鬼塚失踪篇

good bye

 朝、伊万里が事務所に入ると鬼塚の机に1通の書き置きがあった。

 書き置きには、


『本郷くん、阿南さん、皇さん

 僕はもう心が折れました。

 暫くいなくなります。

 探さないで下さい。

 鬼塚清志郎』


 と書いてあった。伊万里は書き置きを持ってダッシュすると扉が開き、本郷と一華が入ってきた。

「本郷さん!阿南さん!大変です!鬼塚さんいなくなりました!」

 伊万里は書き置きを2人に見せると

「なんてこった!」

 本郷が叫び、

「探さないで下さいって」

 一華が困った。

「鬼塚さん、傷ついただろうな…。あんな事になっちゃったから」

 と本郷。

「隠れた後、顔真っ青だったし」

 と一華。

「鬼塚さんが心配です!探さないでって書いてあるけど、私は探します」

 と伊万里が行こうとすると

「皇ちゃん」

 一華が呼び、

「どうやって探すんだよ?何も手掛かりないんだぞ」

 本郷が冷静に言った。

「一生懸命になるのはいいけど、よく考えてからにして」

 一華にそう言われた伊万里は

「すみません」

 と謝罪し、2人のところへ戻った。

 3人は、書き置きを頼りに鬼塚の捜索について話し合った。


 鬼塚の助けにより虐めをカミングアウトできたゆりあは相変わらず、重政冬子達から虐めを受けていたが、以前と変わった点は、担任の布川未来や他のクラスメイトがゆりあの事を気にかけ、ゆりあが虐めに遭ってたらクラスメイトがすぐ布川未来に報告していた。その度に、布川未来は重政冬子らを面談室に呼び出し注意した。

 重政冬子らがゆりあの悪口に花を咲かせているとクラスメイトの男子生徒の1人が

「なぁ、重政、脇田、石塚、工藤。お前らの親、何でも屋に文句言いに行ってただろ?」

 冷めた目で言うと

「そうよ!」

 重政冬子が怒った。

「当たり前だろ!」

 脇田明が食ってかかるように言った。

「あの牛鬼が悪いんだ」

 工藤隆之介が睨みつけた。

「だから、パパとママが牛鬼に何でも屋を辞めるように言ってんの」

 石塚真理子がニヤリとした。

「なんでお前が知ってんだよ?」

 脇田明が聞くと

「前にうちの母さんがスーパーへ買い物に行く途中何でも屋のビルの前通ったら大声で怒鳴ってる声が聞こえたから気づかれないように中見たらお前らの親が牛鬼の何でも屋の前で怒ってたって。しかも依頼に来たお婆さんがお前らの親の事迷惑そうに見てたらしいぞ」

 男子生徒は淡々と話した。

「よく見てんね。お母さん。けど、今度また親達牛鬼のところ行くよ。暫く休んでたから今度こそ牛鬼のところへ鋸持って行くの!」

 重政冬子は威張って言った。

 それを聞いた男子生徒は

「止めろよ!牛鬼が可哀想だろ!牛鬼は鬼を引き殺すって言われてる鋸の最後の32枚目の鬼刃が苦手なんだぞ!お前らの親、いつまた何でも屋行くんだよ?」

「何、一緒に行きたいの?」

 重政冬子が聞くと

「行かない!行かないぞ!ていうか、そういうの止めろよな!」

 男子生徒はそう捨て台詞のように言い、去った。

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