牛鬼、徳島へ行く

 翌週、鬼塚は牡丹のボディーガードのため徳島へ飛行機で向かった。

 徳島に着くと牡丹の実家がある小松島市の金長神社へ行き、牡丹の妹達に挨拶したが、牛鬼と聞いて警戒された鬼塚だったが、白鳥道子と2人で事情を説明するとわかってくれた様子で、鬼塚は安心した。


 牡丹の両親は早くに他界し、牡丹は3人の妹達の面倒を見ていた。だが、ある時妖怪達が人間から酷い扱いを受けている事を知った牡丹は、取り壊しの計画から守ってきた金長神社を妹達に託し、単身で上京した後に妖怪も人間社会に溶け込んだ生活できるよう街頭で訴えていた。当初牡丹の訴えを聞いていた妖怪達は怪訝そうにしていたが、牡丹の気持ちが伝わったか、次第に集まり団体を作った。そして、多くの妖怪達が呼びかけるなど行った。

 牡丹達の活動は高い評価を受け、もっと呼びかけたいと考えた牡丹は議員になった後団体を抜けた。


 そう牡丹や牡丹の妹達は鬼塚に話した。

「牡丹さん、大変でしたね…」

 鬼塚が言うと

「もう1人でやってた時は警察沙汰になりましたし、通行人から罵倒されましたから」

 牡丹はその時の事を思い出しながら話した。

「僕は子供の頃、人間に育てられてたんですが、牛鬼の姿になった事がきっかけで幼稚園では虐めらてましたから」

「え、じゃあもうそんな時から人間達と生活していたんですね!」

「はい。だけど子供の頃見たゲゲゲの鬼太郎や西遊記は妖怪がやられてるシーンはあんまり嫌な気持ちはしませんでしたね!むしろ、他の子同様楽しんで見てました」

「へ〜!鬼塚さん、意外ですね!」

「部下からたまに変わってるって言われますよ」

 こんな風に鬼塚と牡丹は昔からの友人のように意気投合する事となった。


 翌日は牡丹の演説があり街頭で鬼塚はボディーガードとして周囲を注意深く見ていた。

 ボディーガードとしての役割以外は、徳島県周辺を観光し、中でも鬼塚は大塚国際美術館を気に入った。

 時折、鬼塚は自分を何かと心配している部下に写真をLINEで送り、伊万里から

「観光しないで、ちゃんと牡丹さんのボディーガード頑張ってください!」

 と厳しい文章が送られた。


 こうして、鬼塚はボディーガード以外の空き時間で徳島を満喫していた。

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