして着いたkちゃんの家の下。


自転車がないから、今日は仕事だ。



顔を見てしまうと、

また決心がにぶりそうだったから…

仕事で良かったと思った。



いつも幸せな気分で登ってた階段がある。


もうその階段には登らない。



階段の下にある集合ポスト。



そこに鍵を入れた。



そしてkちゃんにメールした。



【 今、鍵をポストに入れました。

  遅くなってごめんなさい。

今まで本当にありがとう。

本当に大好きだったよ。】



何時間か後に返事があった。


【 こちらこそ、ありがとう。】





こうしてkちゃんとの日々は終わった。

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